「ぞうさん、ぞうさん、お鼻が長いのね」
このフレーズでどのような感情を表現するか、何年か前、日本文学の時間に、
学生たちにやってもらった(て言うか、無理にやらせた)ことがある。
まず、鼻の長いぞうさんを話者はどう思っているか想像するところから始めた。
しかし、中国の大学生たちから応えは返ってこなかった。
あまりの突飛な質問にクラスは押し黙り、困惑しているのがありありと見て取れた。
私は、仕方がないのでヒントを出した。
①(うわ、なに?その長い鼻。みっともない~~)・・・排他的で意地悪な気持ち
②(うわ~、ゾウさんのお鼻って、長いんだね!知らなかった~)・・・新発見の驚き
③(ぞうさんの鼻は長くて、いいねえ。自分もそんな鼻が欲しいなあ)・・・羨ましい気持ち
「さあ、この3つのうち、どの気持ちだと思う?」
と聞かれたら、アナタは何番を選びますか?
はい、はい、学生たちとほぼ同じデスネ(と決めつけて先に進む)。
圧倒的多数が、①の意地悪な気持ちを選んだのだった。
それで、皆で意地悪~く
ぞ~うさん、ぞ~うさん、お~鼻が 長いのね~~
と歌ってみた。とても上手だった・・・・・・。
しかし、言われた方のぞうさんはどう応えたのだろうか。
「そうよ、母さんも長いのよ」
という言葉に込められたぞうさんの気持ちを想像してみた。
・悔しい ・長い鼻が自慢だ ・だから何? ・ゾウという動物はそういうものなのです
といった意見が出たと記憶している。
「ゾウという動物はそういうものなのです」には、心中喝采していたが、私は冷静を装った。
いったい、まど・みちおさんはどういう気持ちでこの詩を書いたのだろう。
私が大好きで、授業に何回も使わせていただいた詩をたくさん書いた
まど・みちおさんが亡くなったという。
みんな、いなくなってしまう・・・・・・。