ここ、山東省のはずれ、菏澤にいても聞こえてくるくらいですから、
「ニッポン・すごい」の声は日本国内ではどれほどの大音響なんでしょうね。
今どき、なぜこの自画自賛がブームになっているのでしょう。
そして、このブームが自然発生的なものかというと、どうもそうではないようです。
あの2011年3月当時、江西省南昌にいた私はしばらくの間、
「日本はすごいよ。大丈夫、日本はきっと大丈夫だよ。」
という周囲の中国人の方々の言葉に藁にもすがるような気持ちで頷いていたものです。
そのとき、私はこの言葉を必要とするくらい心底へこたれていました。
スーパーで「富士」と書いてあるりんごを見ては泣き、
日本の方の空を見ても勝手に涙が頬を伝うくらいでした。
もう、日本はダメかもしれないと50%以上本気で思っていたのです。
日本国内の人々も、海外からの
「日本人はすごい、あんな大事故の後で取り乱さずきちんと並んでいる。」
「日本人の秩序正しさには敬服するしかない。」
「配給の弁当の後できちんと〝ありがとうございます”という日本人っていったい…」
といった称賛を聞きつつ、自分の心の絶望と不安に抗いながら、
(私たちは大丈夫、今は歯を食いしばって頑張るしかない)
と言い聞かせてきたのではないでしょうか。
今、東北大震災、福島原発事故の復興は未だ道半ばとは言え、
日本中がある程度の冷静さを取り戻し、先のことを見据えて・・・・・・、と思ったら
なんと、いまだに「日本スゴイ」コールが止まず、
しかも、その声は「海外からの称賛」という形を取りながら、
実は自国のメディアの生産物であるというじゃありませんか。
なぜ、そのような作り物の、つまり宣伝みたいなことをして、
自画自賛する必要があるのでしょうか。
とまあ、こんなことを書く気になったのも下の早川タダノリさんの本を
読みたくてたまらなくなったからです。
この本は日本が満州事変当時から1945年の敗戦を迎えるまで
どれほど日本民族の優越性を称揚する言葉が国中にあふれかえっていたか、
早川タダノリさんが当時の雑誌やチラシなどの膨大な資料を収集して
提示したものだそうです。
確かに、表紙も当時の絵で、これを見ただけでも
富士山をバックに、日の丸、セーラー服に鉄兜の丸いこどもたちが
きっと「日本スゴイ!」とか叫んでいる図では、と思われますよね。
早川タダノリさんは1974年生まれ。
おお、若いのにこういう日本人もいるのか、ニッポン、チャチャチャにならないで
作者の意図する、戦時下の日本と今の日本の共通性について、
考えてみたいものです。
早川さんは、どうしてこういう取り組みをしているのか聞かれて、こう答えています。
「恥を知れ、ということですね。
これまで恥ずかしいことをたくさんスルーしてきたよね、っていうことです。
戦争にしろ、原発にしろ、醜いものが世の中にあふれてきたけれど、
ニッポンよい国ってまたこういうのをやりたいんですか、恥ずかしくないんですか、
ということです」
http://gqjapan.jp/life/business/20140225/tadanori-hayakawa/page/3
下は早川タダノリさんの他の本。これも見たいです。
〈付録:東京新聞・こちら特法部〉