毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「中国の長距離寝台列車の葛藤」No.1837

2016-12-28 20:37:50 | 中国事情

マイナス3℃のキャンパス。この間まで樹々の葉が青々としていた気がしていたのに、もうどこもかしこも真冬の樹です。


中国で寝台列車を利用したことがある人は、

下の作文のような場面に遭遇したことがあるかも知れません。

早い話が、中国にはお年寄りに下段ベッドを譲るという風潮があることで、

高いお金を払って下段ベッドを確保した若者が心の葛藤に苦しむということなのです。

もうすぐ一学期が終わり、殆どの学生はそれぞれの故郷に戻って行きますが、

近年は故郷が遠方の学生の多くは寝台車を利用するようです。

今回、どんなふうに故郷までの時間を寝台列車の中で過ごしていくのか、

ちょっぴり気になります。

(中国の列車の寝台はコンパートメント〈仕切り部屋〉になっていて、一般的には、

両側にそれぞれ上・中・下段ベッドがあります)。


―――「下段を奪い合う」 い・とう―――

君は長距離列車に乗ったことがあるか。

列車の下段のベッドで寝るのは中・上段よりずっと広くて快適なうえに、すぐ移動できてとても便利だ。

しかし、私はその下段で寝ているのに、上段より狭く感じられたことがある。


学校は家から中国の半分も超えるので、列車で32時間もかかる。

中国では列車チケットは発車当日の3か月前から発売することになっている。

ベッドのチケットを奪い取るのは難しい。下段のベッドなら、なおさら困難だ。

しかし、前回クラスメートのおかげで、私は幸いに下段のチケットが買えた。


下段のチケットを持って列車に乗る時に限って、子どもを連れた老人に会う。

せっかく買えた下段なので、私はどうしても守りたかった。

(お婆さんと孫娘のベッドも下段だったらいいなあ)と思ったら、私のすぐ上の中段だった。

乗車券とベッドカードの交換を待っている間、お婆さんはちょうど孫娘もいる中段に登ろうとしていた。

私にとっても、中段に登るのはかなり不便で困難なのだ。

お婆さんにとっては、まるで空に上るほど難しいかもしれなかった。


お婆さんは、ずっと登ろうとしては時々落ちそうになって大変だった。

その仕種はわたしを責めているようだった。とても辛くて恥ずかしかった。

チケットをチェックしている列車の乗務員も黙っていられず、お婆さんが登るのを手伝ってあげた。

乗務員のおかげで、お婆さんは机を利用してやっと中段に登って横になれた。

そして、のんびりではなく、重たくため息をついたのだ。

そのため息が私の心の奥まで刺さった。

身が裂けるように辛かった。


チケットを換えてから、私はすぐそこから逃げ出した。

そうしなければ泣き出したら困るから。

下段で寝ている私は、お婆さんの仕種を思い出すと上段より狭く感じられてならなかった。

その後、謝るつもりだったが、お婆さんは間もなく降りてしまった。

きっと、私を許さず、恨んでいたことだろう。

とても悔しかった。


それから、私はいろいろ考えた。

やはり中国の列車チケットの発売時期は早すぎると思う。

それに、インターネットで列車チケットを買うのは便利だが、

老人などパソコンが苦手な人たちにとっては難しい。

そのため、老人や数日前に予約する人たちは、下段ベッドはおろか、上段ベッドさえ買えないことが多い。

それで、中・上段ベッドに登れない老人たちが、

前もって下段を買った学生たちにベッドを譲ってもらうという現象がよく起きるのだ。

下段は上・中段より価格がずっと高いが、

学生は学生証を使うと、下段でも通常価格の上・中段ほど高くない。

そういうわけで、いつの間にか学生たちは(老人に下段を譲らなければならない)と思うようになり、

老人が学生の下段を奪うことになったのである。


しかし、学生だって下段に寝たいのだ。

そうなると学生は列車に乗るとき、老人たちに会わないように祈るしかないのだろうか。

それとも、もともと下段を買うのは分不相応でいけないことなのだろうか。

鉄道部門が、老人チケット発売でも、老人専用ベッド販売でも、

こういう現状を改善する方法を一刻も早く考えて、実施してほしい。

―――――――――――――――――――――――――――

すぐに降りる電車で人に席を譲るのはよく見かける行為ですが、

列車の寝台を譲るというのは、日本では聞きませんよねえ。


2年ほど前、江財大の余立君さんたちに連れられて湖南省の張家界に旅行した時、

私は寝台車で最上段のベッド、余さんたちは別の車両の椅子席でした。

そのとき、私を慮って余さんが偶然下段に陣取っていた若者に、ズケズケと

「上段と変わってください」などと言うので、私はたまげて、

「いや、私は上で結構だから。絶対、絶対、辞退します。」

と固辞したので、下段の若者はかなりホッとした様子でしたよ(笑)。


 


 

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