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日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

「食べ残すことがグッド・マナーの中国」 2013年1月30日(水)No.556

2013-01-30 12:52:21 | 日本中国比較
食べ残すことが良いことだなんて、
日本の習慣とは全く相容れないと思う人も多いだろう。
何しろ
「よそのお宅で出されたものは全部食べなさい。食べ残しは失礼だよ。」
と躾けられて育った日本民族である。
中国は真逆だ。

学生たちが私の宿舎に遊びに来たとき、
私はいつもワンパターンのカレーライスを御馳走する。
三年生くらいになると日本の習慣も頭に入っていて全部食べてくれるが、
入学したての一年生たちは、きっちり、少し残すのである。
(生まれて初めて食べたカレーの味はどうかな?口に合わないのかな)
と、私は内心ハラハラしているので、残されるのは、
礼儀で残すのか、美味しくなくて残すのか分からず、
さらに、せっかく作ったのにもったいないという気持ちが働いて、
正直(残してくれたの?あら嬉しい!)とは全然思えない。

しかし、王敏さん著「謝謝!宮澤賢治」(だったと思う)の中に
あるエピソードを読んで、
中国の「食べ残し」マナーについてストンと腑に落ちた気がした。
貧しい時代の、貧しい農村での話だ。
『お粥と一品だけの質素な夕食を取ろうと準備していた家に、
その家の子どもの学校の先生が、たまたま訪れた。
一緒に食事を、と勧められて断るのも良くない。
先生はありがたく席についた。
貧しい食事だったが、その家のお母さんは精一杯の菜を
先生の皿に盛り、自分は食べなかった。
先生はにこやかに談笑し、
「ああ、たくさんいただきました。お腹が一杯です。」
と言って帰って行った。
皿の中の菜はほんのちょっとしか食べられていなかった。』
大体そんな内容だったと記憶している。
「食べ残し」が礼儀作法となった背景には、
貧しい生活の中で相手の心を思う気遣いがあったのだ。

一方、日本については
江戸末期に開国を迫ってやって来たアメリカ人が、
「日本人の奇妙な習慣」と目に映ったことを書いた文を読んだことがある。
日本人の武士たちはアメリカ人に招かれた席で食事を終えて立ち去る際に、
食べ残したお菓子を持参した紙に丁寧に包み、
それを懐に入れて立ち去った。
御膳には食べ残しは全くなかった。
全員の侍がそうしたのだそうだ。
(これを外国人は「奇妙だ」と思うのか…)と、
私はちょっと不快感を覚えた。
だって、そうでしょ。
御膳の食べ物を平らげることは、もてなしてくれたアメリカ人への
(本当に美味しかったです。だからすっかり食べてしまいました)
というアピールである。
さらに、家で待つ子どもたちに
「ほら、珍しいものをいただいてきたよ。」
と紙包みのお菓子を出したら、
どんなにその家の子たちは幸せな気持ちになるだろう。
子どもだけでなく、家人皆で楽しくお相伴できるではないか。
なぜ、アメリカ人はそんなことも分からなかったのか、
という不満が湧くのだ。

ところで、時代は変わり、
今日1月30日の新華網(新華社通信インターネット版)に
「中国で『反・食べ残し』運動広がる」の記事が載っていた。
その記事では、「食べ残し」が悪習・浪費だと決めつけられていた。
確かに現代中国では、相手を思い遣って食べ残す必要はないだろう。
中国の食生活は満腹を演じなくてもいい、豊かな時代になったのだ。
写真は新華網より転載

記事では韓国と日本での食べ残し対策も紹介されていたが、
次の文にはかなり違和感を覚えた。

■日本の場合
日本人は食事代に関することに細かい。親友や同僚たちの会合だけではなく、政治家でさえ宴会の際には割り勘をする。最終的に自分の財布から金を出すため、日本の宴会では食べ残しなどの浪費はあまり見られない。


この文を書いた人は全然分かっていない。
自分の財布からお金を出すから食べ残さないのではない。
日本の「食べ残さない」習慣は
そんなけち臭い、しみったれたものではないのだ。
全く理解の底が浅い。
「(誰が支払うかに関わらず)もったいない」
「もてなされたものをゴミにするのは失礼だ」
という思想がなんで分からないのかな~。
コメント (2)    この記事についてブログを書く
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2 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-11-03 11:02:51
なるほど!大変勉強になった。
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Unknownさんへ (ブルーはーと   )
2013-11-07 11:58:39
Unknownさん、
日本の「もったいない」価値観は、ところどころほころびてきつつありますが、今でも一般的なものです。

ところで、私のブログにコメントしていただくときには、
自分の名前(もちろんニックネームでも構いません)を、お書きいただきたいのです。
この間、ネット上でのUnknown同士の言葉の吐き散らかしは目を覆いたくなるほどです。
見えない相手に対しても、やはり自分がどんな人間なのかを少しでも紹介する手立てとして、まず名乗ることから、互いの交流がスタートすると思うのです。
もう一つ、コメントは独りごとではなく、相手に送信する言葉ですよね。
そういうときには、普通体(だ・である)ではなく丁寧体(です・ます)がいいのではないでしょうか。少なくとも言葉を受け取った私はそう感じています。
うるさいことを言うようですが、よろしくお願いします。
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