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「想田和弘監督『選挙2』を観てきた」 2013年7月12日(金)No.706

2013-07-12 19:33:18 | 映画
淀川区十三の第七芸術劇場で「選挙2」を観た。

(右が「山ちゃん」、左は「山ちゃん」の3歳の息子)

時は東日本大震災直後の2011年4月、川崎市会議員選挙だ。
前回「選挙」(07年)で、自民党落下傘候補だった「山ちゃん」こと山内和彦が、
今回は‘完全無所属’で再出馬した。
前回選挙戦では、小泉自民党の組織力と徹底的なドブ板戦で、
お金をさんざん掛け、初当選した。

しかし、「山ちゃん」のキャラは自民党公認とはほど遠く、
任期満了後、公認を得られずリタイアし、家で4年間主夫をしていた。
3年前、子どもにも恵まれた。
そんな「普通の主夫」山ちゃんに再度、立候補を決意させたのは、
「候補者の誰も原発について真正面から主張しない」ことへの怒りだった。
それとともに、それまで原発が安全だと思い込まされ、
それを鵜呑みにしてきたことへの自己批判もあった。

「山ちゃん」はパッと見、右翼と間違われそうな旭日をバックに、
「怒」の文字をしたためたポスターを自費制作して選挙費用を浮かせ、
選挙カー用ガソリン代は被災地にこそ、と選挙カーの申請をせず、
タスキなし、名前の連呼なし、辻立ちも最終日に一回しただけという
組織もお金もないニュータイプの選挙戦を展開した。
この映画を見れば、選挙の実態が本当によく分かる。
規模こそ違え、2012年12月の衆議院選挙も同じだったのだろう。

想田監督は、あの衆院選での自民党
(原発を推進し、国民に安全幻想を振りまき、
原発事故に多大な責任を負うこの政党)の圧勝という結果を見て、
ただちにこの映画の編集に取りかかった。
奇しくも2013年3月11日に映画は完成したという。

映画の中で、候補者たちは
「おはようございます。○○▽▽でございます。行ってらっしゃいませ。」
を繰り返し、市民はほとんど関心を示さず、足早に立ち去る。
投票率は44.91%だった。
山ちゃんは落選した。
しかし、私は、思う。
山ちゃんがもし、もう少し準備期間を持ち、
自分の主張をポスターに書くだけでなく
(現実に、その字は小さくて、通行人が読むのは至難の業だ)、
別の方法で市民に率直に訴える機会を持てば、
違う結果になった可能性はある、と。
公職選挙法では、政党に属してさえいれば、
党の紙面で自分の主張をすることができる。
無所属候補にはそれができない。
お金のない山ちゃんでもできたのは、朝夕の辻立ちだろう。
最後の日のパフォーマンスだけでなく、
それを毎日欠かさずしていれば、
人々は山ちゃんを心の隅か、あるいはど真ん中かに位置付けたかも知れない。
山ちゃん、発想はヨカッタけど、市民に訴える工夫が欲しかったな。

(自分は当選する)と信じている彼が眩しくもあったが、
(それは現実的にあり得ないのに…。もったいないなあ)とも思えた。
それにしても、日本の選挙は立候補者も実にへんなことをする(させられる)し、
多くの有権者もそういう人に投票する。
前近代的な、非民主的な方法がずっと続いている。
今度の参院選でも、
相変わらずそういうことを候補者たちはやっているのだろう。

蛇足だが、この映画は、他の候補者の態度やらがたくさん出ている。
それもたいへん面白かった。
想田監督も否応なく参加型フィルムパーソンになって、対峙したりして。
まだ観ていない人、
明日13日(土)は第七芸術劇場に想田監督が来はるよ~。
私も明日にすればよかったな~。あ~あ。

≪想田監督の舞台挨拶スケジュール≫
★7/13(土)大阪夏の陣
大阪十三・第七芸術劇場
10:00の回上映後 舞台挨拶
http://www.nanagei.com/movie/data/737.html
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2 コメント

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10日に観ました (お絵かきアコサン)
2013-07-20 08:36:45
最後の防護服で駅前(裏?)に立った山ちゃんの姿が衝撃でした。
もったいない、彼の作戦でも当選する方法はないものか。
駅前に立っても自分の主張を言うと
選挙違反だって!!???
知りませんでした。
緑の党のポスターを抱えて訪ねて来た友人に言うと
彼も知りませんでした。
連日暑い中、多数観に来られていました。
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お絵かきアコさん (ブルーはーと)
2013-07-22 11:11:34
お絵かきアコさん、コメントありがとうございます。(^_^)
書いてくださった「駅前に立っても…」についてですが、
選挙違反というのではなく、駅前演説する候補者同士で自主的・便宜的に時間を分け合っているので、普段駅前演説をしていなかった山さんの持ち時間はない、ということだと思います。最後の日だけノコノコ出かけても分け入る余地がなかったんですね。

山さんのような党に属さない無所属候補が政治主張をアピールできるのは、ポスター、葉書以外には、辻立ち(人通りが多いところで演説すること)ぐらいしかなかったのに、何故彼はそれをサボったのか、私はそれが不思議です。
山さんのポスター、文字はとても小さくて読みづらく、道路で彼のポスターの文字をきっちり読むのはちょっと条件が悪いと思います。

映画では、道行く人々の頑ななまでの無表情さも非常に気になりましたが、たとえそうであっても、無表情の仮面をかぶった人々の内に入っていく誠実さこそが、候補者に問われていないでしょうか。「候補者はセラピストじゃない」という意見もあるかも知れません。しかし、あの人々の無表情さはこれまでの選挙活動がもたらした結果であり、候補者と選挙人との現実の関係の一端を表すものです。この関係を打ち破るにはどうしたらいいのか、候補者側と選挙人側双方に求められる課題でしょう。

私が一番残念なのは、せっかく準備したあの衣装で毎日駅前に立てば当選した可能性あるんじゃないかしらということです。あれ、通行人の何人もが振り向いて見ていましたよね。

お金がないのは非常に、非常に不利ですが、それでも100%不可能ではないことがこの映画を観て感じました。かと言って「じゃ、お前出ろよ」と言われたら一気に「100%ムリ~」と答えざるを得ないんですけど。)^o^(
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