毎日がちょっとぼうけん

日本に戻り、晴耕雨読の日々を綴ります

成長する2年生   2011年5月5日(木) No.125

2011-05-05 21:03:08 | 中国事情
 ブログに紹介する学生の多くは3年生のことだが、実は2年生も元気で一生懸命だ。なのに、やはり日本語の表現力がまだまだ紹介するところまでいかない、と逡巡していたのだ。
 現在放課後自由参加の日本語クラブ活動みたいな「日本語コーナー」を実質的に切り盛りしているのは2年生だ。私が「連絡してね。」とクラス委員にメールを送ると、QQという便利な伝達手段(windows live messengerみたいなもの)で、パパッと全員に伝えてくれる。明日も夜、彼女たちは元気いっぱい日本語会話と交流のためにやって来るに違いない。理工大の学生達も来てくれたら、彼女ら彼らは、本当に張り切る。(外面が良いというか…)

 会話授業で時々作文も書かせる。いつものように、私が自分勝手にしていることだ。
先週「~と思う」「~つもりだ」「~予定だ」の会話練習をしたついでと言ってはなんだが、それを使って1分間スピーチ原稿を作り、発表することにした。原稿書きを宿題にしたところ、しばらくぶりで見る2年生の文はずいぶん読みやすくなっていた。以前文法も何もメチャクチャで解読しなければならなかったのが、ウソのようだ。
今日は、2年生の1分間スピーチ原稿「私の将来の計画」を紹介しよう。日本語学科だけあって、日本を視野に入れた将来設計が目立つ。


 「私の将来」(洪○芳)
 私は小さい頃からずっとアニメが好きだった。そのため、将来のいつか日本に行って、自分の目で日本の文化や社会などを見てみようと思っている。だから私は大学に入って日本語を選んで、今一生懸命日本語を勉強している。でも、私はまだ学生なので、お金がないんだ。だからといって将来の夢を諦めるのはいやだ。
と言うわけで、私は卒業してから、まず中国で就職するつもりだ。お金を貯めて、5年かけて日本に行く予定だ。



 「将来の計画」(孫○妹)
 私は広東で生まれた。5歳の時江西省の贛州に引っ越した。もう15年になる。今江西財経大学で日本語を学んでいる。日本語学科の学生達が、日本に留学したがっているのは普通ですけれど、私にとって留学費用は高いものですから、親にもずいぶん負担だと思っている。大学勉強中、留学のことは先に置いておいて、精一杯日本語を勉強しようと思っている。
 大学を卒業してから、日本語に関する仕事をし、チャンスをつかんで一度日本に行こう。日本に出張することでもいいです。夢だから、とにかく日本に行くのならどんな方法でもいいです。
 テレビで日本ならではの風景や風俗や習慣など、特に日本の食べ物はずいぶん深く心に残っている。将来ぜひ自分の目で見て、自分で体験しようと思っている。思うだけでも今ワクワクしている。
 それから、将来お金がある時、一度マレーシアへ行きたい。何ヶ月間かそこに住んで、熱帯にある民族の生活方法をしようと思っている。食べ物は、もちろんいっぱい、いっぱい食べて、太ったでぶになっても全然心配ではない。現在の就眠と一緒にのんびりゆっくり毎日を過ごすことは最高だと思う。ロングスカートを穿いて、海辺へ行って、途中で出会った知り合いや知らない人やらと挨拶して、海の向こうに沈みつつある夕日を見て・・・、もう想像ができない。
 現実に戻って、立てた計画を実現するためがんばらなくてはいけない。




 「静かな生活が欲しいです」(陳○玉)
 ものごとがよく分かって以来、私はずっと、静かで簡単な生活がほしいです。「それでは将来に見込みがない」と言われます。でも、それはそれで私ではないでしょうか。
 卒業したら、何年間か会社で働くつもりです。その時にまだ弟は学校で勉強していると思います。働いたら、両親の負担が軽くなります。仕事については、自分が好きな仕事であるのは第一です。それに、人間関係や給料はもちろん、会社がどこにあるのかも重要です。
何年間かかかっていろいろな経験を積んでから、故郷で自分の店を開くつもりです。どんなお店かは後で話しましょう。
 お金ならちょうど良いぐらいで十分です。多くのお金は面倒だと思っています。疲れたとき、或いは暇なときに家族と一緒に旅行に行きます。もちろん、友だちと一緒に遊びにいくのも必要です。
 とにかく、家族と友だちの健康と平安を願っています。自分もです。いい男の人を探して結婚して、そして、そのまま幸せに生活していくつもりです。特に母の健康は第一。今、母の身体が良くないからです。



 「私の計画」(羅○)
 日本語の勉強は、もう約2年になりました。私は日本に大きな興味を持つようになりました。中国と日本は隣の国です。日本人は中国のことを詳しく知っています。しかし、中国人は日本の事を知りません。
ほかの中国人だったらいざ知らず、私たち日本語学科の者は、日本国についてよく研究するべきだと思います。
 未来の計画と言えば、具体的なことはありません。でもだいたい、日本を理解することをめぐって進めるつもりです。大学の時、日本語は言うまでもなく、日本の文化と歴史と地理などの事を詳しく研究するつもりです。大学を卒業したあと、日本の会社で働くつもりです。日本の会社文化は日本にとってとても重要なことだと思いますね。日本へ行くにかぎるなあ。直接に日本人と日本の社会に触れて、よく日本を見たいと思います。以上が私の計画です。



 3月11日以降、私の感覚は明らかに変わっている。彼らの「5年計画で日本に行く」「日本に行くにかぎるなあ」という言葉を心から嬉しく思うのだ。
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「中国の原発についてはどうなの?」って言われても…。 2011年5月4日(水) No.124

2011-05-04 22:34:02 | 中国事情
 大阪の知人で「中国の若者が原発についてどう考えているか」と聞いてきた人からまた質問があった。
「中国の若者は中国の原発についてはどう考えているのでしょうか?」と。
彼はメル友大作戦にも参加してくれているので、メール友だちの学生にも次のようにメールを送ったとのこと。

「中国でも原発建設が進められていますが、日本の状況をよく見て、再考することをお勧めします。核は人間が扱える代物ではないことは、はっきりしました。廃棄物処理の方法もまだ見つかっていません。日本政府は、地中深く埋めるなどと言っていますが、数万年の管理を日本政府ができるはずもない。1000年後に『日本政府』が存在している可能性は極めて低いのです(日本は存在していたとしても)。
 原発は経済性もありません。地球温暖化にも悪い影響を与えます。
原発開発に意義があるとすれば、それは軍事目的だと思います。日本も中国も世界から原発は一掃されるべきです。」


 この文を読んで、感覚のズレはいかんともしがたいと感じた。
何て言うか、中国の若者に政治的言論の自由並びに行動の自由があるとしたら、それは外国批判のテーマに限ってだけなのだ。尖閣でデモをしても逮捕されない。しかし、この国は説明するのも疲れるけど、例えば、ある有力者(市長か何か)の妻が役所に行ったところ、普通の市民が来たと思われ、守衛に追い出されそうになったので抗議したら、ボコボコに殴られ、市長の妻と判って急に「あ、すみません。奥様でしたか~。」と通されたという、そういう国なのだ。
Q:市民なら殴られてもいいのか?!→ A:いいんです。という国なんですだ。

 若者に「中国の原発を再考することを勧め」たって、アナタ、彼らは、自分が考えたところで、いささかでも決定権があるとは思えないし、本当にないのだ。そこが日本と違う。
だいたい大学の図書館だって有力者の後ろ盾がある職員が威張っていて、図書館で一番マナーが悪く、大声でわめいているという悲惨な有様を、どうしようもできず、ひたすら忍んで将来ここから脱出することを合い言葉に、歯を食いしばって我慢している学生に、そんな高級なレベルのテーマを論じろと言われたってね~。論じて通るようなところではない。できるとしたら大暴動ぐらいじゃないかな。しかし、学生達は、まだ中国では原発は人里離れた山奥だからヨカッタとか、中国は日本みたいにしょっちゅう地震が起きる国じゃなくてヨカッタ、とか中国の原発は日本やらと違うのをつかっているから安全だとか、そんなことをつぶやいて頭の中の不安をどっかに押しやっている状態だと思う。

 それでも、『ソフトバンクの孫社長が脱原発に向けたエネルギー開発基金立ち上げのために大金を出した』というのを東京のテルちゃんから聞いて、そっくり学生に受け売りを言うと、「それは良いですね~!」と顔を輝かす。原発じゃない方が良いに決まっている。しかし、このややこしい国で政治的発言をしたり行動をしたりすることは、時には本当に人生が終わることを意味する。なので、次第に、考えもしなくなる。考えたら危険だからだ。
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原発事故・大震災と中国の若者   2011年5月1日(日)  No.122

2011-05-01 21:05:43 | 中国事情

 先日、大阪の知人から「中国の学生は原発のことどう考えているの?」と尋ねられた。
それは私も知りたくて、この間、何人かにさりげなく聞いたりしてみたことだ。しかし、彼らは政治に少しでも関連しそうなことへの発言は非常に慎重である。さらに、日本人老師という立場の私に対する遠慮が邪魔してよけいに口が重い。それでも、少しだけ、自分の意見ではなく世間の評判という形で話してくれたことがある。
中国の学生とはくくれない。江西省のある大学の日本語学科に在籍する学生たちの感触だ。

 原発事故と地震・津波への反応ははっきり明暗を分けている。
地震・津波の被害者には圧倒的な同情を寄せている。テレビやパソコンの映像をみんな見ている。とてつもない規模の大災害であることはみんな知っている。3年前の四川省汶川の地震は学生達が浪人か高校生の時のことだ。記憶は生々しい。親戚や知り合いの家族が犠牲になった体験を持つ子もいる。
多くの中国メディアが、東日本の被災者の行動を「我慢強く秩序正しい」、日本人を「精神的に強い民族」と積極的に讃えたこともあって、被災者のがんばりには100%賞賛の声をあげている。インターネットで、被災者のエピソードはたくさん伝えられているので、年老いた人が歩けない老母をバギーに乗せて、必死で高台をめざしたこと、昨日まで共に暮らしてきたお兄さんを失いお母さんの太ももにしがみついて、「お兄ちゃんは?どこに行ったの」と泣く女の子のこと、鉄道沿いに何日も歩いて娘を捜し、とうとう出会えて、号泣した60代のお父さんのこと、e.t.c.… 作文にたくさん書いている。

 しかし、原発事故と政府の対応には、私に遠慮しながらも批判的だ。
このテーマは教室では話題にもできないので、個人的に話したのを拾うと次のようなことだ。
「山東省では、風評被害にあって野菜が売れなくなった農民が自殺しました。」
「中国各地の放射能値を測定したら、1箇所を除き、全てプラス反応が出たそうです。」
「政府が中国国民に、いくら基準値以下だと言っても、国民の不安は解消されません。買い控えは国民の自衛手段です。」
「日本の政府は事故のレベルをじりじり、後から上げましたね。あれはひどいですね。初めから本当のことを伝えるべきでした。みんな日本政府は嘘つきだと言っています。」
「日本の原発事故は、中国を始め、世界に迷惑をかけています。日本だけのことではありません。」
「日本に留学するため、数年間必死で頑張ってきたのが、水の泡です。家族はもう絶対許してくれません。私も原発事故の犠牲者です。」
  ・・・・・・。
 風評に乗りやすい傾向は感じるものの、日本政府批判などはその通りだし、原発事故の影響についても、日本の責任について遠慮がちではあるが、はっきり述べている。尖閣諸島問題でも日本語学科の学生達は、微妙な立場に立たされたが、今回の原発事故は、さらに彼らの将来にマイナスの影響を与えることが懸念される。日本語を学ぶ学生にとって、中日関係が良好であり、日本が元気でなければ困るのだ。彼らは中日友好の架け橋になりたいのに、その橋を架ける可能性がとざされてはどうしようもない。
 改めて、この原発事故は隣国中国を始め世界にとてつもない悪影響を及ぼしていると言える。

 今日、1年生を連れて遊びに来た3年生の楼さん・郭さんも、関係者だ。郭さんも日本留学を目指しているが、やはり家族に日本行きは止めるように言われている。そのストレスの所為か、この頃郭さんは急に物忘れが激しくなってきたと、楼さんは言う。数日前は、楼さんが頼んだ昼ご飯を買い忘れて「もう別れる!」と大げんかしたそうだ。今日、私の前で「郭さんは、留学のことでストレスが溜まっているのに、私はそのことを考えず心が小さかったです。」と謝る楼さんに、郭さんは「やっぱり、食べ物を忘れたことは良くなかった。ぼくが悪かった。」とちょっとズレた言葉を返していた…。

 中国の親だけではなく、どこの国の親でも、自分の子を安全・安心な環境で生活させたいと思うのは当然だ。日本留学を止めるように言う家族の言葉は、日本人である私にはとても寂しいが仕方がないと思う。(でも、関西とか九州、沖縄ならいいんじゃないの?)と心でボソボソつぶやくけど、外国から見たら福島も大阪も沖縄も同じなんだろうな。

 (写真は廬山登山の途中。歩幅の合わない要らん石段のせいで登り辛いの何の…。この写真の段はまだマシ)

 

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