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Brugge Style
異人館通りの安藤さん
先日、友人と神戸北野の懐かしい話でおおいに盛り上がった。
わたしたちはお互いに神戸市の東端の山手出身だ。行動範囲や好みが似通っていたのだろう、楽しい思いをした場所が共通していた。震災後になくなった店や形を変えた街角、移転したレストランやバア、今も健在な老舗などの名前を挙げては、「あそこの隣」とか「あの道を渡ったとこ」などと場所を確認してゲラゲラ笑った。
記憶を辿るのに往生したのは、北野には似た名前の商業施設が多いからだ。例えば異人館倶楽部はパート1から3まである。安藤忠雄が設計をした建物もどれも同じような名前で困る。リンズ・ギャラリー、リランズ・ゲート、ローズ・ガーデン、北野アレイ...あ、書き出してみるとあんまり似てないな(笑)。
安藤忠雄、大好き。
特に北野にある小さめの商業施設が。
安藤忠雄の建築が世界を魅了するようになって久しい。が、70年の終わりから80年代頃には阪神間は「安藤忠雄に設計してもらった」家の建築が珍しくなく、少なくともわたしにとってはかなり身近な存在だったのだ。
直接知るそれらの家屋が芦屋市から西宮市の山手の新興住宅街に集まっていて、「デザイン優先だからトイレのドアが開けにくい」とか、「コンクリートの中身が完全に乾くまでは」とか、そういうネタをよく聞いたものだ。
うらやましいなあ、安藤忠雄の家。
こうしてわたしの行動範囲でもある東は西宮から西は北野で出会ったコンクリート打ちっぱなしの建物は完全にわたしを魅了した。
今でも英国の田舎の丘陵地帯に贅沢に直線を使った、回廊と中庭のあるコンクリートの家を建てたいと夢見るほどだ(建物の外観を街並と統一するという規制でなかなか難しいらしい)。
リランズ・ゲートに今はキッチュなお土産物屋が入っているという話を聞いたときは悲憤慷慨やる方なく、できることなら買い取って自分の家にしたいとすら思った。
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ロンドンのコンノート・ホテルの前にある安藤忠雄の「サイレンス」。
これをを眺めながらコンノートのバアで飲むのが大好きだ。晴れの日も雨の夜も。
コンノートは場所柄がロンドンでは一番好きなホテル。
北野は美しい。緑濃き山を背に、坂道が海まで続く。山手から眺める夜景。
異人館通りにはなぜか懐かしい感じのする洋風で瀟洒な館が並び、タイル張りやれんがや、コンクリートのモダンな建物と調和している。
ガラス張りの美容室、半地下のイタリアン、入りにくいバア、モスクに教会、老舗のデリカテッセンやパン屋、珈琲屋、商店...
欧州で安藤忠雄設計の家を建てるか、「サイレンス」を眺められる位置に家を買うか、北野に帰って安藤忠雄設計の建物を見ながら暮らすか...
ううむ、最後のヴィジョンが一番安価で現実味がある。
あと20年くらいしたら何度も繰り返し夢想したように北野に住んでみたい。
とろとろと坂をくだって三宮まででて買い物をしたり、中山手通で珈琲を飲んだり、近所のバアに立寄ったりしたい。あ、自分が喫茶店をするのはどうだろう。道楽で。楽しそう!
百年以上も前、北野で母国を郷愁しながら暮らしたであろう異人さんのように、わたしもベルギーや英国のことを懐かしく思いながら暮らしたい。
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