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Brugge Style
サハラから風が吹く
このところ、マラケシュの最高気温は35度程度に(今日は32度の予報)に落ち着き、とても過ごしやすくなった。
乾燥しているので屋外でも日陰に快適に座っていられる。涼風が心地よい。
が、先週末の数日間は45度にもなり、熱い爆風が吹いた。
現地の方も驚くような暑さだった。
どれほどの暑さかというと、まるで...
メディナ(旧市街)で見学した、各コミュニティにひとつずつあるという「平たいパンを焼く釜」の中はかくやあらむという感じ。
家庭でこねて寝かせたパンのタネを、布巾に包んでこのパン釜に持ってくると、パン釜屋さんがオールのような巨大な木製のヘラにタネをのせ、こんがり黄金色に焼いてくれる。
あとは頃合いを見て、焼き上がったパンを取りに来るだけでいい。
小麦の焼ける香りに垂涎していると、子供がおつかいに来た。
サザエさんで読んだ、昔の日本の風情はこんなだったろう。
ガイド氏曰く、モロッコの最小コミュニティに必ず備わっているのが、このパン釜、ハマム(アカスリのできるスチームバス)、モスク、学校なのだと。
人間らしい生活を送るために不可欠な、心身を育むシステム。わたしの住んでいるイングランドの最小のコミュニティ(村)に、必ず教会とパブがあるようなものか。
この「パン釜」のような機能を、行政のトップダウンではなく、コミュニティが自治管理・運営するのは昔からある優れた知恵かと思う。
何にでも値札をつけて売る市場の原理に侵されてきた社会資本だが、できる範囲でコミュニティの管理・運営にした方が、われわれはずっと豊かに暮らせるのではないかと思った。
閑話休題。
風の話をしているのだった。
乾燥した、気温45度の世界では、熱せられた爆風がサハラの砂を運んで来、ホテル内を縦横するブルーグリーン色のタイルを貼った水路は、あっと言う間にサンド・ベージュ色に変わった。
さらさらで粒の小さい砂は、プールサイドに置きっぱなしの本の表紙や、アイパッドをうっすらと覆って去っていく。
昔読んだ本の出だし、登場人物の女性が、アレクサンドリアかどこかの海辺でターキッシュデライト(粉砂糖をまぶしたゼリー上の菓子)をつまみながら読書をしており、風が強いために粉砂糖が飛び、本のページを何度もはらわなければならなかった...というのを思い出した。
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