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「千隻の船を進水させた顔」スパルタの女王ヘレネー
こちらに祀られているのは...
トロイア戦争は、ギリシャ連合軍とトロイアの間で戦われた、古代ギリシャ神話時代の大戦争である。
戦争の原因は、スパルタの女王ヘレネーの美貌。
彼女の美貌は、古代ギリシャ世界最高の「千隻の船を進水させた顔」だ。
父親は主神ゼウス。彼女は卵から生まれたという。
単位として、1ミリヘレネーは、一隻の船を進水させるために必要な美しさである...という度量衡があるほど。
ヘレネーが最大の1000ミリヘレネー、わたしの顔は0ミリヘレネー、であろう。
もちろんこの度量衡はアシモフの冗談だが、なるほど。
こちらはミケーネの考古学博物館に展示されている、ミケーネで出土した当時の女性の化粧周りの道具
この絶世の美女、スパルタ女王ヘレネーが、トロイアの王子パリスにさらわれた。
彼女の夫、スパルタ王メネラオスは、他のギリシャの諸王の協力を求め、トロイアに攻め入る。
トロイア戦争は多くのヒーローやヒロインを産み、10年間続き、最終的にギリシャ軍が「トロイアの木馬」を使って勝利をおさめた。
この物語は、特にホメロスの叙事詩『イーリアス』で有名で、多くの文学作品や映画の題材となっている。
渦巻は多くの文化において、生命のサイクルや無限性、再生の象徴。
こちらはアテネの考古学博物館の展示
時はたち、19世紀。
シュリーマンが、当時は単なる「神話」と考えられていたトロイアを執念で発掘した。
それには遠く及ばないものの、わたしは「ヘレネー」とはいったい何者なのか、ということに非常に興味を持っている。
彼女の行動には、神話の登場人物とはいえ、整合性も一貫性も、悲劇性も喜劇性もないのだもの...
いったい、この美女は何者なのか。
傾国の女王は、実在したヒロインなのか、女神なのか?
美しすぎる...
アテネ考古学博物館展示
古代スパルタの近くのメネライオンには、ヘレネーとその夫メネラオスを祀る神殿の遺跡が残っている。
それが1枚目の写真と、このすぐ下の写真だ。
ヘレネー、少なくとも、吟遊詩人が吟じた叙事詩の中にだけ登場する人物ではなさそうだ。
今回、観光客はほとんど訪れないこの神殿跡を訪れるのは、わたしにとっては外せなかった。
途中までSUVで登ったが、途中からはそれでも進めず、オリーブ畑の中に車を捨てて、坂を上った。
結構大変だった。
神殿跡は、すでに基礎を残すのみ。
19世紀には発掘作業も行なわれたようだが、「千隻の船を進水させた」世界一美しい女王を忍ばせるものは何も残ってはいなかった。
いや、それは違う。
この基礎のみが残る神殿の立つ丘の背後には神々しい連峰。
日本人なら霊峰と呼ぶだろう。
山頂付近は銀色に光り、暑さゆえか、霞んで見える。
緑は季節には頂上まで這いあがるのだろう。
右手には古代スパルタが望める。
ここは確実に神聖で特別な場所だ。
彼女は偶像を残さないことで、その美貌を永遠に刻んだ...
とはいえ、古くからへレネの美貌は古代ギリシャの壺の柄、絵画の主題、映画...とさまざまに取り上げられ、ネット上にもたくさんイメージはある。
しかし「美貌」とは文化的なものでもあるので、ここには彼女のイメージは載せないことにした。
一番近いのは、古代ギリシャ彫刻の美の女神アフロディーテあたりでしょうか。
......
美女が略奪され、取り戻す、という類似の物語はインド・ヨーロッパ各地の神話と共通の要素を持つ。
ギリシャ神話の別の登場人物ペルセポネーとヘレネーの間には共通点もあり、彼女らは植物神、豊穣の女神、さらには「太陽の娘」としても解釈され(ヘレネーの双子の兄弟は「光と生命を取り戻す」役割を持つ)、自然のサイクルや再生を象徴する女神であった可能性があるという。
彼女が「卵」から生まれたというのも、現代の復活祭でも見られる「復活のシンボル」の卵、と同根だと...
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