goo

神殿の香り、再び




先日、「神殿の香りが大好きだ」と書いたら、神殿の香りってどんなものだろうという反応をいくつもいただいた。

香りは、個人の関連づけや連想や、思い出などにも強く結びついており、色や音、形などに比べて客観的に「これ」と示すのは難しい。

だからこそいろいろな方の連想を誘い、思い出のお話や、ご感想をいただいたのは、とてもうれしかった。


昔からこの拙いブログ宛にメッセージをくださる方には文章の上手い方が多い。

その中にしばしばショート・ストーリーが挿入されていて、故郷を離れた御祖母、音楽室での心の交わり、旅先で出会ったデジャヴ、初めて見たティツイアーノ、そしてもちろんブルージュを訪問された時のお話...

などなど「まとめて本にできるんじゃないの?」という感じだ。

いつかあなたのメールボックスに「このお話を本に編んでもいいか」というメッセージが届くかもしれません。その時はどうぞよろしくお願いいたします(笑)。


わたしは、「神殿で焚き上げる香、生花、書物の匂い、ろうそく、閉じられたまま100年が過ぎた小部屋のカビの匂い、木材などのミックス、そして旅先...」が好きと書いた。

そりゃもう漠然としすぎ、説明下手すぎで余計わからなくなったのかもしれないが、その下手さこそが連想を誘い、思い出の引き出しを開けたのがとても興味深かった。


具体的な話をするとすれば、上の写真は、その名も"Carmelite"「カルメル派」、"Spiritus Sancti"「聖霊(三位一体のうちの一つ)」。頭がクラクラするくらい好き。

そして何より同ブランドの香水"Mortal"「死すべきもの」。白目を剥くくらい好き(笑)。




このカルメル派修道女のイラストが描いてある小皿はキャンドル(もちろん「カルメル派」)を置くためのもので、超気に入っている。


今、プーランクのDialogues des carmélites『カルメル派修道女の対話』を聴きながら書いている。
信仰とは、祈りとは、意味を問うてもいいのか、人間とは何か、が描かれている。

最後のシーンのギロチンの音は強烈。

音の場合はYouTubeで聴いてみて、と気軽に言えるようになりましたね...

香りも、いずれはそういう装置が開発されるかしら。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

芸術家の世界




約一年前、去年の12月、クリスマス直前のブルージュ。

今年は新型コロナ禍で、夏に大急ぎで帰ったきりだ。


写真は今日の内容とはほとんど関係がない。


娘がブルージュのコンセルバトワールでお世話になったピアノの恩師が、『メディア』(古代ギリシア三大悲劇詩人のひとりエウリピデスによる戯曲)の作曲風景をライヴストリームで流すのを観覧した(今も継続中)。

彼女はもうだいぶ前からピアノ教師はしておらず、現在は作曲と作曲教育に専念していて、欧州では有名な作曲家なのである。

静謐で理知的でありながら、その真反対(<これを情熱などと呼ぶと野暮ったくなるのであえてぼかす)を併せ持ち、一小節に数時間かけつつ、全体を見ている。
なんと平均して1日につき8秒(8秒を作曲するのに1日かかる)の演奏を完成させるそう...
オーケストラと声楽パートもですからね...
頭の中、いったいどうなっているんでしょうね...

そういった「芸術家だけが見ている別の世界」へ連れ去られてしまうという快楽の中で日が暮れた。


たとえ、たとえ消音で画面を見ていたとしても、「彼女が見ているもの、聞いているもの」が、間接照明の中に浮かび上がる。

まるでメディアの魔法そのもののようだ。
「魔法のようだ」というどうしようもなくシロウト臭い感想に彼女はきっと苦笑するだろうが、彼女の目と耳を借りて(グライアイのように?)見る世界は、わたしに馴染みのあるものとは全く違った風景の世界だった。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

和蝋燭




友達がプレゼントしてくれた美しい和蝋燭は大切にしすぎたようだ。

わたしの「驚異の部屋」の中で10年以上が経過、先日、ある人を偲ぶために思い切って火をつけたが、蝋が燃えるばかりで火がつかなくなってしまっていた。

ああ、大切にしすぎるのも考えものですな。

赤い薔薇の花びらを炎に見立ててしばし遊ぶ(笑)。


同じパターンは和食材にもよく起こる。もったいなくてとっておいたらいつの間にか賞味期限が切れてしまった(無視して食べるけど!)というケース。


和蝋燭といえば、去年の夏休みに一時帰国した時、金沢を訪れた。

帰りの新幹線までの時間潰しにお土産屋さんなどを見ていたら、自分が好きなものの多くが能登半島の名産品であることが分かった。

錫製品、和蝋燭、焼物、漆器、金箔(<笑 わたしは料理によく使う)、魚介 ...

わたしは「昔、栄華を誇った土地」がとても好きなのだ。




その時に買い求めた和蝋燭(下写真)とろうそくたて(上写真)、とても気に入っている。
この和蝋燭もまだ火も灯したことがない...思い切って今年のクリスマスの飾りのひとつにしよう。


4月に予定している一時帰国の予定には入っていないが、いつか能登半島を車で旅してみたい。

行きたいところがたくさんありすぎて困る。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

捨てられない




わたしはものが捨てられない。

将来、美しい空き箱を集めた「箱博物館」を開館しようと思っているくらいだ。

美しいカードや、美しい字体のプリントされたもの、特殊なデザインなどもなかなか捨てられない。

幼かった娘が作った工作や、学校のノート、書き込みのあるカレンダーなんかも...これらが捨てられないのは思い出が捨てられないからで、美しい箱が捨てられないのとは理由が異なるのだが。


もちろん薔薇の花びらもなかなか捨てられない。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )

christian dior





去年、ロンドンのヴィクトリア&アルバート美術館で開催されたディオール展は稀に見る大盛況だった。

会期は延期され、営業時間も延長され、それでもチケットを取るのすら難しく、ある友人はこれを見るためだけにわざわざ外国からロンドンを訪れたり、友の会メンバーになったりしたのだった。
わたしも遊園地に行く子供のように複数回見に行った。

その時期の出張ついでのロンドンで、ぜひ見たいと言っていたのに結局チャンスを逃した友人に、自分が買っておいた展覧会の写真集を差し上げた。
彼女が、表紙裏に一言書いて、と言うので、ロンドンでお茶を飲みながら記念にグッドラックのメッセージと日付を入れた。

その話をまた別の友人にしたら、今年のお誕生日にと贈ってくれた。もちろん、表紙裏に素敵なメッセージを書いてくれていた!

ディオール展は忘れられない展覧会だが、これでさらに特別なものになった。


ディオールといえばピンクの薔薇。
でも今うちには大量の赤薔薇があるので...この本の間で押し花にしようかしら。

何十年か経って、娘や孫がこの本の間に赤い薔薇の花びらを見つけたら素敵だろうな、と。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 前ページ 次ページ »