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神殿の香り



先日、ある方と香りの話をしたことから...


わたしは「薔薇の香り」と「神殿の香り」が大好きだ。


「薔薇」と「神殿」の香りならば、薔薇の香りの方がイメージしやすいだろう。

が、実際には薔薇の香りにもさまざまあり、あの人とこの人がイメージする薔薇の香りは全く異なっている。

好みで言うとわたしは濃厚で妖艶な粉っぽい薔薇の香りよりも、柑橘系の薔薇の香りが好きだ。
ただ、柑橘系薔薇の香水というのは非常に稀。


「神殿の香り」はさらにイメージしにくい上に曖昧だろう。

神殿で焚き上げる香、生花、書物の匂い、ろうそく、閉じられたまま100年が過ぎた小部屋のカビの匂い、木材、などのミックス、そして旅先...

上の写真はその名も「カルメル派」というCire Trudonのルームキャンドル。


以下、とても面白い記事(長い)を見つけたので都合のいいところだけ都合よく訳して紹介する。
"Old Rose, Tea, Fruit, Musk, Myrrh – fragrance & unlocking the secrets of the rose"


香りの描写は難しい。

例えば色には一般的に使用されている明確な語彙があり、人によって「赤」とか「青」とかのシニフィエに大きな違いはない。
しかし匂いを定義する明確な語彙はなく、人それぞれが「関連付け」でしかイメージできないのである。

人はそれぞれが、自分自身の個人的な関連付けと記憶をベースに、香りを認識するのである。

香りの感覚は原始的な感覚で、化学反応に対する感覚である。
わたしたち好みの香り、例えば花や果物の香りに対する好みは生来のものであるが、一方、学習し、関連付けすることによって好む香りもある。つまり香りが子供の頃の思い出、部屋や食器棚の匂い、大好きな祖母の匂いなど思い出を蘇らせるのはよくあることである。

香りは思い出とも結びついているのである。


薔薇の香りの構成は非常に複雑だ。
香水に使用される薔薇油を分析すると、450を超える化学成分で構成されていることが分かる。
この450の成分のうちのいくつかが、薔薇の香りとして認識されるが、他の香りは非常に不快で強い匂いだったりする。しかし、それらは一体になることによって統一された薔薇の芳しさになるのである。

薔薇の繊細な香りの中には、レモン、ブラックカラント、ラズベリー、蜂蜜、水仙、バイオレットなど、他の香りとの関連性を見つけることができる。
実は薔薇の香りを説明する試みのほとんどは、そのような「比較」「関連」ものに基づいている。しかもそれはわたしたちそれぞれの個人的な関連付けである。
ある人にとっては、薔薇はグレープフルーツの匂いがし、別の人にとってはブラックカラントの匂いがし、別の人にとっては猫の匂いがする...匂いの化学的性質は密接に関連しているので、それらはどれも正しいのである。

薔薇の香りは、時間帯、花の成熟度、季節、または一般的な天候に応じて香りを変えることができ、条件によっては同じ植物の2つの花でさえ、時々まったく異なる香りがすることがある。

つまりワインについて学ぶときと同じように、香りは比較がすべてなのだ。
2本の薔薇の香りを嗅ぎ、違いを説明しようとするのは、どんなに似つかわしくない言葉(猫の匂い?)であっても、さまざまな種類の香りを認識するための最も簡単な方法なのである。

匂いに対する感受性のレベルは人によって異なる。
匂いの感覚は非常に個性的だ。わたしたちがみな、異なる関連付けと感度を持っているからなのだ。


薔薇は非常に個性的で、その香りはしばしば複雑で神秘的だ。
わたしたちは薔薇のさまざまな香りを愛し、表現するかもしれないが、それはおそらく薔薇の魔法の一部であり、単なる言葉では薔薇の香りの多様性と美しさを表現するには全く不十分でなのだ。
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the royal ballet : live




昨夜はロイヤル・バレエのライヴがオンラインで放送された。
アンソロジーとしては、3月のロックダウン以来2回目だった。

実は今月からソーシャルディスタンスを設けつつロイヤル・オペラ・ハウスでの公演が始まるはずだったのだが、わたしが見にいく予定だった日を待たずにイングランドは再びロックダウンに突入。

12月に予定されていた『くるみ割り人形』も今のところ未定になっている。


このブログ上でもおすすめした前回のライヴは、受信できない人が続出、しかも映像が悪く(明る過ぎて映像が潰れてしまっていた)、さらにはカメラの位置もよいとはいえず、かなり残念だった。

また、言いにくいことだが、数ヶ月のロックダウンというのは、当然ダンサーの心身に大きな影響を与えるのだなと実感もした。
彼らがとてつもなく勤勉で、毎日オンラインの練習に参加していたとしても。体型が変わりやすいタイプもおられるのだ。逆に通常の練習量や緊張感がすさまじい、ということなのだが。


世界には人間が責任を持って解決しなければならない問題が多くあり、何の希望も持てなくなる時があるが、最高に美しい人たちを見ているだけでも、パンドラの箱の中には小さく輝く「希望」が残されているのだ、という気持ちになる。





昨夜は二人のプリンシパルMarianela NunezとVadim MuntagirovがLe Corsaire(ロイヤルバレエでは珍しい)、
Natalia Osipova のDying Swan、Christopher WheeldonのWithin the Golden Hour(<大好き)など...

しかしやはり生とは違う。早くロイヤル・オペラ・ハウスで見たい。

......




書きそびれたのは10月29日、年に一度の#WorldBalletDay(世界バレエの日)。
世界40のバレエ団のレッスン風景や、リハーサル、インタビューやイベントなどのライブをYouTubeで一日中見られる日だ。

わたしはロイヤル・バレエ(4時間!)とボリショイ・バレエの一部ライブを見た。


上の写真は先日のRoyal Ballet : Back on stageの時の二人のプリンシパルMarianela NunezとVadim Muntagirov(Don Quixote)の写真だが、昨日はBalanchine’s Tchaikovsky Pas de Deuxの練習風景を見られた。
マリアネラの星がたくさん入ったキラキラした瞳を見ているだけでもこう、胸の奥からこみ上げるものが...

こちらはYouTubeで見られるのでぜひ。
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霧の中に咲く薔薇




霧の中に咲く薔薇
Queen Elizabeth

色を失いつつある冬の庭で輝いている。

女王の名を冠しているということは「最も英国的」な薔薇なのだろうか。

......


親友にせつかれて萩尾望都の名作『ポーの一族』の続編をやっとこさ読んだ。
(『ポーの一族』と薔薇は切り離せないのである)

漫画はほとんど読まないわたしに、彼女は「そっちのロックダウン中に読んで」と言った。

『春の歌』と『ユニコーン』。
明日は電子図書で『秘密の花園』が読めるようになるらしい。


70年代までに描かれた前シリーズを読んだのは高校生の時で、まさに彼女にすすめられて、だった。

今回読んでみて、おもしろいなと思ったのは、自分があたかも時を超越して存在するバンパネラのように、時を超えて同じお話を外側から鑑賞していることだった。

そして舞台になっている英国に自分自身が住んでいるのも。


前シリーズが、人間側から見た神秘的で孤独なバンパネラ(吸血鬼一族)だとすれば、21世紀を迎えて描かれた新シリーズは、バンパネラの側の事情や意外にカラフルな系譜を明かす、という感じで描かれている。

シリーズの通奏低音として流れているのは、「バンパネラ」という種族を描くことによって「何が欠けたら人間ではなくなるのか」。
ひいては「人間とは何か」「存在するとはどういうことか」「自己同一性とはなにか」を描いている。

その回答は「記憶」と「他者からの承認」だと思うのだが、いかがだろうか。


作品の中で主人公のエドガーが、人間は短い命だから命が惜しくないのかもしれないと答えるのだが、そこは「人間は自分がいつ死ぬか知らないから」とわたしならば言わせるかな...
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孔雀明王




先週訪れたキューガーデンには、日本ゆかりの「庭」が2ヶ所ある。

一つは「民家」(下写真)で、もうひとつが「勅使門」だ。
1910年の日本・英国博覧に展示された、西本願寺唐門の四分の五サイズのレプリカが元になっている。

周囲は露地をイメージしており、枯山水も。


そこに色も鮮やかな孔雀明王のシンボルがおられた。

これはとてもよい兆候!
隣にしゃがんで、動きを観察。鳥の動きを見るのは楽しい。

とはいえ、この孔雀明王は、他の例えばギリシャ神殿風の庭(キューガーデン「ズ」はその名の通り複数の庭で構成されているのである)で目撃されたら、「おお! ヘラの聖鳥ではないか、なんよい兆候!」となるのだろう。

神様の本質からして、もともとそういうものか。


わたしは宗教的ではないが、縁起を担ぐのは好きなのである。
外国人から日本人の一般的な宗教観を尋ねられ、手短に答えねばならないときにもこのように答える。

これをバラモンの方に話したら、インドでもそうだとおっしゃるので、「いやいや、それはたぶん、インド哲学が本家本元なのですよ」と...


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夜鍋




どうもこういった細かい作業は夜中にするのが好きなようで(いや、好きというか夜中でないと集中できない)、TVでアメリカ大統領選の顛末を、しかも一晩中繰り返し同じ内容を聴きながら、リクエストに応えるべく、マスクと手袋をして遂行した。

パッケージはnet-a-porterのすばらしく上等で頑丈な箱が役立った。
中身を靴?! バッグ?! などと一瞬ぬか喜びさせてしまう危険は伴うが。

わたしは将来「箱博物館」を開館する予定にしているほど箱好きで、美しい箱は全部とってあるのだ。その(物置)部屋は夫からpresent wrapping room「プレゼントを包むための部屋」と呼ばれている。


今朝DHLが取りにきてくれてお役目完了。

11月生まれはわたしと娘だけでなく、意外と知り合いや友人にも多い。

たくさんの人に配っていただけたらいいなあ。


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