「お前の落とした斧は、金の斧か、銀の斧か。」
「え?そ、そーですねぇ。えへへ。金の斧ってぇ言いたいところですが、普通の、ちょっと錆びのある鉄の斧です。へへ。正直に言いましたっ。」
「・・・・・お前は正直者だ・・・けど、なんかヤナやつだな・・・。」
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「お前の落とした斧は、金の斧か、銀の斧か。」
「え?そんなわけねーじゃん!そんなもので木が切れっかよ!鉄の斧に決まってらーっアホかっ。」
「・・・・・お前は正直者・・・だが・・・ムカつく。」
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泉の精は呟いた。
「正直者なら誰でも褒美をやるというのは、なんか違う気がしてきたゾ。
やっぱり、いくら正直でも素直な性格じゃなくてはイケナイな。
でも待てよ、いきなり『自分の斧は鉄だけど、その金と銀の斧が欲しい。』
と言う者が現れたらどうしよう。
そいつは、めちゃくちゃ正直で素直じゃないのか?
では、”正直で素直で節度ある者”としておこうかな。
ん?”節度ある”っていうのも曖昧かな?
『金の斧は遠慮しておきます。銀の斧だけいただけませんか。』というのは
節度ある素直な要求の範囲だろうか。
いやいや、それは見る者によって違うかもしれない。
共感を得られなければ意味がないゾ。
う~ん・・・・。
そうだ!全部まとめて”空気が読める者”にしよう。
でもまてよ・・・でも・・・・・。」
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「大切なものは、目に見えないんだ。」
6月29日。今日は「星の王子さまの日」。サンテグジュペリの誕生日だそうです。
注)金の斧のお話は、イソップ童話です。星の王子様とは関係ありません。