日々茫然

猫・本・アート・日常生活などを、つれづれと思いつくままに記録

『空中ブランコ』 奥田秀朗

2006-12-19 | 本と漫画の話



いまさらですが『空中ブランコ』を読みました。
同シリーズの1作目にあたる『イン・ザ・プール』は、人気になる前に読んでいて、面白かったので『空中ブランコ』も読みたかったのですが、直木賞受賞・ドラマ化・映画化で人気が出てしまい、図書館の予約数がものすごい数になってしまいました。
もっと人気が落ち着いてからあらためてと思っていて、そのうちすっかり忘れてしまっていました
そして先日、図書館の棚で普通に発見。完全に落ち着いていたようです。

伊良部総合病院の地下に追いやられるように存在する精神科。そこにいるのは、跡取り息子のはずのトンデモ精神科医・伊良部と、妙にセクシーでやる気の無い看護婦だけ。
そこへ、演技中に落下してしまう空中ブランコ乗り、尖端恐怖症のヤクザ、上司で義父でもある教授のカツラを取りたい衝動に駆られる精神科医(伊良部と同級生)、送球のコントロールができなくなったプロ野球選手、以前にも同じ話を書いたような強迫観念に襲われる女流作家など、様々な悩みを抱えた人々がやってくる。
そして患者は困惑する。まず詳しい話を聞く前になぜかいきなりビタミン注射を打たれ、患者の話もろくに聞かない。精神年齢5歳児並み!?まともな治療をされているとは思えない…
「2度と来るか」と思っても、なぜかまた訪れてしまう。伊良部に付き合い振り回されるうち、患者はなぜか、癒されていく…


身近にいたら迷惑極まりないだろうに、なぜか憎めない伊良部。
例えば、表題作『空中ブランコ』では、患者が「空中ブランコ乗りです」と言うや否や、「僕もやりたい!」とノリノリ。本当に「やらせてよ」と押しかけてきて、恐怖心も全くなく、あっさり飛んでしまいます。(落ちるけど)
本当にみんな、伊良部に振り回されているだけなんですが、伊良部の何気ない言動などから、自分で立ち直るキッカケを見つけていきます。
プライドや地位や羞恥心などを全く気にしないで、やりたい事をやる伊良部を見ていると、自分の悩みなんてちっぽけに思えてくる…?
面白かった 

『イン・ザ・プール』を読んだのが何年も前の話で、毎度の事ながら内容があまり思い出せないので、また再読したくなりました。

コメント (2)
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