カラダよろこぶろぐ

山の記録と日々の話

高所恐怖症の槍ヶ岳チャレンジ【後編】

2011-10-01 | ヤマのこと

前編はこちら

怖くて槍の姿を見れない私。
小屋の前で槍に背を向け、緊張で乾いた喉にチョコレートを無理矢理ほうばりながら言い聞かす。

”落ち着け、私。何の為にここまで来たんだ。
この日の為に あの山 や、あっちの山、 ここ とか こんなところで練習を積んできたではないか。
しかもこのほぼ無風で快晴な登頂日和、このチャンスを逃すなんてありえない!”



”ここで敗退したらオンナがすたる 行け、ワタシ。”
槍の穂先目指して一歩を踏み出した。



一歩ずつ前に進む。ここまで来てもう後戻りは出来ない。
指先は緊張で冷たくなっていたが、いつもの怖い時のような冷や汗はかいていなかった。


一旦日影側に廻ると風が冷たくて、さらに身体が硬直するようだ。
ここで女性が一人しゃがみこんで固まっていた。
「登るんですか?!降りるんですか?!」と誰かに聞かれてたけど・・・(~_~;)
そんな追い立てないであげてぇ・・・確かにそこでとまられても困るけど・・



ふー、なんか開き直ってきたかも?少し落ち着いてきたぞ。



一つ目の階段は今日初めてとあってかさすがに緊張した。
次はこの足掛の少ないスラブ状の岩を、鉄製の杭を手がかりに登るところ。
はめていた100均グローブが信じられなくてはずし、素手になった。
とにかく終始落石を起こさぬよう、慎重に。三点支持を確実に。
自分の失敗は周りを巻き込む。
ビビリなワタシは一つ岩を掴む、足をかける度に、動かないかどうか確認してから登っていった。



無心で登っていたら、槍ヶ岳山荘があんなに小さくなっていた。



渋滞で立ち止まるとヘリの音・・・振り返ればすぐそこに飛んできた。
自分が二本足で立っている場所より、低い位置にヘリが飛んでるのを見てる、不思議な光景。



さあ、最後の梯子が見えてきたよ もうちょっとだ
ダンナは「怖えーー!下見れないよ!」と珍しく叫んでいたけど(笑)
不思議だけど怖いと同時に山頂を踏める嬉しさでワクワクしてる自分がいた。(一本線が切れたのかも?)




下は見ず、梯子だけを見つめ一歩一歩。
そして・・・最後の階段を登りきり・・・


着いた・・・槍ヶ岳の穂先だ。


・・・ウワサ通り山頂狭っ

20人立てるか立てないかの狭さ。
フラっとしたら怖いので常に前傾姿勢(笑)で記念撮影の順番を待つ私。
だけど山頂に立ったら怖くて見れないかと思ったけど、見れた。
だって360度の大展望、見なきゃもったいないも~~~ん



槍ヶ岳山頂からの富士山。



笠ヶ岳方面。



まだ行った事のない薬師岳、立山連峰方面。



常念岳・パノラマ銀座・東鎌尾根方面。




穂高のギザギザがカッコイイ~~~



北鎌尾根から登ってきた人々・・・すごすぎる



そして・・・





10:28、高所恐怖症、ついに槍ました、やれました、感無量です
(端っこが怖くて立つことが出来なかった・笑)
3180m、槍の穂先を踏めました満面の笑みです



だけど頭の中は・・・




早く降りたい((゜д゜○))三



20分ほど山頂を満喫し(というか順番待ちで降りたくても降りれない)山頂を後にします。




ワタシ先降りま~す 一歩目を出すのが緊張します。
下りは見えないから階段も一歩一歩確かめながら。
岩が出っ張っていて、梯子に足をかけるスペースが少ない段もありました。



でも登れたものは降りれるのです。下の階段はもう余裕のピース



・・・と調子に乗ってると足場が見えない緊張する場面もありますが。



戻ってきました。



ここでやっと本当の喜びが。槍ましたーーーーなんでしょう、この達成感。



結局一番怖かったのは登る前でした 緊張から開放され、お腹が空きました。
山荘でカレーを食べようと思ったら激混み。(焼きたてパンはいずこ?)
仕方がないので小屋の前のテラスで、ジュースを飲みながら行動食で休憩。

この夏、悪天候で全然満足のいく山歩きが出来なかった私が哀れで、
山の神様が同情してくれたのでしょうか
こんな快晴の日に登らせてくれてありがとう。感謝の気持ちで一杯でした。


我に返り時計を見るとまだ11:00。
今日ココに泊まれば、確実に素晴らしい夕景と朝日が拝めるだろう。
だけど、翌日の仕事を考えると、連休最終日の帰りの混雑はうんざり。
今回は槍ヶ岳登頂だけを目指してきたので、多くは望まず、満足して予定通り下山しよう。
テント場で祝杯だーー


でも・・・あのテント場で祝杯をあげるのは・・・なんか悲しい。


「ねーねー、頑張ったご褒美にテント場下の小屋に泊まろうよ!
お風呂もあるんだってよ!そしたら明日お風呂入らないで早く帰れるしさ

ダンナを口説いてみたところ、いいよ、ということになり、
同じルートをテント場まで猛ダッシュで下りることに。



11:30、お名残惜しいですがサヨウナラ、槍様、優しく迎えてくれてありがとう




ん~~~何度見ても美しい槍ヶ岳の姿。何度も何度も振り返ってしまう。



この時間でもまだゴンゴン登ってくる皆さん。暑いから苦しそう。でもシアワセそう
みんなが笑顔になる、だってこんなに素晴らしい天気と景色だから。



昨日とは打って変わって日差しも強く暑い!
顔が焼けそうなので私は得意のほっかむりで降りていきました。


テントを撤収し、時計を見るとまだ14:30。

欲&お金もったいない病が出て、
「小屋泊やめてまずは横尾まで降りちゃう?できれば大好きな徳沢まで?」

そうと決めたらダッシュだ!徳澤の美しいテント場で最高の朝を迎えよう!GO




帰り道、槍沢ロッジの望遠鏡を覗くと、まだたくさんの人が穂先に張り付いていた(*^_^*)



急ぎ足で降りたって、緩やかで歩きやすい登山道。
先週の稲村岩尾根のことを考えたら(まだ言うか)、雲の上を歩いているような気楽さ。



横尾が見えたよーーーいま16時。うん、まだ行ける。





17:00、日没前に徳澤に帰ってきました。
大急ぎでテントを張って・・・



かんぱ~~~い!この日のビールの美味しかったこと
あまりに遅すぎて食堂ではおでんしか残ってなかったけど。(チャーハンが・・・)


天の川まで見える、満天の星空に包まれ、
フカフカ芝生の美しい徳澤のテント場でゆーーくり眠ることが出来ました。


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2011.9.25(日)



気持ちの良い徳沢の朝。やっぱりここまで来て良かった。



テント場から前穂高が赤くなるのが見えると、なんだか嬉しくなる。
帰るのが惜しいような天気だけど、混雑回避でもう帰ります。



晴れ晴れとした気分で足取りも軽くバスターミナルへ向かう。
おととい、不安な気持ちで歩いたこの道も景色が違うように見えるからゲンキンだ。

槍ヶ岳に登れたからと言って、高所恐怖症が克服できた訳じゃない。
まだまだ私のような未熟者には怖くて近寄れない山がたくさんある。
だけど今回の経験は、少しだけ自分にとってプラスになった、と思いたい。



朝の梓川沿いをゆるゆるとバスターミナルへ。
シャワー室を借りてさっぱりし、バスに乗ります。



今回の成果があったのかどうか?答えを実感できるのは来年かな?
また会いましょうね、北アルプス。


時間が余ったら「氷河公園」に行くんだ!と思っていたはずなのに、
登頂の嬉しさで舞い上がって下山してきて、あとで行くの忘れたことに気付き、
ショックを受けたことはナイショにしておこう・・・


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【行程】
9/22:新宿21:00→松本24:40 エースイン松本 前泊
9/23:松本駅6:32→上高地バスターミナル9:30→徳沢11:05→横尾11:50~12:30
   →槍沢ロッジ受付14:00→ババ平14:30 泊
9/24:ババ平5:45→天狗原分岐→殺生分岐8:40→槍ヶ岳山荘9:30~9:50
   槍の肩9:50→槍ヶ岳山頂10:15~10:35→槍の肩11:00
   下山開始11:30→ババ平13:50・・・テント撤収14:30→横尾16:10→徳沢テント場17:00 泊
9/25:上高地バスターミナル10:10  松本13:05→新宿15:40



毎度大げさなレポ読んで頂き、ありがとうございました。

おしまい。