日本の交通で、最も安全対策が遅れているのは自動車ではないでしょうか。少なくとも、鉄道よりは遅れているでしょう。
東名高速でのあおり運転のために追突事故に巻き込まれるという悲劇がありましたが、思い出せば、私も何度となく後ろから車間を詰められたことがあります。
特に高速道路で、車間を空けるのは教習でも叩き込まれるほどの常識なのですが、実際には通用しないのか、「これで急ブレーキを踏まなきゃならなくなったえらい大事故になりそうだよなあ」と思うことが度々です。
一度、関越自動車道で追突寸前まであおられたことがあります。後ろから接近してきた車は、何を急いでいたのかわかりませんが、後ろからピタリと付けられ、何度も追突しそうなほどに異常接近してきます。命の危険を感じたので、私はすぐに左車線に待避しました。渋滞しておらず、左側車線が空いていたのが幸いでした。その後、何十分か経つと、鶴ヶ島ジャンクションで事故が発生したとのことで、渋滞に巻き込まれました。事故現場の脇を通ったので、少しばかりみたら、私をあおった車が事故を起こしたようです。追突でした。
高速道路だけでなく、一般道路でもあおりがあるので油断はできません。場合によっては高速道路よりも恐ろしいかもしれません。
今でも思い出すのは、大分大学の助教授時代に、当時の宇目町、今は佐伯市にあるトトロの里へ行こうと思って当時の三重町(今の豊後大野市)から国道326号線を走った時です。後ろから猛スピードで走ってきた小型トラックにあおられました。制限速度40km/hか50km/hの場所で、しかも片側一車線しかありません。脇にそれるにもそれる場所が見つからず、実際に何分間あおられたのかわかりませんが、体感的には5分ほどでした。ようやく、それる場所を見つけて事なきを得ましたが、巻き込まれたら私はどのような犠牲を払わなければならなかったでしょうか。軽い怪我では済まされなかったでしょうし、相手に損害賠償を請求してもどこまで払ってくれるかわかりません。
鉄道の場合、いかに速いといえども速度は制限されています。私が通勤のために利用している東急田園都市線や東京メトロ半蔵門線などのようにCS-ATCが採用されていれば、メーターに表示される制限速度を超えるとブレーキがかかり、制限速度内まで減速します。東京メトロ副都心線や都営三田線のようにATOが採用されていれば、完全自動制御であるため、機械が故障していなければ速度オーバーは起こりません。自動車にも同じようなシステムが採用されればよい訳でしょうが、救急車などのことを考えるとATSのようなシステムが現実的でしょうか。
あおり運転とは話が違いますが、自動車の安全性が鉄道などよりも遅れていると思えるもう一つのものは、オートマティック車です。日本ほどオートマティック車ばかりが走っている国が他にあるのかどうか知りませんが、異常なほど多いと思えます。
最近、高齢者などによる運転で何処かの店に突っ込んだ、などの事故が多いのですが、その時によく出るのが「アクセルとブレーキを間違えた」というものです。私が今所有している車もオートマティック車であるから書きますが、マニュアルミッション車ではアクセルとブレーキを間違えるということは起こらない、とまでは言いませんが起こりにくいのです。オートマティックの場合、加速、減速、停止を全て右足で行わなければなりません。悪いことに、アクセルペダルとブレーキペダルは隣り合っていますから、かかとを床に置いたまま支点としてペダルを操作するなどの方法を採らないと踏み間違えます。マニュアルミッション車の場合は両足で操作しますので、踏み間違いが起こりにくいということは体感的にわかります。
もう一つ、ギアの操作についてもマニュアルミッション車のほうが優れています。オートマティック車の場合、車種によって少々異なりますが、一本のギアシフトを手前に引いたり奥に押したりして操作するだけですので、前進とニュートラルと後進を間違えることがあります(勿論、その結果としてえらいことになる可能性は高いのです)。マニュアルミッション車であれば、こういうことはまずありません。ギアの位置が異なりますし、操作するには左足でクラッチペダルを踏み込まなければならないからです。車種によっては、ギアシフトを押し込んでからクラッチペダルを操作しないと後進することができないものもあります。フォルクスワーゲンのゴルフGTI(現行のマニュアルミッション車)がそうですが、日本ではバスなどがこの操作方法を採用しているとのことでした。
マニュアルミッション車であれば起こりにくい事故でも、オートマティック車が多いために生じやすくなった、と言えるものが少なくない、ということであれば、マニュアルミッション車を増やすほうがよいのですが、そうはならないのが日本です。