ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

JR北海道の維持困難路線はどうなる?

2017年11月17日 23時57分45秒 | 社会・経済

 11月14日付の朝日新聞朝刊8面13版に「私鉄大手8社過去最高益に 9月中間決算」という記事が掲載されており、そこに掲載されている表(関東9社のみ)によれば、売上高の額と純利益の額では東急が最高であり(売上高が5653億円、純利益が369億円。以下もこの順)、次いで東京メトロ(2124億円、366億円。いずれも過去最高)、東武(2828億円、237億円。純利益が過去最高)などと続いています。

 そうかと思うと、同日の9時9分付で朝日新聞社のサイトに掲載された「路線存続堅持、バス検討も 札沼線」という記事(http://www.asahi.com/articles/CMTW1711140100002.html)では、札沼線の北海道医療大学〜新十津川について、13日に新十津川町役場で意見交換会が開かれたと報じられていました。この区間は輸送密度が北海道で最も少ない66人、営業赤字が3億6700億円で、JR北海道は廃線、バス転換を提案しています。意見交換会に出席したのは、この区間の沿線自治体である当別町、月形町、浦臼町および新十津川町の4町長らで、基本的には存続を求めるものの、今後はこの区間のうちのどこまでなら存続可能であるか、また、鉄道路線の廃止の後ということで新たな交通体系の確保も考えていくという方針のようです。

 札沼線については、このブログの「日本一早い終列車の区間は維持されるか」という記事を載せておりますが、そこでも記したように、2016年3月のダイヤ改正以降、石狩当別~浦臼のワンマン運転気動車の運行は1日6往復(石狩当別~石狩月形を運行する列車を除く)、浦臼~新十津川の運行は1日1往復です。鉄道として残すには厳しいとも言えますが、気動車は(回送を除いて)札幌〜石狩当別の区間に直通しないため、利便性がいっそう低くなっているとも言えます(もっとも、過去にそれなりの需要があれば今も直通運転をしていることでしょう)。正直なところ、浦臼〜新十津川の運行継続は非常に厳しいというところであり、廃止の可能性は高いでしょう。鉄道として残せるならば、最も可能性が高いのは石狩当別〜石狩月形ではないでしょうか。ちなみに、石狩月形〜新十津川は一閉塞区間であるため、列車は一編成しか入れません。

 1日置いて11月16日には、10時51分付で毎日新聞社が「JR北海道 自治体と深まる溝 路線維持困難公表1年」として報じています(https://mainichi.jp/articles/20171116/k00/00e/040/250000c)。11月8日にはJR北海道の赤字額が最大の425億円となり、しかも全路線(新幹線も含みます)で赤字である旨の中間決算が発表された旨が報じられましたが、こうなると上下分離方式などの採用により維持しうる路線はさらに少なくなるのではないかという懸念も生じます。札沼線の北海道医療大学〜新十津川、留萌本線の全線(深川〜留萌)、根室本線の富良野〜新得、および石勝線の新夕張〜夕張については廃止の上でバス転換などという方針が立てられていますが(上記毎日新聞記事の図表に拠ります)、これだけで済むのかということです。

 たとえば、日高本線は上下分離方式などの採用による維持路線とされていますが、2015年1月の高波などで甚大な被害を受けた鵡川〜様似の区間については事実上復旧が断念されているような状況であり、苫小牧〜鵡川が残る程度かもしれません。

 また、宗谷本線の名寄〜稚内も上下分離方式などの採用による維持路線・区間とされていますが、名寄駅の時刻表を見ると、下り列車(稚内方面)では特急が3本、普通列車が4本でそのうちの2本は音威子府止まりとなっています。そこで音威子府駅の時刻表を見ると、下り列車(稚内方面)はやはり特急が3本、普通列車が3本(早朝の1本が音威子府始発)、上り列車(名寄、旭川方面)は特急が3本、普通列車が5本(そのうち3本が名寄止まり。また、早朝と夕方の1本ずつが音威子府始発)となっています。さらに見ていくと、音威子府〜幌延では普通列車が3往復しかなく、幌延〜稚内では普通列車が3.5往復(下り3本、上り4本)しかありません。利用客が皆無か僅少の駅を廃止した上で維持するしかないというところでしょうか。こうなると、特急通過駅のほとんどは廃止されるしかないということになりかねませんが。

 上下分離方式を採るとしても、沿線自治体の市町村に鉄道施設などを所有させるのは現実的でないでしょう。人口が少なく、財政規模も小さく、財政状況もよくないとすれば、市町村が所有することは困難です。一部事務組合方式なども考えられなくはないのですが、それ程の意味があるとも思えません。また、市町村が出資して株式会社としての施設保有会社を設立する方法も考えられるのですが、或る程度の需要が見込める路線であればともあれ、そうでない路線には適切と言えないのではないでしょうか。

 そうなると、青い森鉄道のように、鉄道施設などは北海道または国が所有し、運航業務をJR北海道が担当するというのが最も現実的であるということになります。問題は北海道の態度です。私が北海道に住んでいないからかもしれませんが、今ひとつ、北海道の姿勢がよく見えません。

 北海道は、鉄道にとってかなり厳しい所であると言えます。寒冷地帯、豪雪地帯であるためです(広大なので地域による差はあると思われますが)。車両一つを取ってみても、本州、四国、九州の車両とはかなり異なり、しっかりとした耐寒耐雪設備が求められます。国鉄時代、本州および九州で大活躍した485系の1500番台が北海道に投入されたものの、耐雪設備が十分でなかったことでトラブルが頻発したという話もあるくらいです。また、保線作業についても、本州などより費用がかさむでしょう。北海道には泥炭地が多かったので道路の整備が遅れたという話もありますが、鉄道建設にも影響があったのではないでしょうか。

 国鉄分割民営化から30年が経過し、北海道と四国では鉄道網の維持そのものが大きな問題となりつつあります。しかし、それは、程度の差、地域の差があったとしても、本州と九州についても言いうることでしょう。JR北海道の問題は、北海道だけの問題ではない訳です。

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