ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

ローカル線のバス転換は進むか

2022年02月16日 11時40分00秒 | 社会・経済

 今回は、2022年2月15日付の朝日新聞朝刊8面13版Sに掲載された「ローカル線、バス転換も議論 国交省が検討会」という記事に関わる話を取り上げます。どこか、1980年代の国鉄の特定地方交通線のような話になってきています。

 私も鉄道ファンですが、この何年か「鉄道は時代遅れの交通手段なのかもしれない」と思うことが何度となくあります。人口減少が鉄道路線の経営基盤を掘り崩していることは明らかで、人口減少だから鉄道など公共交通機関が必要であるという最近の一部の議論は根本的に誤っているのではないかとも考えられるのです。また、沿線自治体が存続を望むという話を聞いても、それが真剣に考えられているのかということについては深い疑念を感じています。

 上記記事によると、国土交通省は2月14日に「赤字が続く地方の鉄道路線の見直し方を検討する会議」を設置しました。これにより、赤字に苦しむローカル線をバスなどの交通機関に転換することを促す方策を今年の夏までにまとめ、2023年度予算の概算要求には転換支援の関連予算を盛り込むようです。

 様々な理由なり原因なりはあるのですが、鉄道事業とバス事業とを比較した場合、バス事業の運行コストは鉄道事業の6分の1から12分の1程度であるとのことです。もっとも、そうであっても赤字ローカル線の存廃が議論されるような地域ではバス路線の存廃も問われることが少なくないですし、特定地方交通線から転換されたバス路線も廃止されることが多いので、このような点を忘れてはなりません。

 その上で、国土交通省は、鉄道からバスへの転換を促すための基準づくりなどを議論するとのことです。費用の補助、税制優遇の仕組みも検討されるようです。また、中小の鉄道事業者が利用できる設備更新時の補助制度をJR各社が使えるようにすることも検討の対象にするようです。

 日本において、鉄道の利用者は長期的に減少しています。ピークは1991年度であったようですが、それより何年も前から沿線の人口減少、モータリゼイションの広がりにより、鉄道利用者の減少傾向はうかがわれていました。1991年度からの30年間で2割程度が減少していたとのことで、そこにCOVID-19が追い討ちをかけたということです。また、上記記事には「国鉄時代には、1キロあたりの一日の平均乗車人数が4千人を割り込むとバス路線に転換する目安とされたが、今では全路線の57%に上り、国鉄が民営化した87年度(36%)の1.5倍に増えている」と書かれています。1987年度は好景気の時期でしたが、2021年度および2022年度はどう考えても1980年代後半のバブル経済期とは異なりますから、1980年代より強力な転換政策を立てなければ、赤字ローカル線による負のスパイラルが沿線自治体を襲うでしょう。

 今後、国土交通省がどの程度まで具体的な方針を打ち立てるか、注意を向けておく必要があります。


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