このブログで何度か「2024年問題」を取り上げました。或る意味ではむしろ「2023年問題」と言ってもよい状況でしたが、何処の地方でも生じうる話ですし、日本全国で対処すべき問題となっています。
神奈川県でも同様です。たまたま、神奈川新聞社のサイトに、2024年1月9日18時50分付で「葉山町、重要課題は『路線バス減便』 町長が新年度から具体策へ」(https://www.kanaloco.jp/news/government/article-1047964.html)という記事が掲載されているのを見つけました。ただ、有料記事であり、会員登録をしていないので、途中までしか読めません。わかる範囲で参照しました。
三浦半島の北部、逗子市と横須賀市に隣接する葉山町には、鉄道路線がありません。京浜急行逗子線の終点は逗子・葉山駅ですが、JR横須賀線の逗子駅の近くにあり、葉山町から少し離れています。そのため、葉山町の公共交通機関といえばまず路線バスということになります。
町内を走るのは京浜急行バスのみです。その京浜急行バスの路線のうち、海岸回りのバス(記事に具体的なことは書かれていないようです)は2023年秋に減便されています。夜間が中心であるとのことですが、他の時間帯も減便されているのではないかと思われます。さらに、京浜急行バスは、山回りのバス(これについても記事に具体的なことは書かれていないようです)も2024年、つまり今年の春に減便する方向で検討しているとのことです。
京浜急行バスが葉山町に報告を行ったようで、葉山町長が年頭記者会見で「路線バスの減便対策を差し迫った重要課題に挙げた」上で「タクシー会社やスーパーに協力を求めながら、2024年度から具体的な方策を取る考えを示した」とのことです。
減便の理由としてあげられているのが、運転士不足とCOVID-19です。たしかに、COVID-19によって乗客が減少したでしょう。しかし、それだけではないものと思われます。葉山町のサイトには地域公共交通会議の議事録が掲載されており、さらに2023年8月29日に開催された令和5年度第1回葉山町地域公共交通会議全体資料(葉山町政策財政部政策課)も掲載されています。その全体資料には、次のように書かれています。
「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討
②計画の目標(課題整理)
1. 地域住民の交通
●鉄道駅までの交通手段
1位 バス(48.3%) 2位 自家用車(28.1%) 3位 徒歩(7.4%)
●買い物に行く際の交通手段
1位 自家用車(49.6%) 2位 徒歩(24.5%) 3位 バス(13.3%)
●通院する際の交通手段
1位 自家用車(44.1%) 2位 バス(21.1%) 3位 徒歩(16.9%)
⇒鉄道駅までの交通手段とそれ以外では、割合が逆転している。
バスの経路やダイヤが鉄道駅を中心に作られており、町内への移動は課題がある可能性がある。」
「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討
②計画の目標(課題整理)
2. 観光客の交通
●鉄道がなく、自家用車かバス、タクシーによる移動に限定。
⇒渋滞の影響で予定通りに行動できない場合もある。
●オンシーズンはバス、タクシーに乗れない場合がある。
⇒他の交通手段は選択肢が少ない。
●観光の中心となる目的地はなく、街歩きのような観光が主。
⇒小回りが利く交通手段のニーズは高いと考えられる。
⇒使いやすい、使ってくれる公共交通の確保が必要。」
「2.葉山町地域公共交通計画の内容検討
②計画の目標(課題整理)
3.高齢者、学生等の交通
●町内に中学校は2校、バス通学を要する生徒もいる。
⇒通学費の負担発生、保護者の送迎による渋滞が頻発。
●高校通学の場合は町外に出る必要がある。
⇒通学費のさらなる負担増、送迎による渋滞の増加。
●自宅~バス停間に坂道がある人の割合:48.5%
●自動車運転免許証の不所持率
60代:10.6% 70代:38.7% 80代以上:80.8%
⇒外出機会の減少による身体機能・認知機能低下のおそれ
⇒自家用車を使えない人への支援策を検討する必要がある。」
或る程度は考えたとおりでした。この全体資料には自家用車普及率が示されていませんが、鉄道路線がないこと、東京はもとより横浜市の中心部からも離れていることから、自家用車普及率は高いものと考えられます(鉄道駅が三浦海岸駅と三崎口駅しかなく、いずれも中心部から離れている三浦市も同様ではないでしょうか)。これでは道路の渋滞も避けられないでしょうし、その一方で高齢化率が上昇しているのではないかと思われます。町内に高校がないのは致命的である、とまでは言えませんが、進学率を念頭に置けば子育てなどには向かないと判断されても仕方のないところです。
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