ひろば 川崎高津公法研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

金剛自動車のバス路線を近鉄バスと南海バスが引き継ぐか

2023年09月13日 15時40分00秒 | 社会・経済

 今日、第二次岸田第二次改造内閣が発足しました。政策の基本線はこれまでと変わらないでしょうが、各論でならば路線の修正もありうるところでしょう。状況に上手く対応できるように政権を運営していただきたいものです。

 さて、このブログで金剛自動車が路線バス事業から撤退することを取り上げましたが、その続報がありました。読売新聞社が、今日(2023年9月13日)の10時45分付で「12月で全路線廃止の金剛バス…沿線の4市町村、近鉄・南海バスに運行引き継ぎを要請」として報じています(https://www.yomiuri.co.jp/local/kansai/news/20230913-OYO1T50007/)。

 記事によると、富田林市、河南町、太子町および千早赤阪村は、12月20日をもってバス事業の廃止を表明している金剛自動車のバス路線について、近鉄バスと南海バスに運行を引き継ぐように要請したとのことです。4市町村が具体的なバス会社をあげた訳ではなく、近鉄バスおよび南海バスが読売新聞の取材に応じて明らかにしたとのことです。

 今後、おそらく「地方公共交通の活性化及び再生に関する法律」に基づく法定協議会が開かれ、国、大阪府も参加して、検討が行われることでしょう。近鉄バスと南海バスが引き受けるか、受けるとすれば妥当なところですが、両社の事情もありますから、どうなるかはわかりません。また、引き受ける場合には運行形態、路線の割り振りなどが協議されることとなります。

 記事を読んだ瞬間には、エリアからすれば近鉄バスおよび南海バスが妥当なところであると思いましたし、前に記事を書いた時にもそのように考えたのですが、両社がどのような路線を運営しているのかが気になったので、サイトを検索して路線図を見ることとしました。

 まず、近鉄バスです。金剛自動車がターミナルとしている富田林駅および喜志駅の発着となる路線はあるのですが、近鉄バスの場合は富田林駅北口または喜志駅西口から北側または西側、近鉄南大阪線や南海高野線のほうに向かう路線となっています。これに対し、金剛自動車の場合は富田林駅南口または喜志駅東口から南側または東側に向かう路線となっています。また、近鉄バスには、上ノ太子駅の発着となるバス路線がありません。上ノ太子駅が近鉄南大阪線の駅であるとはいえ、近鉄バスのエリアではないということです。敢えて記すなら、金剛自動車は上ノ太子駅から喜志駅までを結ぶ路線を運行していますので、これが近鉄バスとの接点ということになるでしょうか。

 次に、南海バスです。富田林駅、喜志駅、上ノ太子駅のいずれも南海バスのエリアではありません。千早赤阪村が運行していたロープウェイの付近で南海バス河内長野営業所の所管路線と金剛自動車の所管路線が重なる所があり〔より具体的には千早大橋バス停から金剛山ロープウェイ前(南海バス)または千早ロープウェイ前(金剛自動車)〕、千早赤阪村の一部は南海バスのエリアであると言えます。この他、富田林市も南海バスのエリアですが、太子町および河南町は南海バスのエリアではありません。

 近鉄バスおよび南海バスの乗務員事情はわかりませんが、金剛自動車のバス路線を引き受けるとしても、運行本数が減らされるかもしれません。

 一方、上記読売新聞社記事には、金剛自動車の状況が書かれています。2009年度から赤字が続いており、COVID-19の影響もあって2020年度からの3年間で計2億円ほどの赤字を計上したとのことです。また、乗客数は、2013年度には約172万人でしたが2021年度には約106万人となっています。

 9月11日にはわからなかったのですが、金剛自動車は、今年の2月に大阪府、富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村に対して補助金の交付を要望したとのことです。勿論、経営状況の説明もなされています。しかし、詳細は書かれていないものの、何の展開もないまま4月になり、同社は近畿運輸局に対して相談をしたそうです。内容は11月での全廃です。記事には「廃業」と書かれていますので、金剛自動車はバス事業およびタクシー事業をやめ、会社の解散を検討したのでしょう。実際に、6月末日をもってタクシー事業から撤退しており、現在は路線バス事業のみを行っています。

 5月に入ってから、金剛自動車は富田林市、太子町、河南町および千早赤阪村と話し合いをしたようです。この段階では路線バス事業の継続が念頭に置かれており、6月には補助金の交付という話も出たようです。しかし、金剛自動車は「運転手確保や車両更新などの設備投資も考慮し、手遅れだと判断」して「近畿運輸局に対し、改めて12月21日以降はバス事業を廃止する方針を伝えた」とのことです。

 結局、法定協議会のようなものはこれまで行われなかったということでしょう。法的にどうなのかとは思うのですが、会社としては年内の事業廃止、そして解散を考えているということでしょう。金剛自動車のバス路線網が完全に維持されるのか、廃止路線も出てくる可能性があるのか、現段階では何とも言えませんが、利用者の立場であれば維持されることが望ましいのはいうまでもありません。

 

 なお、このブログでは、路線バス事業の廃止につき、「井笠鉄道が事業を廃止、そして会社清算へ」、「井笠鉄道事業廃止の続報」および「路線バス会社が経営破綻」として記事を掲載しております。併せてお読みいただければ幸いです。


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