ひろば 研究室別室

川崎から、徒然なるままに。 行政法、租税法、財政法、政治、経済、鉄道などを論じ、ジャズ、クラシック、街歩きを愛する。

そもそも質疑応答になっていない 問題外の外になってしまっている

2021年01月16日 01時00分00秒 | 国際・政治

 緊急事態宣言の延長の可能性について菅義偉内閣総理大臣が「仮定の質問には答えられない」と発言したことに疑問の声が出されていました。それは当然のことです。「何が何でも1か月で解除する」という意向を示すのはよいとして、事態の打開が見られないことを想定していることを示すことが必要でしょう。

 もっとわからなかったのが、1月13日の記者会見です。

 今回は「そもそも」という言葉が多くなることをお許しいただきたいのですが、ここ何年かの記者会見については「そもそも記者会見になっていない」という指摘が多くなされています。最初から質問者および質問数が限定され、追加質問は許されないというのでは、記者会見をやる意味がないでしょう。

 13日、政府対策本部で緊急事態宣言の対象地域の拡大について、福岡県と静岡県が言い間違えられた(取り違えられた?)とも報じられています。その場で訂正するならともあれ、会議の後で訂正されるというのは問題でしょう。同じ「岡」が使われているといっても福岡県と静岡県とは位置が離れすぎていますし、人口も社会的状況も異なります。地理の苦手な人が福岡県と福島県を取り違えたり、山形県と山口県とを混同したりするようなレヴェルですが、他愛もない会話ではなく、法律に基づく緊急事態宣言という措置なのですから、

 さらに、私が「コミュニケーションも何も取れないのではないか?」と疑ったのは、記者会見でした。医療体制の強化のための法整備について記者が質問したのに対し、内閣総理大臣は国民皆保険制度の再検証・見直しの必要性を口にしました。国民皆保険制度を壊すつもりかという疑念が飛び交うのは当然として、それ以前の話として、そもそも質問に対する回答(解答)ができていないのです。医療体制の強化ということは、医師、看護師、医療機器、病院、救急体制などの問題ということであり、保険制度のあり方とは直接の関係がありません。全く別の事柄です。仮に応答の内容が保健所の体制に関するものであれば、まだ救われました。

 2021年1月13日23時9分付で朝日新聞社のサイトに掲載された「迷走の菅首相 言い間違え、真意不明…尾身氏らフォロー」という記事(https://digital.asahi.com/articles/ASP1F7HCJP1FUTFK01Y.html)でも「発言の真意は不明だが、国民皆保険を見直す考えを示したとも受け取れる発言だった」と控え目に書かれていましたが、そもそも真意不明以前のことです。これは、私が通っていた神奈川県立多摩高等学校で使われていた「問題外の外」という言葉が当てはまります。問題外のさらに外ということです。1月15日付の朝日新聞朝刊4面14版に掲載された「国民皆保険『制度は守る』 加藤氏、会見で説明 首相の『改正』発言で」という記事によれば、見出しの通り、加藤勝信内閣官房長官が内閣総理大臣の発言を打ち消したということです。それはそうでしょう。国民皆保険制度が守られなければ、医療サーヴィスに関する極端なまでの格差が生じますし、死亡率が高まるなどして平均寿命も短くなり、ついには国力も失われるでしょう。それだけでなく、COVID-19で危機にさらされているのは医療体制なのですから。


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