新幹線が伸びると
当然より遠くまで短時間で到着できるようになる。
でもその車窓風景はめまぐるしく変わっていって
その土地土地の風土を感じることが難しくなる。
ある年、東北地方を鈍行列車だけで旅をした。
自宅から埼京線の下り電車に乗って
東北線で北を目指した。
帰りは仙台から常磐線経由で帰ってきた。
早朝、赤羽から東北線に乗って
黒磯、郡山、福島、仙台、一ノ関、盛岡、八戸と乗り継いで
青森に着くころには日はどっぷりと暮れていた。
青空とその下に広がる田畑、青く聳え立つ山々
松島の海なんかを、その車窓に関心を持つ事もなくなっている
地元民たちの中でただひとりぼんやりと見つめている。
日が暮れてしまえば車窓の風景など見えるわけもないが
所々に点く灯りが都会に住むものとしては
新鮮に感じたりもする。
その日の夜行列車で函館へ出た。
漆黒の闇を走る夜行列車は
列車同士のすれ違いなどで、時折停車しながら
北へ北へと進んだ。
車窓からは平舘の海とそこに浮かぶ船の漁火
線路との間に走る道路の灯りが左から右へと流れてゆくばかり。
そして再び津軽半島の内陸へ入ると
人家の灯りも無くなった。
いくつかのトンネルをくぐると
猛スピードで青函トンネルへ入った。
といっても、夜の帳からトンネルに入っただけでは
それほど車窓に変化があるわけではなく
ただ規則的に誘導灯の灯りが流れてゆくだけである。
トンネルの最深部には青色と緑色の蛍光灯が光るだけ。
列車は止まることなく、今まで本州から下ってきた分
北海道に向けて上昇を始める。
ウトウトしているうちに函館についた。
着いたからといって、何もすることは無い。
しようとしても、何も出来ない深夜である。
ここでの目的といえば、内地へ戻る札幌発青森行きの
夜行列車を待つことだけなのである。
<つづく>
当然より遠くまで短時間で到着できるようになる。
でもその車窓風景はめまぐるしく変わっていって
その土地土地の風土を感じることが難しくなる。
ある年、東北地方を鈍行列車だけで旅をした。
自宅から埼京線の下り電車に乗って
東北線で北を目指した。
帰りは仙台から常磐線経由で帰ってきた。
早朝、赤羽から東北線に乗って
黒磯、郡山、福島、仙台、一ノ関、盛岡、八戸と乗り継いで
青森に着くころには日はどっぷりと暮れていた。
青空とその下に広がる田畑、青く聳え立つ山々
松島の海なんかを、その車窓に関心を持つ事もなくなっている
地元民たちの中でただひとりぼんやりと見つめている。
日が暮れてしまえば車窓の風景など見えるわけもないが
所々に点く灯りが都会に住むものとしては
新鮮に感じたりもする。
その日の夜行列車で函館へ出た。
漆黒の闇を走る夜行列車は
列車同士のすれ違いなどで、時折停車しながら
北へ北へと進んだ。
車窓からは平舘の海とそこに浮かぶ船の漁火
線路との間に走る道路の灯りが左から右へと流れてゆくばかり。
そして再び津軽半島の内陸へ入ると
人家の灯りも無くなった。
いくつかのトンネルをくぐると
猛スピードで青函トンネルへ入った。
といっても、夜の帳からトンネルに入っただけでは
それほど車窓に変化があるわけではなく
ただ規則的に誘導灯の灯りが流れてゆくだけである。
トンネルの最深部には青色と緑色の蛍光灯が光るだけ。
列車は止まることなく、今まで本州から下ってきた分
北海道に向けて上昇を始める。
ウトウトしているうちに函館についた。
着いたからといって、何もすることは無い。
しようとしても、何も出来ない深夜である。
ここでの目的といえば、内地へ戻る札幌発青森行きの
夜行列車を待つことだけなのである。
<つづく>