線路の入り組んだ構内を、クネクネと車体をくねらせながら
青森に到着した夜行列車、急行「はまなす」は
早朝の気怠さや到着の安心感、ここから始まる旅への希望を降ろして
車庫へと回送される。
乗客たちは思い思いの列車に乗り換える。
日本海側を南下する人、太平洋側を南下する人。
この駅は、分水嶺である。
私は、どちらでもよかった。
ただ、日本海側であれば特急に乗らないと
どこかで1泊するか新潟あたりで新幹線に乗らなければ
今日のうちに東京へ帰れない。
昨日までの旅と違って
今日は「今日中に東京へ帰る」という
重要な用件があって列車に乗るのだ。
ちょっと前までは赤い客車を数両連ねて走っていた列車も
この頃は銀色の電車に変わって
座席も山手線なんかと同じようにレール方向に設置された
いわゆる「ロングシート車」が走っている。
青森から乗った電車はこれであった。
朝日の眩い浅虫温泉を眺めながら一路東京を目指す。
盛岡、一ノ関、小牛田と
昔は機関庫もあって、鉄道の一大中継地点であった駅の長いホームも
2両編成の電車では手持ち無沙汰に映る。
「夏草や つわものどもが 夢の跡」と芭蕉が詠んだ如く
蒸気機関車たちが行き交った往時を偲ぶのが虚しくなるくらいに
夏草が線路際に伸びきっている。
昨日見た松島の海。
東北本線から、仙石線の線路越しに眺める景色は
ちょっとした奇景であった。
仙台を過ぎて岩沼駅からは常磐線を辿る。
震災以降、常磐線は津波被害や原発事故で寸断されてしまい
現在は東京まで常磐線だけで南下することは不可能となってしまった。
この先、どれくらいで復旧するかもわからない。
同じルートで再敷設されるかどうかもわからない。
岩沼で東北線とわかれて
しばらくすると坂元付近で海の近くに出る。
そしてすぐに発電所を避けるように内陸に入り
ため池を間をすり抜けるように走る。
日は傾いてくるが、日本列島の東岸を走っているので
当然日没は陸地側であり、そこには阿武隈山地などがあるので
季節感よりも日没が早く感じる。
双葉駅、大野駅は福島第一原発の最寄り駅であって
だからおそらくこの先何年したら
人が戻れるようになるのかわからない。
大野駅の次には夜ノ森駅という美しい名前の駅があって
駅名の美しさだけでなく、ホーム両側に数千株ものつつじが植えられ
5月になれば特急電車すらも減速をして通過するほどに美しく咲き乱れる
そんな駅だった。
近くには夜の森公園という、桜の一大名所もあった。
線路は東に西にカーブしながら南下する。
だから、太平洋側を南下するといっても
実際に海が見えるのは、ほんの一瞬であったり
間に国道6号線があったりと
「海沿いを走る」路線ではないのだ。
日立を過ぎれば、完全に内陸に入ってしまう。
水戸の1つ仙台寄り、勝田から上野行きに乗る。
あとは、寝ていたって都内まで運んでくれる。
時計は既に夜の時間。
日暮里までは車窓の風景ではなくて
夢をみて過ごそう。
そう、目的は車窓ではなく
池袋へ帰ることだから。
<おわり>
青森に到着した夜行列車、急行「はまなす」は
早朝の気怠さや到着の安心感、ここから始まる旅への希望を降ろして
車庫へと回送される。
乗客たちは思い思いの列車に乗り換える。
日本海側を南下する人、太平洋側を南下する人。
この駅は、分水嶺である。
私は、どちらでもよかった。
ただ、日本海側であれば特急に乗らないと
どこかで1泊するか新潟あたりで新幹線に乗らなければ
今日のうちに東京へ帰れない。
昨日までの旅と違って
今日は「今日中に東京へ帰る」という
重要な用件があって列車に乗るのだ。
ちょっと前までは赤い客車を数両連ねて走っていた列車も
この頃は銀色の電車に変わって
座席も山手線なんかと同じようにレール方向に設置された
いわゆる「ロングシート車」が走っている。
青森から乗った電車はこれであった。
朝日の眩い浅虫温泉を眺めながら一路東京を目指す。
盛岡、一ノ関、小牛田と
昔は機関庫もあって、鉄道の一大中継地点であった駅の長いホームも
2両編成の電車では手持ち無沙汰に映る。
「夏草や つわものどもが 夢の跡」と芭蕉が詠んだ如く
蒸気機関車たちが行き交った往時を偲ぶのが虚しくなるくらいに
夏草が線路際に伸びきっている。
昨日見た松島の海。
東北本線から、仙石線の線路越しに眺める景色は
ちょっとした奇景であった。
仙台を過ぎて岩沼駅からは常磐線を辿る。
震災以降、常磐線は津波被害や原発事故で寸断されてしまい
現在は東京まで常磐線だけで南下することは不可能となってしまった。
この先、どれくらいで復旧するかもわからない。
同じルートで再敷設されるかどうかもわからない。
岩沼で東北線とわかれて
しばらくすると坂元付近で海の近くに出る。
そしてすぐに発電所を避けるように内陸に入り
ため池を間をすり抜けるように走る。
日は傾いてくるが、日本列島の東岸を走っているので
当然日没は陸地側であり、そこには阿武隈山地などがあるので
季節感よりも日没が早く感じる。
双葉駅、大野駅は福島第一原発の最寄り駅であって
だからおそらくこの先何年したら
人が戻れるようになるのかわからない。
大野駅の次には夜ノ森駅という美しい名前の駅があって
駅名の美しさだけでなく、ホーム両側に数千株ものつつじが植えられ
5月になれば特急電車すらも減速をして通過するほどに美しく咲き乱れる
そんな駅だった。
近くには夜の森公園という、桜の一大名所もあった。
線路は東に西にカーブしながら南下する。
だから、太平洋側を南下するといっても
実際に海が見えるのは、ほんの一瞬であったり
間に国道6号線があったりと
「海沿いを走る」路線ではないのだ。
日立を過ぎれば、完全に内陸に入ってしまう。
水戸の1つ仙台寄り、勝田から上野行きに乗る。
あとは、寝ていたって都内まで運んでくれる。
時計は既に夜の時間。
日暮里までは車窓の風景ではなくて
夢をみて過ごそう。
そう、目的は車窓ではなく
池袋へ帰ることだから。
<おわり>