8月11日、ASEAN+3マクロ経済調査事務局(ASEAN+3 Macroeconomic Research Office:AMRO)は、2022年7月20日~8月3日にカンボジアで実施した年次協議の結果を発表しました。AMROは、この地域の経済・金融の監視・分析を行うとともに、ASEAN10か国と日本、中国、韓国による外貨融通の取り決め「チェンマイ・イニシアティブ(CMIM)」の実施を支援するために設立された国際機関です。
カンボジアのGDP成長率については、2021年3.0%から2022年5.0%へと回復すると見ています。2022年上半期については、高いワクチン接種率を背景とした国内経済の回復と、輸出先である欧米の経済回復に伴う輸出の伸びに支えられたとしています。他方、2022年下半期については、ウクライナ危機と欧米での金融緩和の縮小に伴う世界経済の停滞の影響を受けて輸出が伸び悩む可能性があるとしています。物価上昇率は、ウクライナ危機等の影響による国際資源価格・食料価格の高騰を受けて2022年上半期に6.6%まで上昇しましたが、年平均では5.9%と落ち着いてくると予測しています。対外収支では、2019年の建設資材の輸入急増、2020年からの観光収入減少・出稼ぎ労働者送金の減少、2021年からの国際原油価格の高騰等の影響によって、経常収支の赤字が拡大していました。しかし、これらの影響は一時的なものであり。2022年、2023年は赤字の縮小が見込まれます。また、この赤字は、外国直接投資や海外からの支援で埋め合わされて総合収支は黒字となっており、外貨準備も20億ドルと安定的なレベルにあるとしています。
リスクとしては、ウクライナ危機や金融緩和の縮小を受けて、主要な輸出先である欧米諸国の経済成長が鈍化することをあげています。また、カンボジアにとって重要な貿易相手であり、観光についても重要な中国がゼロコロナ政策を続けていることもリスクであるとしています。
政策提言としては、まず新型コロナ対策の順次縮小と、脆弱世帯に対象を絞った支援の継続が必要と指摘しています。新型コロナ対策で導入した貧困世帯向け現金支援を、社会保障プログラムに転換していくことを検討すべきとしています。中央銀行(NBC)の金融政策については、引き続き正常化の方向を継続すべきとしています。新型コロナで返済困難となった貸付の条件緩和終章に伴い増加が予想される不良債権の監理・監督が重要と指摘しています。また、インフレ対策・投資家の信頼維持の観点から、ドルと現地通貨リエルの為替レートの安定も必要であると指摘しました。また、ノンバンクによる不動産向け融資については、関係省庁が連携して監督を強化する必要があると提言しています。中長期的な成長のモメンタムを維持する多衛野構造改革の継続も求めました。具体的には、新投資法とRCEP等の自由貿易協定の活用、熟練労働力の強化、インフラの開発等の必要性を指摘しています。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、AMROの発表より)
AMROの新聞発表(英文です)
https://www.amro-asia.org/cambodia-resilient-growth-backed-by-strong-fiscal-stimulus-and-high-vaccination-rates/
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カンボジアのGDP成長率については、2021年3.0%から2022年5.0%へと回復すると見ています。2022年上半期については、高いワクチン接種率を背景とした国内経済の回復と、輸出先である欧米の経済回復に伴う輸出の伸びに支えられたとしています。他方、2022年下半期については、ウクライナ危機と欧米での金融緩和の縮小に伴う世界経済の停滞の影響を受けて輸出が伸び悩む可能性があるとしています。物価上昇率は、ウクライナ危機等の影響による国際資源価格・食料価格の高騰を受けて2022年上半期に6.6%まで上昇しましたが、年平均では5.9%と落ち着いてくると予測しています。対外収支では、2019年の建設資材の輸入急増、2020年からの観光収入減少・出稼ぎ労働者送金の減少、2021年からの国際原油価格の高騰等の影響によって、経常収支の赤字が拡大していました。しかし、これらの影響は一時的なものであり。2022年、2023年は赤字の縮小が見込まれます。また、この赤字は、外国直接投資や海外からの支援で埋め合わされて総合収支は黒字となっており、外貨準備も20億ドルと安定的なレベルにあるとしています。
リスクとしては、ウクライナ危機や金融緩和の縮小を受けて、主要な輸出先である欧米諸国の経済成長が鈍化することをあげています。また、カンボジアにとって重要な貿易相手であり、観光についても重要な中国がゼロコロナ政策を続けていることもリスクであるとしています。
政策提言としては、まず新型コロナ対策の順次縮小と、脆弱世帯に対象を絞った支援の継続が必要と指摘しています。新型コロナ対策で導入した貧困世帯向け現金支援を、社会保障プログラムに転換していくことを検討すべきとしています。中央銀行(NBC)の金融政策については、引き続き正常化の方向を継続すべきとしています。新型コロナで返済困難となった貸付の条件緩和終章に伴い増加が予想される不良債権の監理・監督が重要と指摘しています。また、インフレ対策・投資家の信頼維持の観点から、ドルと現地通貨リエルの為替レートの安定も必要であると指摘しました。また、ノンバンクによる不動産向け融資については、関係省庁が連携して監督を強化する必要があると提言しています。中長期的な成長のモメンタムを維持する多衛野構造改革の継続も求めました。具体的には、新投資法とRCEP等の自由貿易協定の活用、熟練労働力の強化、インフラの開発等の必要性を指摘しています。
AMROとCMIMは、アジア通貨危機の際の国際通貨基金(IMF)の対応が失敗続きであったために、日本が主導して設立したアジア版IMFです。2016年の設立協定発効以降、活動を本格化しており、アジアの視点に立った経済分析・監視を実施していくことが期待されます。
(写真は、AMROの発表より)
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