アジア経済見通し2021春 新型コロナによるマイナス成長から回復へ

　アジア開発銀行（ADB）は、4月28日に「アジア経済見通し2021年版」（Asian Development Outlook 2021: ADO 2021）」を発表しました。ADBでは、「アジアの開発途上国では全般的に成長の勢いが増しているが、新型コロナウイルス感染の再拡大が復興への脅威となっている。この地域の経済の方向性は国によって異なる。成長の軌道は、国内の感染拡大の程度、ワクチン接種のペース、世界経済回復の恩恵をどの程度受けられるかによって決まる」と指摘しています。日本等の先進国を除くアジア地域の2021年の成長率を7.3％（前回9月予測6.8％）に引き上げました。
　カンボジアについては、2020年のGDP成長率をマイナス3.1％（前回マイナス4.0％）とみています。2021年は、縫製品等の輸出が回復すると見て、4.0％(前回5.9％)にまで回復し、2022年は5.5％まで上昇すると予測しました。新型コロナで打撃を受けている縫製業が、輸出先国の経済回復を受けて成長軌道に戻ると見て、第二次産業の成長率は、2021年7.1％、2022年7.0％となると見ています。第1次産業の成長率は、中国向けの農産品輸出が堅調であること等から、2020年1.3％、2022年1.2％としています。第三次産業については、2021年中は移動の制限が続き観光業の苦境は長引くと見て、2021年3.3％、2022年6.2％と見ています。
　物価上昇率予測は、2021年3.1％（前回1.8％）、2022年3.0％で、若干上昇するものの安定的と見ています。対外収支については、経常収支の赤字(対GDP比)が2020年11.4％(前回22.3％)、2021年15.6％(前回17.8％)、2022年12.3％と、予想よりは悪化せず、2022年以降改善方向に向かうと見ています。
　政策課題としては、貧困・脆弱世帯の所得減少への対応があげられています。新型コロナ対策として2020年から政府は貧困・脆弱世帯向け現金支援等を行っていますが、全体として世帯収入は減少し、消費も減退しています。包括的な回復を確保するためにも、こうした支援を続けていくことが肝要と指摘しています。
　なお、これらの予測は、2月20日以降の市中感染の拡大やプノンペンのロックダウン等を必ずしも織り込んでいないため、成長率等については予測を下回るリスクがあるものと見られますのでご留意ください。
（写真は、ロックダウン中のプノンペン・ロシア大通り。4月24日撮影）

アジア開発銀行のサイト（和文）
https://www.adb.org/ja/news/developing-asia-grow-7-3-2021-even-covid-19-lingers


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