カンボジア経済

カンボジアの経済について、お堅い数字の話から、グルメ情報といったやわらかい話まで、ビジネス関係の方にお役に立つブログです

新投資法施行 18の投資優遇分野に優遇措置

2021年11月04日 | 経済
 10月15日、投資優遇分野や免税等の投資優遇策を定めた新投資法が公布され、同日施行されました。なお、詳細を定める政令は、今後公布される予定です。これまでの1994年投資法、2003年改正投資法を、新規投資誘致、既存投資企業のビジネス拡大を一層促進する観点から改正を実施したものです。改正に当っては、カンボジア日本人商工会をはじめとして、民間からの意見を取り入れたとしています。今回の新投資法では、今後のカンボジア経済の主軸として期待される分野・業種や、税制優遇の適用範囲および選択肢の拡大に関する規程がポイントとなります。また、適格投資プロジェクト関連手続の迅速化や投資家や投資資産の保護拡充などに関する規程も注目点となります。
 投資優遇分野としては、「革新的なハイテク産業」、「付加価値の高い製品を持つ、革新性及び高い競争力を有する新産業や製造業のベンチャー企業」、「デジタル産業」、「環境管理・保護のための投資及び生物多様性・循環型経済の開発」といった先進的産業が指定されています。また、これまでの外資の誘致の中心だった縫製業は、明確には含まれておらず、日系企業が得意とする「地域及び世界の生産チェーンに貢献する産業」、「電気・電子産業」、「スペアパーツ、組立て及び取付け産業」、「機械産業」等が含まれています。また、国内の中小企業振興を目指して、「農業、観光及び製造業に関する裾野産業」、「農業、農産業、農産加工業及び食品加工業」、「観光産業及びその他観光に関連する活動」等が指定されています。この他、インフラ、物流等も対象となっています。
 優遇措置についても、法人所得税の免除に加えて、オプションとして特別償却も選択できるようになりました。また、特定の活動(研究開発、人材育成、福利厚生拡大など)について課税標準から150%の控除も追加されました。
 カンボジア政府は、産業開発政策で、外資の誘致を目標として掲げ、既存の投資家の意見を取り入れた改正投資法の策定はその一環として進められてきました。予想より時間はかかったものの、多くの努力を結集して、新投資法が完成したことには大きな意義があるものと見られます。外資誘致の基盤としての役割を果たしていくことが期待されます。
(写真は、新投資法策定の中心人物であったカンボジア開発評議会のソクチェンダ・ソピア大臣)

日本貿易振興機構(JETRO)のサイト
https://www.jetro.go.jp/biznews/2021/10/6ce1380d94cf039c.html


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カンボジアと韓国 自由貿易協定に調印

2021年11月03日 | 経済
 10月26日、カンボジアと韓国は、自由貿易協定に調印しました。協定の調印はオンラインを通じて行われ、カンボジア側はパン・ソラサク商業大臣、韓国側は産業通商資源省の呂翰九(ヨ・ハング)通商交渉本部長が署名しました。両国が国内での批准手続きの完了を相互に通知してから、60日後に発効する規定となっています。協定内容については、2020年7月の交渉開始から半年後の今年2月には大枠合意されていました。
 今回の協定による関税撤廃率は、カンボジアが93.8%、韓国が95.6%となるとのことです。既に調印済の地域的な包括的経済連携(RCEP)では、カンボジアが86.0%、韓国が91.6%ですので、カンボジア側が大きく譲歩した形です。カンボジア側は、衣料品や履物、かばん、農産品、ゴム製品、電子部品などの韓国向け輸出拡大に期待を示しているとのことです。韓国側の譲許内容詳細は不明ですが、現行の工業品の関税率は3~8%程度であり、カンボジアからの輸出に大きな効果があるとは考えにくいのが実情です。交渉期間がこの種の協定としては極端に短かったことも、両国内で大きな摩擦を引き起こすような品目(日本でいえばコメや牛肉)が含まれていないことを示していると見られます。ただ、今年のカンボジア産の農産品(ゴム、マンゴー等)の韓国向け輸出は好調に推移しており、1~9月の輸出量は前年同期比約2倍となっています。
 二国間で多数の自由貿易協定が結ばれると、民間の輸出入者からは制度が分かりにくくなり、「スパゲッティボウル」とも呼ばれる多数の協定内容が絡み合った状況になりやすいため、日本はRCEPやCPTPPといった地域的多国間協定を推進してきました。また、物品貿易の関税削減に留まらず、サービス貿易、人の移動、知的財産権、紛争解決等を包括的に定めたRCEPが、アジア地域では主たる協定となると見られます。カンボジアが、中国や韓国と二国間協定を結んだ背景としては、EUがカンボジアの強権的対応に対する制裁として特恵関税制度であるEBAを一部停止した措置に対抗を示す意図があったものと見られます。しかし、宣伝効果はあるものの、実質的な輸出拡大効果は限定的とならざるを得ないものと見られ、今後の推移を見守る必要があるものと見られます。
(写真は、日本からの円借款で整備されたシアヌークビル港)



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カンボジア ついに国債発行へ 来年度予算に3億ドル相当計上

2021年11月02日 | 経済
 10月22日、カンボジアの内閣にあたる閣僚評議会は、2022年度予算法案を承認しました。予算法案は今後、国民議会(下院)及び上院で討議され、年末までに成立する見込みです。この中で、初めて国債を発行するとしており、3億ドル相当を発行する計画としています。政府では、国債によって調達した資金は、エネルギー、灌漑、インフラ等の公的投資事業35件に使用するとしています。
 カンボジアの国債発行については、日本政府の支援で2018年に野村総研が調査・提言を行っています。調査では、カンボジアで国債を発行した場合、期間5年もので、金利がドル建てで7%以上、リエル建て6.5%~7.75%程度と高い水準となる一方、ODA等で借り入れた場合の金利が低く(日本の円借款金利は0.01%)、償還期間も長い(円借款の場合、最長40年)ため、海外からの借入を代替する意味での国債発行は必要性が低いとしています。他方、カンボジア政府の資金フローの安定化、国家社会保障基金(保険・年金)等の機関投資家の安定的長期運用手段の提供といった意味では、リエル建ての国債発行は意味があるものとしています。また、高度にドル化した経済の中でリエルの使用を促進するため、カンボジアの中央銀行(NBC)が銀行貸付の10%以上をリエル建てとすることを求めており、リエル建ての国債については一定の需要があると見込んでいます。その後、国債の発行・流通を目指して、新政府証券法案が2020年9月に完成し、12月21日に上院で承認されていました。
 カンボジアでは、インフラ整備等のために海外から借り入れを行っていますが、今のところ金利が低く期間も長い譲許的借款(日本の円借款や国際機関からの借り入れ等)を中心に借り入れており、いわゆる「借金漬け」を免れています。国債を使った民間からの借り入れは、金利も高く、返済期間も短いものとなるため、政府の資金繰り安定化や金融機関のリエル使用促進といったことを目的とした限定的発行とすることが当面は必要となるものと見られます。また、日本のように野放図に国債発行を行うだけの信用力がカンボジアには欠けているため、債務の管理や国債によって調達した資金の使途制限等を徹底して行うことも重要な課題になるものと見られます。
(写真は、国債発行後に、その上場が想定されるカンボジア証券取引所)



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メルマガ「週刊カンボジア経済ニュース」今週号は本日発行です

2021年11月01日 | 一般
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新型コロナ カンボジアの状況 11月1日 規制緩和進む

2021年11月01日 | 経済
 カンボジアの新型コロナウイルスの感染状況は、ワクチン接種の進展に伴い市中感染は減少傾向にあるものと見られます。10月31日の保健省の発表によれば、死者は累計2788名(10月24日から54名増)です。累計陽性者数は11万8522名(同750名増)となっています。治癒数は11万4727名(同1750名増)です。先週の新規陽性者のうち、市中感染は644名、海外帰国・入国者の新規陽性は106名でした。
 10月8日、フン・セン首相は、新型コロナ感染状況が落ち着いている場合には、経済の全部門での活動再開を行う方針であると発表しました。また、10月22日には、学校、工場、市場等について、新型コロナ陽性者が発見されても、今後は閉鎖・ロックダウンは行わないと言明しました。この方針に沿って、規制が緩和されつつあります。これまで営業が禁制されていた博物館、映画館等については、10月30日からの再開が許可されました。ただし、カラオケ、ディスコ等については、営業禁止が11月11日まで更に2週間延長されています。
 観光については、サンドボックス方式での一部開放が決定されました。11月30日から、シアヌークビル、ロン島、ダラサコ―地区(コッコン州で中国が開発中)については、隔離期間無しで入国・観光が可能となります。更に、来年1月1日からは、シェムリアップも同方式で入国が再開される予定です。域外への移動は制限されるものの、アンコールワット等の主要な遺跡には、入場・観光が可能となる見込みです。
 カンボジア政府が開発した「ストップ・コロナ(Stop COVID)」QRコードシステムが、国連の国際電気通信連合等による「グローバルサウス・コロナ・デジタル・イノベーション・チャレンジ賞」を受賞しました。このシステムは、スマートフォンで店頭のQRコードを読み取ることで、接触状況、検疫・隔離管理、ワクチン接種状況等が簡単に登録・確認できるアプリです。カンボジア政府では、カンボジアが獲得した初の国際的な情報通信関連の受賞であるとしています。カンボジアは遅れた国と見られがちですが、既得権益といったしがらみが少ないことから、先進国に一気に追いつき追い越す「蛙飛び現象」が見られます。今回のQRコードシステムも、問題が続発した日本の接触確認アプリCOCOA等を利便性や簡便性で凌駕しているものと見られます。
 ワクチンについては、世界的に見ても早いペースで接種が進んでおり、「カンボジアのワクチンミラクル」と呼ばれ始めています。10月30日現在で、1370万6107人(うち12歳~17歳178万8581人、6歳~11歳191万9439人)への第1回接種を完了しています。これは、カンボジアの人口(約1600万人)の85.7%に相当します。成人(18歳以上約1000万人)への接種について見ると、既に目標の99.98%に第1回接種を、96.4%に2回目を完了しています。なお、中国製ワクチンの効果が不十分であることから、ブースター接種(3回目)を実施しています。10月30日現在183万1190人が3回目接種を完了しています。また、カンボジア政府では、これまでの12歳~17歳、6歳~11歳に加えて、11月1日から5歳児にも接種を行う方針としています。
 カンボジアでは、感染拡大に歯止めをかけるために4月にはプノンペン等のロックダウンに踏み切る等、厳しい規制を行ってきましたが、ようやく緩和の方向となっています。ただ、引き続き様々な規制があり、州毎に状況が異なっていますので、日本大使館のサイト等を十分にご確認ください。なお、カンボジアは、医療体制が脆弱という弱点があり、いわゆる医療崩壊の懸念がありますので、引き続きマスクやアルコール消毒といった対策の継続が必要と見られます。
(写真は、カンボジアのStop COVID QRシステム)

カンボジア日本人会のフェイスブック
https://web.facebook.com/Jacambodia/

在カンボジア日本国大使館のサイト
https://www.kh.emb-japan.go.jp/itpr_ja/b_000431.html


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