英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不合理な投票方式 ~五輪最終候補選考~

2013-06-06 18:09:27 | スポーツ
 5月29日、IOCの理事会は2020年夏季五輪で実施する残り1競技の最終候補として、レスリング、野球・ソフトボール、スカッシュの3競技を選んだ。

 その採決方法が不合理だった。
 ロゲ会長を除く14人の理事によって投票を実施。3競技を選ぶ各ラウンドで過半数を獲得する競技が出るまで、最下位もしくは得票のない競技を除外していく方式が取られた。
 この説明だとよく分からないので、この方式を実際の投票経過に当てはめて振り返ってみよう。

【第1ラウンド】
1回目  レスリング8票 武術3票 空手1票 スポーツクライミング(以後「SC」と表記)1票
     スカッシュ1票 野球・ソフト0票 ローラースポーツ0票 ウエークボード0票


  レスリングが過半数の8票を獲得し1抜け


【第2ラウンド】(レスリングを除く7競技が対象)
1回目  空手5票 武術4票 スカッシュ2票 野球・ソフト1票 SC1票
     ローラースポーツ0票 ウエークボード0票 無効票1票

  過半数を獲得した競技がないので最下位(得票0)のローラースポーツとウエークボードを除外

2回目  空手4票 武術4票 野球・ソフト3票 スカッシュ2票 SC1票
  過半数を獲得した競技がないので最下位のSCを除外

3回目  空手4票 武術4票 野球・ソフト3票 スカッシュ3票
  過半数を獲得した競技がなく、最下位が野球・ソフトとスカッシュが同票だったので、除外種目を決選投票

 3回目その2  野球・ソフト8票、スカッシュ6票、 スカッシュを除外

4回目  野球・ソフト6票 空手4票 武術4票
  過半数を獲得した競技がなく、最下位が空手と武術が同票だったので、除外種目を決選投票

 4回目その2  空手9票、武術5票、  武術を除外

5回目  野球・ソフト9票 空手5票
  野球・ソフトが過半数の9票を獲得し選出された

 
【第3ラウンド】(レスリング、野球・ソフトを除く6競技が対象)
1回目  空手5票 武術4票 スカッシュ3票 SC2票 
     ローラースポーツ0票 ウエークボード0票

  過半数を獲得した競技がないので最下位(得票0)のローラースポーツとウエークボードを除外

2回目  スカッシュ5票 武術4票 SC3票 空手2票
  過半数を獲得した競技がないので最下位の空手を除外

3回目  スカッシュ8票 武術4票 SC2票
  スカッシュが過半数の8票を獲得し選出された

 以前(『オリンピックが競技を歪める その2「IOC理事会の歪んだ構成と不思議な採決」』)で、中核競技から外す競技を決定する際の理事会のメンバー構成や採決方法に問題があることを力説したが、今回もその採決方法に不合理を感じた。(理事会のメンバー構成についても同じ疑問を感じましたが、それは「その2」をご覧ください)

 さて、何回も投票を重ね、一見、慎重で丁寧な採決と感じさせるが、相当な不合理を感じる。
 まず、3ラウンドも必要かと言うと、これはこれで良い。3競技を選ぶことが前提なのだから、第1ラウンドだけで3競技を決してしまうのは正しい選考方法とは言えない。
 それは何故か?
 今回の投票全体を見ると、野球・ソフトは候補に残したい第1の候補ではないが第2、あるいは第3に残したい競技と考えていた理事が多かったようだ。それで、第2、第3ラウンドを設けられたので、生き残ることができた。
 これがもし第1ラウンドのみで選出する方式だったら、相当危険な橋を渡ることになっていたはずだ。たとえば、1回目の投票で、レスリングが1票少なくて、7票で過半数を得られず、その1票が野球・ソフト以外の他の競技に入ったとしたら、野球はその段階で脱落してしまうのである。
 その意味で、投票を3ラウンドまで行ったのは理にかなっている。(1人3票投票するなら、1度の採決でも良い)
 しかし、細かな点で不合理な点がある
 まず、過半数を獲得した競技がない場合、「最下位もしくは得票のない競技を除外していく」というのが不合理。第2ラウンドの1回目から2回目に移行する際、最下位で0票のローラースポーツとウエークボードを除外しても、投票結果が変わらないのが普通であるところが、変わってしまうのがIOC理事会の不可解なところだ。そんなに意思が変わっていいのだろうか?
 次に、最下位が同得票で並んだ場合(1票以上ある)、決選投票するのも無駄に近い。慎重さを重視すれば行っても良いと思うが、投票する理事が偶数人というのは不合理で、2競技の得票が同数となる可能性も大きい。その時は会長が決するのだろうか?だとしたら、決選投票になったら最初から会長も投票に加えたほうが早い。

 中核競技から外す投票の際も感じたが、票の動きも不可解だった
 まず、第2ラウンド1回目で、第1ラウンドのレスリングに投票した8票がどう動いたかを見てみよう。空手(1票→5票)に4票、武術(3→4)に1票、スカッシュ(1→2)に1票、野球・ソフト(0→1)に1票、無効票1票と動いたと考えられる。
 ここまではいいとして、次が不可解。2回目は1回目得票がなかったローラースポーツとウエークボードを除外しただけなので、1回目と変化がないはずだが、空手(5→4)、武術(4→4)、野球・ソフト(1→3)、スカッシュ(2→2)、SC(1→1)と1回目無効票の1票が野球・ソフトに入ったと考えても、空手から野球・ソフトに票が移動している点が不自然
 3回目は外されたSCの1票がスカッシュに移動しただけで整合性のある結果だった(空手4票、武術4票、野球・ソフト3票)。この結果、野球、スカッシュ(2→3)が同票最下位となり、決選投票の結果、野球が残った。
 4回目はスカッシュの3票がすべて野球に流れ、野球6票、空手4票、武術4票となり、決選投票で空手が残り、
 5回目で野球・ソフトが武術票の4票のうち3票を獲得し、9票と過半数を獲得し(空手は5票)、選出された。
 野球・ソフトは2番目、3番目に残したい競技と考える理事が多かったと考えられるが、交渉術があったのかもしれない(第3ラウンドで票を入れるから今は協力してとか)。

 第3ラウンドも不可解な得票だった
 まず、1回目の結果は、
空手5票、武術4票、スカッシュ3票、SC2票で、0票だったローラースポーツとウエークボードが除外。
 2回目の投票は、0票の2競技を除外しても結果は変わらないはずだが、
空手2票、武術4票、スカッシュ5票、SC3票と、空手が3票も失い、スカッシュに2票、SCに1票流れた。この結果、第2ラウンドからずっと上位にいた空手がまさかの最下位で脱落。

 そして3回目
スカッシュ8票 武術4票 SC2票と、空手の2票の他、なぜかSCの1票もスカッシュに流れ、スカッシュが過半数に届き、選出された。


 何か、いろいろ裏工作をするために、投票方式をまだるっこしくしているように思えてしまう。
コメント (2)
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