英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その2

2013-06-08 17:26:48 | 将棋
間が空いてしまいましたが、『電王戦 第4局「Puella α VS 塚田九段」 その1』
の続きです。


 第5図は、Puella α(以下「プエラα」と表記)が、先攻し塚田九段がそれに対処するという流れで、ひと段落した局面。
 ここまでのプエラαは、成果があると判断したら即実行という指し手が多く、≪いろいろの手段を含みに持たせて、一番いいタイミングで≫という人間(棋士)とは対照的なコンピュータ将棋らしい指し手が目立った。
 だから、従来の棋理から見ると「損な指し方」なので、≪何とかなりそう≫と思われる。ところが、実際に指されてみると難しい。これは、このプエラαだけでなく、他の対コンピュータソフトに於ける共通した感触である。
 また、この将棋に関しては第3図の▲4六歩が相当な好手だった。

 この手単独では厳しさはないが、この歩が4五、4四と伸びてくると、後手陣の急所に突き刺さってくる。この手によって、先手の攻めに幅が出て、後手も受け切るのに難易度が増した。

 さて、第5図(再掲載)、

 後手は桂・香と金の2枚換えだが、歩切れ(歩損)で駒割は微妙。しかも、現在、銀桂交換の権利があるのも判断をややこしくしている。また、と金を作り、玉の上部がやや厚いが、これがどれだけの利があるかが判断し難い。後手の飛車、角が追い追い込まれ、とられる可能性もある。飛車の活用は難しいが、角だけでも働かせたいところ。
 と、種々の要素が絡み合って、形勢や今後の指し方の判断が難しい。実際、ニコニコ生中継の解説(木村八段がメイン)も判断をしかねている状況だった。(『週刊将棋』には「形勢は微差ながら先手有利が棋士の評判」とある)

 具体的に第5図では、▲4一金と飛車を捕獲する手がある。この手を防いで△7七桂成▲同桂△5二銀打(△5四銀)とする手が有力とみられていた。『将棋世界』の記事では「△7七桂成▲同桂△5四銀でやや後手持ちの評価で、塚田九段も局後そうすべきだったと同意していた」とある。しかし、この手順を選んだとして、勝ち切れる棋士はあまりいないような気がする。
 実戦は△2六香。「受ける手を読んだが、受け切るのは困難と判断し、入玉方針に切り替えた」という局後のコメントであった。事前の対COM戦で、「細い攻めを繋げるコンピュータ将棋の攻めの強さ」を塚田九段が体感していたことも、その方針決定の要因であろう。
 木村八段はこの△2六香を見て、顔を曇らせた。≪そういう指し方をするのか?≫という表情で、「私は全く予想しませんでした。こういう手が効果的だと塚田九段は知ってやったのかもしれません」と言いつつ、後手の指し手の方針と局面の分析をして、塚田九段の判断は良かったと言えるかもしれないが、実際にこの段階で▲4一金と打たれて飛車を取られる手は大きいし、入玉将棋になった場合5点というのも大きそうというような判断を示していた。
 私は、先手の飛車を2筋から追い(飛車を5筋に展開させるのがマイナスになる可能性もある)、後手の玉頭の厚みを確立させるこの△2六香自体は好きな手なので支持したい(私が支持しても仕方がないが)。実は、▲5八飛に△1三桂はないだろうかと考えていた。この△1三桂は飛車の逃げ道を作りつつ、次に△2五桂と跳ねれば入玉の道が相当はっきり見えてくる一石二鳥の手である。
 しかし、△1三桂の瞬間は非常に愚形で、これはこれで勝つのは大変かもしれない。実際、▲4一金△1一飛に角を取られると、後手としては1一の飛を取られずに入玉を果たすのは至難の業に思える。

 それはともかく、実戦は△2六香▲5九飛に△1五と▲4一金△1三玉(第6図)と進む。

 塚田九段の指し手は、一目散に入玉を目指すというものだった。
 入玉は、相手の手に乗って上部に逃げるのが一番効率が良い。相手の手に乗れば、自分だけで入玉する2倍のスピードになるし、相手が攻め駒が無駄になったり、逆に負担になったりする。(逆に言えば、自力で入玉を目指すのは効率が悪い)
 だから、その辺りを考慮して、攻めをちらつかせたり、厚みを作ったりして、相手に動いてもらうのが入玉将棋のコツである。もちろん、先に入玉した方が有利でプロ棋士同士でも、後から入玉する方は大駒を取られる筋(王手飛車取りや大駒の両取りなど)に掛かるような危険性があるので、先に入玉を確保するのも有効ではある。
 しかし、先に入玉した方が有利といっても大駒1枚ぐらいなら何とか挽回も可能という程度なので、飛車をあっさり見捨てるというのは、最善とは思えない。
 この塚田九段の指し手の根底には「コンピュータ将棋は、入玉将棋が苦手」という期待がある。この思考……相手の弱点を突くと言うと聞こえは良いが、「相手のミスを期待して、局面の最善手を追求しない」……木村八段はこの思想に、顔を曇らせたのだ。

 第6図より▲3一金△同金▲7一飛△2五と▲9一飛成(第7図)と進む。 
 
 ここで木村八段は「銀を引くのは入玉の方針には即さないが、△2二銀と角の1五への転用を見せるのが良い」と述べていた。1五に角を出た形は、後手玉の脱出口を一時的に埋めてしまうが、飛車に続いて角も召し取られては駒数不足が決定的になってしまうので、角の脱出を優先させたいのだ。
 実際、第7図では、安泰な駒や相手の駒と交換できそうな駒などを見積もると20点弱で、後手の角を助ける事が出来ても足りない状況である。
 しかし、、塚田九段の指し手は△2二銀ではなく、△2四玉。
 この手を見た木村八段は、「あれ?」と声を上げ、明らかに不機嫌になった。そして、今後の展開を解説したが、声に張りがなくなっていった。


 ついに角が取られることが確定した局面。木村八段の解説もあきらめムード。


木村八段、激怒

 塚田九段の△3三桂を見て
「これはどこまでやるつもりなのかな?」
と木村八段。
 256手で判定するというルールの説明の意識もあるが、絶望の局面を前に、思わず漏らしてしまった言葉のように思える。
 角を取られた後も、先手玉の動きを制限する存在であった9三と8四の歩、8五の桂も取られてしまった。8五の桂はもともと銀取りだったというのに……

 そして、木村の怒りが爆発した。
 木村激怒図の局面で、10点ほど足りないのを確認し、安食女流の
「この2枚(先手の飛車と銀)を取れば……」
という言葉に、
「そうですね………ここからここまで全部取ればぁ」
と、大盤の先手陣の駒を両手でブルドーザーのように全部さらうように押しのけた。


 木村八段は怒っていた。
 無惨な局面に対して、
 入玉将棋にコンピュータ将棋が弱いことに期待した志の低い指し手に対して
 絶望的な局面を前にしても投了しない未練がましい対局者に対して………

 私の想像です。ただ、木村八段が怒っていたのは間違いないように見えた
コメント (2)
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歳時メモ 意外と満開、いきなり開花

2013-06-08 14:03:10 | 歳時メモ
「歳時メモ」と勝手に銘打っていますが、このカテゴリーの意味は、植物の様子や気候などをメモして、翌年以降に現記事を振り返ると、季節の進み具合が分かりやすいかなと思い、記事にしています。

以前の歳時メモ(5月10日)で「つつじはほぼ終わり」というようなことを書いたが、意外と今が満開なものも多い。(失礼しました)

タチアオイが一気に開花し始めた。今年は開花日に気をつけていて、つぼみが膨らみ始めていたのを目撃。そろそろかなと思っていたら、5、6輪咲いてしまっていた。今年も失敗。油断ならない花である。
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