将棋雑感 ～８月を終えて～ その２

順位戦　Ａ級

　まだ、行方八段×三浦九段戦が終わっていませんが、序盤戦を終えた時点で
佐藤九段（４位）　３勝０敗
行方八段（２位）　２勝０敗
森内竜王（１位）　２勝１敗
深浦九段（５位）　２勝１敗
郷田九段（８位）　２勝１敗
広瀬八段（９位）　２勝１敗
久保九段（７位）　１勝２敗
三浦九段（６位）　０勝２敗
渡辺二冠（３位）　０勝３敗
阿久津八段（10位）０勝３敗　（括弧内の順位は、今年度のＡ級順位戦でのランキング）
　Ａ級に在籍していること自体、トッププロの証なので、どんな星の並び具合になっても不思議なことではない。
　とは言え、渡辺二冠の３連敗は、予想もつかなかった。
　「順位戦開幕、予想など」（6月12日記事）において私は……

　昇級については、「渡辺竜王は一日ガッチリ将棋漬けになる順位戦はやや苦手のように思う」とは述べたものの、
「竜王位を失い、３０代になり、今が勝負時と腹を決めた渡辺竜王が本命。対抗はそろそろ爆発する頃の佐藤九段。３番手は広瀬八段」と予想してしまっている。
森内竜王については、その実力を認めるも、調子は下降気味と見て、昇級候補から外しています。
　降級に関しては、阿久津八段 、行方八段、久保九段、三浦九段の名を挙げ、最終的に降級は行方八段と三浦九段に絞っている。

　渡辺二冠と行方八段については大外れで、私の面目は跡形もなく消滅。
　まあ、それ以外はほぼ予想内なのではないかと、一応、言い訳をしておきます。

　渡辺二冠に関しては、本命に推したので言及するのは憚られるのだが、「一日ガッチリ将棋漬けになる順位戦はやや苦手」という不安材料が顕現してしまった。
　第２局は勝機が何度か訪れたもののつかみ切れず、第３局は優勢に進めたが決めきれず、終局は午前１時過ぎの大熱戦の末、力尽きるように敗れた。
　残り６局を指し分け（３勝３敗）とすると最終成績は３勝６敗となる。ランキングが３位なので３勝すれば、ほぼ大丈夫。（深浦九段は４勝しながら２度も降級を経験しているが）

　もちろん、渡辺二冠ならば、残り全勝も大いに可能性がある。ただ、ここで心配なのは、≪渡辺二冠には深夜まで勝負を持ち越せばチャンスがある≫と思われてしまうことである。こういった精神的な要素が将棋には影響する部分が大きい。
　さらに３連敗、特に出だしから３連敗というのは、心にのしかかる不安が相当大きい。
　第４局の対郷田戦は、大きい勝負である。
　昇級候補に推した佐藤九段、広瀬八段はほぼ順調。深浦九段、郷田九段も降級候補に入れなかったので、予想範囲内と言わせてほしい。
　行方八段については、私の目が曇っていたという結果である。しかし、実は私はまだ信用していない。

　降級に関しては、渡辺竜王、行方八段以外は、ほぼ予想内。
　久保九段に関しては、振り飛車党が劣勢な現在、その筆頭の位置にいる久保九段は研究で狙い撃ちになってきていて、ここ数年、消耗感が漂っている。
　かつては、中終盤で羽生名人に読み負けなかった読みの精度に陰りが見え始め、≪長引かそう≫という指し手が増えてきているのが不安要素。
　三浦九段は、研究に頼りすぎるきらいがあるのが不満。今期の初戦の対郷田戦、横歩取り戦で５０手過ぎまで消費時間２分、さらに、６３手目までは予定通りだったのだろう、２２分の消費時間（通計）だった。
　しかし、次の一手に３時間２分の大長考。誤算があったのか、その後、幾ばくもなく投了。
　カーナビ（地図）しか見ずに突っ走り、がけ崩れの現場にぶち当たり、引き返すこともできずに立ち往生……そんな将棋だった。
　確かに、研究は大事だ。しかし、対局時に研究局面を目指して突っ走り、周りの景色を楽しまず、風や雲の流れも感じない……勿体なくないですか？
　≪あの山の緑はきれいだ≫、≪ここの交差点から見えるレストランはうまそうだ≫、≪こちらの道のアスファルトはまだ新しく走り心地はよさそう≫などと、思い感じることの積み重ねが、将棋の厚みを増すことになるのではないだろうか？
　阿久津八段は、例年、順位戦の出だしが悪いので、今後に期待したい。ともあれ、早く片目を開けたい。やはり、次の対深浦戦が大きい。

　昇級に関しては、対抗、３番手に挙げた佐藤九段、広瀬八段を推したい。しかし、難敵を多く残しているので、勝ち星をすんなり伸ばせるとは思えない。森内竜王、行方八段、深浦九段、郷田九段を含め、大激戦が展開されるであろう。２敗で踏みとどまったものが挑戦者であろう。
　降級は阿久津八段、三浦九段と見るのが順当。しかし、阿久津八段の頑張りに期待している。