英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『HERO』 第11話(最終話)

2014-09-24 19:25:25 | ドラマ・映画
 今シリーズ(特にここ数回)のゴタゴタ振りを観て、最終回に期待していなかったので、「がっかり感」はない。
 しかし、釈然としない点が多く、やはり残念な最終回と言いたくなった。


★確かに、裁判中の久利生の演説には説得力はあった
(意訳です)
「無実かどうかの裁定の場合、罪を犯した者が心神喪失状態になっていなかったら、その者は確実に真実を知っている。
 しかし、被告(犯人だとは限らない)の言っていることが、真実なのかウソなのかは第三者には分からない。
 そこで、弁護人や検察が証拠や証言などを示して案件に光を当て浮かび上がった像を、裁判官が見極めて判断する。
 その時に、証拠や証言が誤りがあり光が曲がってしまっては、間違った像が浮かび上がり適正な判決を下せない。
 だから、法廷にいる人全て絶対に正直でなければならない」


このブログでも、裁判の仕組みについて議論したことがあり、
「裁判は真実を明らかにする場ではなく、弁護人と検察が、一方は被告を擁護するため、一方は断罪するために、全力で綱を引きあい、その到達点で判決を下す場」であるらしい……
 なるほど、これだとかなりの客観性が見込まれる。
 しかし、この方式にも限界がある。弁護人も検察も不利な証拠、証言(証人)は採用しない。なので、光量不足や照らされない箇所が生じてしまうことがあり得る。
 やはり、久利生の信念のひとつ、「真実を明らかにする姿勢」が必要なのではないかと私は考える。


 最終話では、久利生は裁判の原理を説いていたが、被告の罪を断罪するのに懸命で、真実を明らかにしようとする意志が弱かった。(久利生の姿勢を学んだ特捜部は、「真実追及の精神」に目覚めていたが)
 過去の未解決の通り魔事件(最初の冤罪案件も含む)が、場所が近くで、後ろから狙う犯行手口が似ているからと言って、それが同一犯だと結論付けるのは、参考人に名前が挙がっていたとしても短絡的ではないだろうか?(前話の段階では、参考人の名前まではつかめていなかったと思う)
 最終話では、現場まで足を運び調書を見ながら検証はしていたが、簡単に南雲の犯行と特定できる確信(証拠)が得られるとは考えられない。
 さらに、今回の殺人事件は屋台での口論が昂じての犯行で正面から刺しており、競馬の負けの腹いせによる“通り魔”的な過去の犯行とかなり性質が異なっている。
 たとえ、冤罪事件の真犯人が南雲だったと立証できたとしても、今回の犯行が南雲の犯行であると立証したことにはならない。
 確かに、今回の殺人事件で、「殺意があった」「いや正当防衛だ」と水掛け論の傾向はあったが、これまでの久利生なら、まず、今回の事件の検証を丹念に行い、新証言や新証拠を見つけ出そうとするのではないだろうか?


★理解しがたい元検事・国分
・たったそれだけ?……南雲ではなく、大友を起訴した理由

 ふたりとも、犯行当時現場近くにいて、被害者の証言した背格好が似ていた。違いは、大友と被害者とには金銭トラブルがあったということで、それを根拠に大友を起訴したという。
 金銭トラブルがあったということだけで犯人にしてしまう………まさに「たったそれだけの理由」である。当時の南雲の背格好は不明だが、現在の姿からだと「似た背格好」の該当者は多数居そうだ。
 「あの時の起訴は正しかったと言い切れますか?」と問う馬場検事に「君たちは迷いながら起訴するのか?確信なく起訴を決める検事がいるのかっ!」と一喝したが、金銭トラブルだけで確信を持って起訴するのか?と問いたい。

 国分の件で引っ張ったので、南雲には何か動かしがたい無実の証拠があって起訴を断念し、久利生がその証拠をひっくり返すのかと期待したが……

・入れ代わり立ち代わり訪れる城西支部のメンバーを無視して、弁護側の証人に?
 これはこれで“HEROらしい”とは思うが、やや冗長感があった。それでも、末次事務官の叫びには感じさせられた。(でも、これ、先週聞きたかったな)
「国分さん!
もしあのときの起訴が間違ってたとしたら、無実の人が罰せられて、真犯人は犯行を重ねて、とうとう27歳の若者が殺されちゃったんですよ?
自分は関係ないなんて、そんな道理が通りますか!?」

法律がどうとかじゃないでしょう!
人としてどうなんだって話なんですよこれは!


 それはともかく、何を思って弁護側の証人になったのか?
「懺悔の為」というようなことを言ったが、それなら検察側に立つべきだ。
 久利生が南雲が検事をやめた理由を問いただした時にとぼけたのは矛盾している。

 初めから告白するつもりなら、久利生の裁判の原理の演説は必要ない。
 あのシーン、どう見ても、久利生に心を動かされた感じだったよね。

★意外と突き上げが緩かった検察とマスコミ
 検察は、川尻部長が上層部から吊し上げられたが、それ以外は具体的な動きはなかった。
 マスコミも、八木記者が扇動しただけで、冤罪疑惑についても、それを検察自らが暴いたことについても、それほど厳しく追及したようには思えなかった。
 “前代未聞”と称したが、これは傍観者的見地で、実際に検察内部から冤罪暴露(告発)があったら、マスコミがどういう動きをするのか興味があったが、やや拍子抜け。

 この八木記者、最終回でいきなり登場。中立の立場で城南支部の行為を評するのかと思ったが、単に「権力が嫌い」「正義感ぶった検察が嫌い」という幼稚な感覚的な動機で動いていただけだった。
 そのうえ、弁護士に国分の様子を伝えるなど、脚本家の便利な道具扱いだった。

【その他の突っ込み・感想】
・前話のおさらいのシーンで登場しただけで、あと出番なしの江上検事(勝村政信)……
・これは、巷でも指摘されていたが、線香に息を吹きかけるのってどうなのかなぁ
・久利生が若かった時、荒れてた時に彼を救い、影響を与えた沼田検事の方が、鍋島次席より気になる。



【ストーリー】番組サイトより
 特捜部の捜査から外された久利生公平(木村拓哉)が、麻木千佳(北川景子)と戻った城西支部は揺れている。殺人容疑で送致された南雲尊之(加藤虎ノ助)が過去にも同じような傷害事件を犯していた可能性が浮上したからだ。そのうち1件では、別の被疑者が逮捕、起訴され、刑罰が確定した直後、病気で他界している。もし、南雲の犯罪であれば、検察は冤罪を自ら認めることになってしまうからだ。
 そんな中、南雲の第1回公判が開かれる。検察側からは久利生が立った。罪状を読み上げ、求刑する久利生に南雲は無罪を訴える。南雲の弁護人、松平一臣(羽場裕一)も正当防衛を主張。すると、久利生は南雲が関与したと思われる過去の事件を追求し始めた。
 この異例の展開に、マスコミも検察も騒然とする。特に、東京地検本庁は川尻健三郎(松重豊)を呼び出して事情説明を迫った。しかし、川尻は南雲が犯した過去の犯罪の起訴には自信があると突っぱねる。牛丸豊(角野卓造)は本庁と城西支部に挟まれ、胃がいたくなるばかり。
 一方、城西支部のメンバーは手分けして、過去の事件を検証。同時に冤罪起訴した疑いのある当時の検事、国分秀雄(井上順)を訪ねて捜査への協力を求める。しかし、国分は頑として応じようとしない。

 過去の事件を含めた南雲の裁判が始まる。未だ決め手を欠くままの久利生たちに対し、松平は驚くべき手段をこうじてくる。
コメント
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