英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

アジア大会 女子10000m ~1位を狙うのなら~

2014-09-28 12:01:23 | スポーツ
 アジア大会での長距離レースを見ていて、いつも思うことがある。
「なぜ、日本選手は一番勝ちやすいレース戦略を取らないのだろうか?」と。

 解説の金氏によると、参加選手中、シーズンベストのトップは西原(シーズンベストは不明)、2番目が萩原31分52秒。ただ、これが強さを100%反映しているわけではない。それは、現在のパフォーマンスやコンディションの方が重要ということもあるが、中東、あるいは南方アジアのレースの展開自体が、日本のそれと違うからである。
 日本はレース当初からハイペースでそれを最後まで維持しようとする。もちろん、タイトルが欲しくて勝利を重視する場合は、スローペースで終盤スパート合戦になることもある。で、「ハイペース維持型」の練習をすることが多いはずだ。
 これに対し、中東・南方アジアはスローペース基調で、アップダウンが激しい「ゆさぶり型」、あるいは、後半にペースを上げる「後半型」、最後に猛烈なスパート合戦になる「ラストスパート型」が多いのではないだろうか。
 こういう展開の場合、タイム自体は遅くなり、持ちタイムは当てにならない。33分ジャストの実力なら、32分10秒ぐらい、いや、32分を切る走力があると考えた方がいい。
 さらに、ラスト1000m、あるいはラスト1周のスパートに関すると、前半スローペースで展開した場合は、持ちタイムは関係なく、いかに、ロングスパート力、ラストスパート力があるか、それに精神力が関わってくる。

 よって、日本選手が有利に展開するには、序盤からハイペースで負荷を掛け、余力と精神力(やる気)を消耗させ、「ラストだけ強い選手」を振り落とす。また、トップレベル選手にも負荷を与えつづけることで、ラスト1周のスパートの力をそぎ落としてしまう。できれば、6000~8000mのうちに、差を広げておきたい。
 「ハイペース維持型」の日本選手得意の展開でレースを支配するのが一番勝ちやすい戦略なのである。とにかく、スパート力のない日本選手は、ラスト1周のみのスパート合戦は避けなければならないのだ。



 昨日の女子10000mは、最初の1周が80秒で始まる最も避けたい展開。しかし、ふたりの日本選手はこれに追従。
 ≪何を考えているのだろうか?≫
 これでは、10000走ではなく、「8000m走」になってしまう。下手をすると「3000m走」。それに、本番レースをスローペースで走ることは、接触も多くなるので小柄な日本人選手にとってリスクが大きい。それに、スローペースで走れば余力が残るかというと、単純にそうではなく、却って走りが窮屈になりストレスが蓄積してしまうことも多い。

 レースは後半、UAEのムハンマドが引っ張りペースが上がった。7200mで西原は遅れだし、先頭集団は萩原を含む5人となった。
 7950mでウズベキスタンのハミドバ、8000mでバーレーンのチュンバが遅れだし、先頭集団はムハンマド、中国の鄭、そして萩原に絞られた。ムハンマドは自己記録が32分39秒、鄭は32分44秒(モスクワ世界選手権マラソン19位)と萩原より50秒ほど遅いが、残り3000mを、1000m3分6秒前後のハイペースで引っ張る。持ちタイムを大きく上回るパフォーマンス。萩原の方がタイムは上だが、“よく離されず、付いていっている”という印象だ。
 ラスト1周67秒(その前の1周が73秒、のスパートをかけたムハンマドが31分51秒86で優勝、鄭も最後まで追いすがり31分53秒09で2位、萩原は残り360mで置いていかれ31分55秒67の3位だった。西原は32分41秒49で8位に終わった。

 3位銅メダルの萩原は、レース後国旗を掲げ、はしゃぎ、インタビューもハイテンションだった。
 でも、≪トップを狙っていた≫らしい。
 「あそこまで行ったら金だ」という言葉も出たが、≪それは違うだろう!≫
 金氏はレース序盤から「もっとハイペースで走り、ラスト勝負に持ち込まない方がよい」と解説していた。また、高橋尚子氏も、「序盤からもっと前に出ていれば、メダルの色も違っていたのでは」と語っていた。

 コーチや選手自身、一体どういう戦略(レースプラン)を立てていたのだろうか?
 今回、後半をムハンマドがペースを上げてくれたので、ハイペース能力のない選手が落ちてくれた。これが、スローペースで終始し、ラストスパートだけの勝負になったら、中位入賞も危うかったのではないだろうか。
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