英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

どうにも納得のいかない解説…『将棋世界』3月号/里見-中井戦

2015-02-28 17:07:16 | 将棋
『将棋世界』2015年3月号、「公式棋戦の動き」(記・編集部)
 女流王位戦リーグで里見女流名人の復帰戦が取り上げられていた。
 その解説が、どうにも納得できない。

【以下、引用】

 第1図は2二の角を逃げた局面だ。ここで里見の▲4二歩(第2図)が疑問手で、形勢の針は一気に傾いた。▲4六角(参考図1)と角を逃げるべきだったのだ。

 だが、勝負は終わらない。中井の△4二同金が自然のようで敗着。▲3五角(第3図)で取られるはずの角が息を吹き返した。

 以下は里見が怒涛の攻めで押し切った。

 △4二同金では△5七と(参考図2)と角を取り、▲4一歩成に△1三角で後手が勝勢だった。

【引用終】



 「4二同金が自然のようで敗着。▲3五角(第3図)で取られるはずの角が息を吹き返した。 △4二同金では△5七と(参考図2)と角を取り、▲4一歩成に△1三角で後手が勝勢だった」という分析には驚いた。
 確かに、角を取りながら先手陣にと金で攻める△5七とは大きい手だ。先手の角は攻めにも働いているし、後手の龍を抑え込んでいる7九の歩にも紐をつけている。しかし、後手玉の直近の4一の金を直接取らせるのは、もっと大きいように思える。
 解説にある▲4一歩成の他に、直接手であるが王手の▲4一飛成で金を取り、△4三玉に▲3一龍(参考図3)と一気に角金を手にするのも魅力的だ。

 この局面、4二の歩が邪魔駒になっているのは気になるが、後手玉はしのぎがなさそうだ。例えば、△6四銀と脱出を図っても、▲3二角△5二玉▲4一角成△6二玉▲7四馬(参考図4)ぐらいで寄っている。

 後手の龍が7九の歩によってほぼ無力になっており、5七のと金だけでは先手玉に早い寄せがないの辛い。

 それに、「△4二同金では△5七と(参考図2)と角を取り、▲4一歩成に△1三角で後手が勝勢だった」という解説も怪しい。

 ▲4一歩成に△1三角には、▲5一飛成(参考図5)がぴったりで受けなし。

 何を根拠に勝勢と言うのだろうか?

 また、「ここで里見の▲4二歩(第2図)が疑問手で、形勢の針は一気に傾いた。▲4六角(参考図1)と角を逃げるべきだったのだ」もおかしい。▲4六角と▲4二歩の2手に、形勢が傾くか否かの差はない。

 参考図1で「先手良し」という訳でもなく、▲4二歩が悪手とも思えない(一気に形勢が傾く手を「疑問手」と呼ぶこともおかしい)。

 さらに、「△4二同金が自然のようで敗着」とあるが、△4二同金の方が△5七とより優っているように思える。

 第3図は、4二歩を利かされたうえ、角を逃げられて先手の言い分が通ったように思えるが、持ち駒がない先手が後手を一気に寄せ切るのは難しく、先手玉も狭いので、3五の角の利きが消え、△7九龍の手が回る展開になれば後手勝ちになり、まだまだの局面であろう。
 実戦では、里見女流名人が怒涛の攻めを見せたとあるが、どう寄せたのだろうか?(里見女流名人は、こういったギリギリの寄せは本当に強い)


 ともあれ、この解説、穴だらけに思えるが、私の目が節穴だらけなのだろうか?
コメント
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