「A級順位戦 プレーオフ2回戦 久保九段×渡辺二冠 その1」
「A級順位戦 プレーオフ2回戦 久保九段×渡辺二冠 その2」の続きです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/5b/ba5e8f90a2be3213f0b58a6e5a7aba0b.png)
第9図より、▲8三銀△8四飛▲7四歩と絡みついたのに対し、△6四歩と受けたのが第10図。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/45/845357160970479553fe62d0075dbe33.png)
先手の攻めは後手の左美濃(天守閣美濃)の外堀を攻めるにとどまっていて、△6四歩と3七の角道を遮断されてみると、▲7三歩成には△同金で8三の銀取りが残る。また、後手の8八の角が後手陣にも利き、香取りにもなっており、先手が急かされている感がある。
しかし、▲7三歩成△同金に銀を放置して、▲5五角△同角成▲同飛(第11図)と捌かれた局面は、後手の指し手が難しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/05/43d2d7aa45205131635287b3fbefe1db.png)
普通は△8三飛と銀を取る手だが、先に7三の桂を取られているので部分的には銀桂交換に過ぎない。確かに、全体では「金+歩3枚」対「桂」の後手の駒得ではあるが、後手の飛車金が取り残されているのが大きい。また、先手からは▲4四桂の両取りも残っている。
そこで、△6六角と急所のラインに角を先着するが、久保九段が▲4四角と打ち返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/d5/407d11ca1d9ff985dd84fc262a4ff75b.png)
飛車を挟んで互いの角が対峙し、危険がいっぱいだ。
渡辺二冠も△3三銀と強く応じ、久保九段も▲5三飛成と切り返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/79/fba8b2f31e07f1e3c16c10343fce4d7e.png)
これが問題の局面。
図では△4四角と角を外す手も見えるが、▲7三龍と金を取られて後手が悪そう。なので、実戦は△5三同金▲6六角に△8三飛と手を戻したが、▲5四歩が厳しかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/72/62cad9427b2f0f2b89eaea57bd587564.png)
△5四同金は▲4三角、また、△4三金とかわすのも▲6一角と打たれて手にされそう。
そこで、△5二金と辛抱したが、5四に拠点を作られたのはあまりに大きかった。
以下▲5三銀△5一歩▲3七桂△6九飛▲5五角打△4三金▲4五桂△6五歩▲3三桂成△同桂▲4四銀と浴びせ倒した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/60/7664dea750b310f72a730fb43741d7dd.png)
局後、問題になったのは第13図の局面。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/79/fba8b2f31e07f1e3c16c10343fce4d7e.png)
ここで△3九角成!(参考図1)という鬼手があった。▲同玉も▲同金も、△5三金▲同角成のときに王手馬取りの筋(参考図2)が生じる。よって△5三金に先手は▲3三角成と切るよりないが、それなら後手が大きく得をする。関係者から△3九角成を伝えられた渡辺は、「まったく気づかなかったです」と話し、頭の後ろに手を回して何度も「そうか」とつぶやいていた。久保も「全然見えてないです」と苦笑する。【中継解説より】
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/43/91/fcdb072876cb29674dececa31f9eba69.png)
しかし、△3九角成が必殺手であったかというと、そう簡単ではない。
△3九角成(参考図1)▲同金△5三金に▲6二角(参考図3)と打つ手がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/62/b4eac0cd54f449e930fa3e58f529a05b.png)
以下の手順は一例だが、△5八飛▲4八桂△4四金▲7三角成△8三飛▲同馬△5五角▲3七銀△9九角成▲6一飛△3二銀▲7四馬△5一歩(参考図4)……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/ba/b38bd6ee4d353275799491c4d9da7289.png)
もう訳が分からないが、若干先手がよさそう。
となると、やはり久保九段がずっと微差を保っていたのかとなるが、そうとも言えない。
第12図に戻って
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/d5/407d11ca1d9ff985dd84fc262a4ff75b.png)
中央の飛車角を無視して、△8三飛(参考図5)と銀を取っておく手があったかもしれないのである。
(ニコニコ生放送で佐藤紳哉六段が指摘していたそうだ)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/b9/8e3f4f94652e8f0d081daa10fbb61103.png)
8三の銀よりも▲1一角成と香を取る手が大きそうだが、△2二銀(参考図6)と受けられると意外に手が続かない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/9c/d03e71907e05aeffa8158bc86264d780.png)
また、参考図5で▲5三飛成も有力だが、平凡に△5三同金▲6六角に△3三銀打(参考図7)と固めておけば後手が勝ちそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b7/31663ae39755b796d35342f0f2ec8154.png)
棋力に乏しい私では真相は判らないが、第11図、第12図あたりでは渡辺二冠が逆転していたように思う。
どうなんでしょう?ssayさん、九鬼さん。
プレーオフ決勝、久保九段×行方八段は深夜(午前1時15分)に及ぶ激闘、150手の末、行方八段が勝利し、羽生名人への挑戦権を手にしている。3月5日、10日、16日と3局戦った久保九段、お疲れ様でした。
「A級順位戦 プレーオフ2回戦 久保九段×渡辺二冠 その2」の続きです。
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第9図より、▲8三銀△8四飛▲7四歩と絡みついたのに対し、△6四歩と受けたのが第10図。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3d/45/845357160970479553fe62d0075dbe33.png)
先手の攻めは後手の左美濃(天守閣美濃)の外堀を攻めるにとどまっていて、△6四歩と3七の角道を遮断されてみると、▲7三歩成には△同金で8三の銀取りが残る。また、後手の8八の角が後手陣にも利き、香取りにもなっており、先手が急かされている感がある。
しかし、▲7三歩成△同金に銀を放置して、▲5五角△同角成▲同飛(第11図)と捌かれた局面は、後手の指し手が難しい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/05/43d2d7aa45205131635287b3fbefe1db.png)
普通は△8三飛と銀を取る手だが、先に7三の桂を取られているので部分的には銀桂交換に過ぎない。確かに、全体では「金+歩3枚」対「桂」の後手の駒得ではあるが、後手の飛車金が取り残されているのが大きい。また、先手からは▲4四桂の両取りも残っている。
そこで、△6六角と急所のラインに角を先着するが、久保九段が▲4四角と打ち返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/d5/407d11ca1d9ff985dd84fc262a4ff75b.png)
飛車を挟んで互いの角が対峙し、危険がいっぱいだ。
渡辺二冠も△3三銀と強く応じ、久保九段も▲5三飛成と切り返す。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/79/fba8b2f31e07f1e3c16c10343fce4d7e.png)
これが問題の局面。
図では△4四角と角を外す手も見えるが、▲7三龍と金を取られて後手が悪そう。なので、実戦は△5三同金▲6六角に△8三飛と手を戻したが、▲5四歩が厳しかった。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/1d/72/62cad9427b2f0f2b89eaea57bd587564.png)
△5四同金は▲4三角、また、△4三金とかわすのも▲6一角と打たれて手にされそう。
そこで、△5二金と辛抱したが、5四に拠点を作られたのはあまりに大きかった。
以下▲5三銀△5一歩▲3七桂△6九飛▲5五角打△4三金▲4五桂△6五歩▲3三桂成△同桂▲4四銀と浴びせ倒した。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/06/60/7664dea750b310f72a730fb43741d7dd.png)
局後、問題になったのは第13図の局面。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/23/79/fba8b2f31e07f1e3c16c10343fce4d7e.png)
ここで△3九角成!(参考図1)という鬼手があった。▲同玉も▲同金も、△5三金▲同角成のときに王手馬取りの筋(参考図2)が生じる。よって△5三金に先手は▲3三角成と切るよりないが、それなら後手が大きく得をする。関係者から△3九角成を伝えられた渡辺は、「まったく気づかなかったです」と話し、頭の後ろに手を回して何度も「そうか」とつぶやいていた。久保も「全然見えてないです」と苦笑する。【中継解説より】
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しかし、△3九角成が必殺手であったかというと、そう簡単ではない。
△3九角成(参考図1)▲同金△5三金に▲6二角(参考図3)と打つ手がある。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/0b/62/b4eac0cd54f449e930fa3e58f529a05b.png)
以下の手順は一例だが、△5八飛▲4八桂△4四金▲7三角成△8三飛▲同馬△5五角▲3七銀△9九角成▲6一飛△3二銀▲7四馬△5一歩(参考図4)……
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/04/ba/b38bd6ee4d353275799491c4d9da7289.png)
もう訳が分からないが、若干先手がよさそう。
となると、やはり久保九段がずっと微差を保っていたのかとなるが、そうとも言えない。
第12図に戻って
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/16/d5/407d11ca1d9ff985dd84fc262a4ff75b.png)
中央の飛車角を無視して、△8三飛(参考図5)と銀を取っておく手があったかもしれないのである。
(ニコニコ生放送で佐藤紳哉六段が指摘していたそうだ)
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/09/b9/8e3f4f94652e8f0d081daa10fbb61103.png)
8三の銀よりも▲1一角成と香を取る手が大きそうだが、△2二銀(参考図6)と受けられると意外に手が続かない。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/9c/d03e71907e05aeffa8158bc86264d780.png)
また、参考図5で▲5三飛成も有力だが、平凡に△5三同金▲6六角に△3三銀打(参考図7)と固めておけば後手が勝ちそうだ。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/b7/31663ae39755b796d35342f0f2ec8154.png)
棋力に乏しい私では真相は判らないが、第11図、第12図あたりでは渡辺二冠が逆転していたように思う。
どうなんでしょう?ssayさん、九鬼さん。
プレーオフ決勝、久保九段×行方八段は深夜(午前1時15分)に及ぶ激闘、150手の末、行方八段が勝利し、羽生名人への挑戦権を手にしている。3月5日、10日、16日と3局戦った久保九段、お疲れ様でした。