英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

将棋界の一番長い日2015  ~名人挑戦の道はまだ続く~

2015-03-02 20:24:02 | 将棋
 A級順位戦、最終日。
 2敗の行方八段と久保九段が敗れ、3敗の渡辺二冠と広瀬八段が勝ったことにより、4人が6勝3敗で並び、プレーオフ(パラマス式のトーナメント)となった(詳しくは後述)。降級は三浦九段、森内九段、郷田九段の順に危なかったのだが、森内九段と郷田九段が勝ち、三浦九段の終局前に三浦九段のA級陥落が決定した。
 おそらく他局の結果を知らず、勝利を目指して必死に指し続ける三浦九段の姿、そして、昇降級に関係ない深浦×佐藤戦が午前二時過ぎまで指し続けていたのが、順位戦を感じさせた。


渡辺 明二冠(6勝3敗)○-●久保 利明九段(6勝3敗)…21時39分終局
 後手・久保九段の4→3飛車に渡辺二冠が4七銀を5八に引いて飛車交換に備える新手で対抗。

 久保九段は初志を貫き飛車交換を敢行したが、やはり無理だった。渡辺二冠の打ち込まれた飛車を抑え込むことができず、惨敗。

森内 俊之九段(4勝5敗)○-●行方 尚史八段(6勝3敗)…0時33分終局
 行方八段が△5三銀右急戦を採用。お互い飛車を5筋に展開した後、森内九段が積極的に角交換を挑んだが、その後、行方八段の△3六角の角打ちに▲3八角と受ける展開は、両者の角の働きに差がついてしまった。

 角の働きで劣る森内九段は金銀で4~6筋に勢力を張って対抗するが、行方八段が指しやすい局面が続く。≪もしかしたら、森内九段、降級?≫と思われたが、端攻めの構想がぬるく、▲5四歩と後手飛車を抑え込まれて棋勢は森内九段に。ただ、森内玉の6、7筋に空白地が気になるので、勝ち切るのはなかなか大変なのではないかと思った。
 終盤、行方八段の勝負手を見切り、▲6三歩成と後手陣に切り込む森内九段。中継の解説では「控室で“だめ”と言われていた順に踏み込んだ」と記されていた。

 その2手後も「なんと飛車を取った。どよめく控室。△7六角が詰めろになる。森内はどう指すつもりなのか」、さらに2手後も「控室でもまだ森内の真意はわかっていない」と。
 ……森内九段は読み切っていた。飛車を打ち合駒に香車を使わせることで、先手玉の詰めろを解除し、詰めろを掛けて勝利を確定させた。強い!
 
 行方八段が久保九段に次いで敗れたため2敗者がなくなり、この時点で行方八段、渡辺二冠、久保九段が6勝3敗で並んだ。3者以上でのプレーオフが確定。

阿久津 主税八段(0勝9敗)●-○郷田 真隆九段(5勝4敗)…0時49分終局
 角交換腰掛け銀。△4四歩が「ふわっと突いてしまいました」と郷田九段が反省した一着で、これを機敏に阿久津八段が▲6八飛と飛車を展開し、咎めた。この手は▲6六歩△同歩▲同飛(▲同銀もある)が狙い。これに対し、6筋を備えずに△4一玉と玉を寄せた。6一にも隙を作る手で、「やって来いとでも言いたげな△4一玉とは。郷田はやはり男であった」と中継解説。
 しかし、阿久津八段の▲6六歩△同歩▲同飛に対し、郷田九段は軟弱な△6三歩。局後の感想によると、「この玉寄りで6三に歩を謝ること覚悟を決めました」(郷田)。

 多少損をしても、≪勝負はまだまだ先である≫と割り切ったのだろうか。格調高い郷田九段らしくない指し手だが、この一局に懸ける郷田九段の覚悟を感じ、最終的には郷田九段が勝つような気がした。
 この後、棋勢は二、三転したが、阿久津八段の攻めをかわして郷田九段が勝利した。
 6回戦終了時点で2勝4敗と降級の危機だった郷田九段だが、終盤、深浦九段、森内九段、阿久津八段を連破して、5勝4敗と勝ち越したのは流石である。
 阿久津八段は9戦全敗と残念な結果。良い将棋を勝ち切る強さ、悪い将棋を逆転する悪力が不足していたように感じた。もう一度A級に復帰出来るかどうかは、今後次第であろう。

広瀬 章人八段(6勝3敗)○-●三浦 弘行九段(3勝6敗)…1時25分終局
 戦型は角換わり腰掛け銀。広瀬八段が、4、2、1、7、3筋の順に突き捨てる『“世に伊奈さん”仕掛け』を敢行。
 後手の三浦九段は▲3五歩に飛先の歩の付き捨てを入れ▲8六同銀に△3五歩と手を戻し、▲7四歩に△4六角と新手順を見せる(公式戦では現れていないが、有名な変化らしい)。
 
 微差だが先手・広瀬八段のの指せる分かれであったらしく、その差をキープした終盤に。
 入玉含みに指した方が良かったらしいが、受け切りを目指したため、難局に(微差で先手有利)。
 何とか勝利への道を開拓しようと苦闘する三浦九段だが、0時33分に森内九段が勝ち、0時49分に郷田九段が勝ち、三浦九段のA級陥落が決まっていた。
 囲碁将棋チャンネルは未契約で、ニコニコ生放送も弾かれるので、三浦九段の対局姿を見ることはできなかった。それでも、何度も入室しなおして、チラチラと三浦九段の指す姿を見ると、やはり心を打たれるものがあった。
 広瀬八段がきっちり勝ち切り、プレーオフに進出した。

深浦 康市九段(5勝4敗)○-●佐藤 康光九段(4勝5敗)…2時9分終局
 本局も角換わり腰掛け銀。先手・深浦九段が4筋に飛車を振り仕掛けた。昨年度名人戦第3局▲羽生三冠-△森内名人(第71期・2013年4月~5月、森内名人が4勝1敗で防衛したシリーズ)と同じ仕掛け(羽生三冠の唯一の勝利)。
 佐藤九段が長考し苦心したが、その割には不利に陥る。残り時間も少なかったが、入玉方針が功を奏し、先手良しながら先手が勝ち切るのが大変な局面に持ち込む。
 駒数不足の佐藤九段だが、先に玉を敵陣3段目まで逃げ込み、「駒数確保」と「先手玉の入玉阻止」と両作戦を織り交ぜ「勝負、勝負!」と挑む。
 深浦九段も辛抱強く指し有利をキープするが、なかなかゴールが見えてこない。昇降級に関係ない1局を延々と指し続けるふたり。
 1時40分……ついに力尽きる、私が(笑)。

 午前2時9分、後手玉が詰み、佐藤九段が投了。233手。(感想戦は3時35分に終了)

 深浦九段は長手数が多いなあ。深浦九段の長所であり、弱点でもある。


 こうして、将棋界の一番長い日は終わった。
 しかし、名人挑戦への道はまだまだ続く。(プレーオフについては後日)
コメント
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