英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2015~16 順位戦C級1組最終局 ……≪この投了図は、ないんじゃない?≫と思ったが…「その8」

2016-06-15 22:29:42 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」「その5」「その6」「その7」の続きです。

第8戦 対横山泰明六段戦
 本局は、千日手指し直しの一局。
 千日手局の消費時間は▲浦野5時間26分、△横山4時間36分。
 指し直し局の考慮時間は、残り時間の少ない棋士の考慮時間が1時間になるよう調整される。本局の場合は、浦野八段の残り時間が34分だったので、両者の残り時間に26分加算され、▲横山1時間50分、△浦野1時間0分となり、22時49分に開始された。

 後手・浦野八段の「ダイレクト向かい飛車+穴熊」に横山六段は「片銀冠+右翼金銀配置」でバランスで対抗した。

 横山六段が機敏に動いた局面。
 △2五同飛は▲同桂が3三の銀に当たり、先手先手と攻められてしまうと判断した浦野八段は△2四歩と自重。
 しかし▲2九飛に、▲3五歩△同歩▲3四歩を避けて△2三飛としなければならないのは辛い。飛車の横利きが消え、飛車の働きが弱くなってしまった。ただでさえ後手陣は穴熊で駒が偏っているうえ、飛車の横利きが消え、隙が多くなった。横山六段は、その弱点を押さえながらじわじわ盤面を支配していく。


 ついに馬作りが確定。
 この後も、馬を中心に支配力を強め、中押し勝ち。

 第24図では、駒損を承知で穴熊頼りに、△2五同飛と応じ、以下▲同桂△2九飛▲3三桂成△同桂▲同角成△1九飛成▲5五馬△2九飛▲1一飛△7二金寄▲1二飛成が想定される。

 図では、後手の銀損だが、先手の右翼の金銀が遊んでおり、それをうまく咎められれば(例えば4七の銀を攻めて金を取る)、勝負将棋に持ち込めるのではないだろうか?


 終局時刻は2時1分。消費時間は▲横山5時間40分、△浦野5時間48分。


第9戦 対阿部健治郎六段戦
 横歩取りから、互いに飛車を転回し、角交換後、角を打ち合う華々しい空中戦となった。

 以下、▲2五角△8五角▲3六角△6二銀▲5三桂成△同銀▲5五飛(第27図)と進む。


 角銀両取りであるが、先に桂を捨てているので銀を取られても銀桂交換ということになる。ただ、実際に角を取られるのも、銀を取られて飛車を成り込まれるのも痛そうだ。
 浦野八段は、銀を諦めて△7六角と出て、以下▲5三飛成に△5四歩▲同角成△同角▲同龍△6六桂と返し技を掛ける。

 桂を取ると△7六角と王手龍が掛かるので、▲6九玉△7八桂成▲同玉と応じる。
 さらに、浦野八段は△5三歩と小技を繰り出す。▲同龍なら△8六角が厳しい(詰めろ竜取り)。
 しかし、落ち着いて▲5六龍と引かれると、先手の龍の存在、後手の歩切れが大きく、後手が手に困る局面である。△7四角と打ったものの、▲3六飛とかわされたところで浦野八段の投了となった。
 中継サイトの解説によると
「投了以下、後手は△4五金と打てば7四角を成ることができるが、▲8六竜△4七角成▲3八角が一例で、馬はすぐに消されてしまう。その局面は4五に打った金の働きが弱く、駒割りは微差だが、先手優勢だ」とある。

 勝負の分岐点は第27図と考えられる。
 第27図では、△6六桂はどうだろうか?

 もらった桂なので、その桂を捨てても構わない(先手には“8九の桂が持駒に変わった利”はある)。
 △6六桂を▲同歩と取ると△7六角と王手で逃げられ、▲6七桂(あるいは▲4八玉)に△6四銀で角銀とも助かる。先手の飛車はどこに逃げても働きが弱そうだ。
 そこで、△6六桂に▲6八玉とかわすことになるが、△7八桂成▲同玉に△7六角と逃げておいて、▲5三飛成と銀を取られるが、△5四歩と勝負してどうか?△5四歩は龍の捕獲が狙い。

 しかし、この順も図から▲8四歩がいやらしい手で、振り解くのは難しそうだ(△8四同歩は▲7五桂、△6二金打には▲8三歩成△同玉▲9五桂△8四玉▲8五歩△同角▲5四龍)。
 華々しい空中戦の分かれは、先手に分があったのかもしれない。

終局時刻は17時18分。消費時間は▲阿部2時間0分、△浦野4時間5分。

「その9」に続く。
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