英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『99.9-刑事専門弁護士-』 第10話(最終話)

2016-06-20 17:57:44 | ドラマ・映画
「僕にとっては依頼人の利益よりも事実を明らかにする方が大事です」
これは全編を通じての深山の信条(第1話で深山が語っていたらしいが、私は第3回より視聴。最終回でも同様なセリフがあった)
さらに、
「正義とか真実とかっていう、100人いたら100通りの考えがあるようなものを……僕は信じないですよ」
「あなたはあなたの正義というものを貫くというのであれば、僕は事実だけを信じてあなたの前に立ち続けますよ!」


 よくこういったドラマで「真実」と「事実」を対比して語ることが多く、大概の場合は
「真実」>「事実」……事実は表向きの現象で、大切なのは“真相”(真実)。(名探偵コナンの決め台詞「真実は一つ」に相通じる)
 といった図式が多い。
 また、今回、依頼人の無実を証明する(依頼人の利益)ために「依頼人のアリバイを立証する」方針を立てた佐田に対し、深山は冒頭の「僕にとっては依頼人の利益よりも事実を明らかにする方が大事です」と述べ独自の行動をとったが、今回は“依頼人の利益”=“事実を明らかにする”なので、観ていて抵抗を感じた。
 これが、罪を犯した依頼人が「無罪を勝ち取ってほしい」という要求(利益)に対して主張したのなら、素直に受け入れられたのだが。


 この辺りの言い回しに違和感を感じたが、それはさておき、
 このドラマの検察(警察)は、「犯人を逮捕、起訴し、罪を確定させる」のが正義で、
 そのためには、犯行時間や証言を歪めたり、自白を強要させても構わない。
 事実(真実)の追及など、どうでもいいのである


 タイトルの『99.9』は、そういった実情への批判が込められている。(上記の検察の姿勢が、実態に合っているかは不明)
 ただ、私がもう一つ問題に感じるのは、『99.9』の数字の裏には、“勝てる見込みが得られなければ、不起訴”という実情もあるということ。
 たとえ、限りなくクロに思われる被疑者でも、立件・勝訴できる材料(証拠)がなければ、起訴しないという実態。
 この場合も、深山の信条である「事実を明らかにするのが大事」に反している。

 なので、深山の信条を貫くのなら、彼は弁護士ではなく検事にならなければならなかった。
 彼の父親が無実の罪に陥れられたという過去から「冤罪を失くす」という心情を持ったのなら、弁護士で良いのだが
……


 もちろん、ドラマの主題には共感できる部分も多いのだが、
 そういう訳で、最終話は“モヤモヤ”したものを感じて視聴していた。
 このドラマ、ギャグや小ネタも楽しめた(楽しめないモノも多かった)が、その分、ドラマの芯の部分の精密さを欠いたモノになっていたように思う。


★最終話の事件について
・捜査がずさん過ぎた
 「殺害現場に毛髪と血痕が残されていたこと」は、かなりの有力な証拠には違いないが、周囲の証言や動機、そして、自白などは、歪められたか強要されたもの。
 被疑者が主張するアリバイの検証はせず、動機もあやふや(被害者と被疑者の関係)、凶器の発見、指紋、目撃証言などについては、何の言及もなかった。

・真犯人の犯行も、その設定が不自然
 脚本サイドの犯人の条件は、「被疑者(誰でもいい)の血液と毛髪を手に入れることが可能なこと」、「何の関係もないと思われる4人と関わりがあったこと」。
 それに合致したのが、医師であり、都知事(被害者に脅迫される脚本的必要性があった)で、逆算的に設定されたと思われる。
 そのため、3人を殺害するにしては、「患者に悪戯したという過去の隠ぺい」という弱すぎる動機になってしまった。金で解決する方がリスクは少ない。(得意の?政治資金を運用すれば良い)
 殺害するにしても、脅迫していた本人だけで良い。普通は、それだと被害者の関係者である知事が疑われるが、今回は血液と毛髪の決定的な証拠を捏造できる。他の二人を殺害する方がはるかにリスク(目撃や犯行痕跡)が大きい。

・お助けマン(週刊誌記者)登場の強引さ
 たまたま、事務所に置いてあった、静岡の事件記事に目が止まった。
 そもそも、この記者、何をテーマで書きたかったのだろうか?詳細に調べたが、犯行状況などにさしたる疑問も持っていなかったようだし。
 単なる“お助けマン”としての存在だった。

【ストーリー】番組サイトより
 深山 (松本潤) は、連続殺人事件の容疑者として逮捕された石川の弁護を担当することになる。
 石川は、殺害現場に毛髪と血痕が残されていたことで逮捕され、取り調べで犯行事実を認めていた。

 だが、検察の 丸川 (青木崇高) から毎日、深夜まで取り調べられ、意識が朦朧としている中で調書にサインをしてしまったと明かす。
 そんな状況の中、深山は 佐田 (香川照之) や 彩乃 (榮倉奈々) らと捜査を始めるが、週刊誌のある記事を目にして、再び、皆の前から消えてしまい…。

深山と検察の最終決戦が今、始まる!
そして、ついに天敵・大友検事正 (奥田瑛二) と対峙する!
全ての謎が明らかになる !!

脚本:宇田 学
コメント (2)
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