英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不調なのか、それとも、衰えたのか……「その5・一昨年の王位戦を振り返るⅣ」

2016-06-29 00:24:38 | 将棋
「その1」「その2」「その3」「その4」の続きです。

 第6局も前局に続いての角換わり腰掛け銀(当然ながら手番は逆)。

 羽生王位の△3五歩は新手。先手が通常の矢倉(右金が6七)の形では、これ以前に3局あるが、羽生王位は先手番で1局、後手番で2局戦い、3局とも勝っているとのこと。
 第1図以下、▲3五同歩△2四銀▲3四歩△2七角▲4七銀△3五銀▲2七飛△4九角成▲5八金と進む。

 図の▲5八金は6八金型を活かした指し手で、後手の馬の動きに制約を与えており、次に▲2九飛で馬が詰む。さらに、後手の3五の銀も心もとない状況。
 羽生王位は△3九馬▲2七飛で馬の安全を確保し、△4三金左と援軍を向かわせる。

 △4三金左では△4三金直が自然だが、3四に進出した際に5三の利きがなくなり、▲7一角が生じてしまう。
 △4三金左以下、▲2五歩(次に3三に歩を成り捨て▲3六歩で銀を捕獲する狙い)△5五銀(△4六銀右を可能にする)▲6三角△3四金▲5六歩と3筋の制空権を巡る指し手が続くが、後手としては金銀3枚がおびき出され、玉が寂しくなってしまった。

 ▲5六歩と動きを強要された第4図は、後手の“前のめり感”が半端ではない。
 第4図から△6六銀(△4六銀もあった)▲3六歩△7七銀成▲同金△2六銀打(第5図)▲3五歩△2七銀成▲同角成△3五金▲2四歩△同歩▲6三馬で第6図。

 大きく駒が振り替わったが、「先手・銀2枚」対「後手・飛車」の二枚替えで先手の得。さらに、6三に再び侵入した馬の存在が大きく、後手の8二の飛車は心もとない。さらに、後手玉の守備駒は金1枚のみで、しかも離れている。
 ここで、塚田九段説の△4九馬(▲6四馬に△5八馬▲同銀△6八飛を用意)が検討されていて▲7八銀でどうかと言われていた。また、△7五歩と嫌味を付けつつ▲6四馬に備える手(▲6四馬△7六歩▲同金△7三歩)もあるかもしれない。
 羽生王位の指し手は△6九飛だった。

 好守に利かせた手だが、手順に▲7八銀と固められ、△4九飛成と逃げることとなり、結局、▲6四馬を実現させてしまう。後手の龍と馬も働きが弱い。冴えない手だなあと思っていた。

 ▲7八銀△4九飛成▲6四馬と歩を補充されつつ飛車当たり。
 ≪飛車って強い駒だけど、こうやって追われると弱いよなあ≫
 強い駒だけに相手に渡したくないが、行動範囲が広い馬に追われると、歩などを拾われながらドンドン追い込まれてしまう。
 しかし、羽生王位はこういった飛車の逃げ方や見切りが実にうまい(そう言えば、今年の王将戦第2局も巧みだった)
 一旦、△6二飛として▲6三歩を打たせてから△9二飛と逃げ、▲7四馬(第8図)の追撃にも

△8二飛とかわす(9二での飛車馬交換を許容する人も多いのではないだろうか)。先手は飛車取りを掛けながら2歩を得たが、△8二飛の局面は意外に難しい。
 ここで木村八段は▲6五馬としたが、△3六歩と上部開拓を目指されてみると、次の△3七歩成が大きく、それを上回る先手の手段が見当たらないように思えた。
 実戦は▲2三歩△同玉▲2一馬△3七歩成と進んだが、上部に追い出す寄せで△3七歩成が実現しては後手有望に思えてきた。
 しかし、次の▲4三銀が絶好。

 指されてみると、後手玉の上部脱出が意外に、しかも、相当難しいことが分かった。

「その6」に続く……   終われないなあ……
コメント
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