英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不調なのか、それとも、衰えたのか……「その3・一昨年の王位戦を振り返るⅡ」

2016-06-26 13:09:15 | 将棋
「その1」「その2」の続きです。


 第4局は、難解な攻め合いの矢倉戦となった。

 この△6四歩は皆が驚いた手。
畠山鎮七段「私がやったら、阿部先生に叱られてしまいそうなくらい怖い手です。ただでさえ先手が攻めてきそうなところなのに、角道を止めてしまうわけですから。いろいろ怖い筋がありますよ。羽生王位はとことんやってこいと言ってますね」
阿部隆八段「△6四歩??? ちょっと驚きましたね! 浮かびも想像もつかない。若者の言葉でいうと神の一手ですね。意味を理解するため長考します(笑)。失礼を承知で言うとPCのバグかと思いました。先攻するのが一目。▲3五歩△同銀▲同銀△同歩▲1五歩△同歩▲2五桂と。そこで△2四歩は▲1五香△同香△3三歩とバンバン攻める。△2四歩で△3四銀の受けなら▲9六歩から香を入手する。
木村八段、やはり長考ですね。攻める手以外は難しい。かといって腰が入った攻めとは言えない、切らされる心配があります。まあそうじゃなければ羽生さんが△6四歩という凡手に見える手を指す訳ないでしょうから」
飯島七段「△6四歩がびっくりの工夫でした。先手が攻めてこようとしているのに、けん制している角の利きを止めたですからね。木村八段もつぎの▲2五桂に1時間9分考えていますし、やはり驚かれたと思います」

 この後、激しく難解な攻め合いとなった。




 局面図を挙げるのみにさせていただくが、5五に出るかと思われていた銀を桂の利いている3三に引いたり、角を切ったりと緩急織り交ぜる羽生王位。それに応じながらも反撃の手を繰り出す木村八段。
 非常に難解な攻め合いだが、このような駒への当たりが多く複雑な局面は、羽生三冠の最も得意とするところ。特に、4~5筋に垂らした歩の使い方が絶妙で、終始、主導権を握っていたように思う。
 木村八段の飛車・歩の玉頭への圧力と2枚角の利きをうまくかわし、5、6筋の優位を最大限に発揮して(第9図の桂は5四から跳ねたもので、後の10図の△5八歩成に寄与している)の勝利は会心譜と言える。

「その4」に続く
コメント
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