英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

不調なのか、それとも、衰えたのか……「その4・一昨年の王位戦を振り返るⅢ」

2016-06-28 00:11:02 | 将棋
「その1」「その2」「その3」の続きです。

 第5局は、第3局に続いて角換わり腰掛け銀(手番も同じ)。

 ▲3七角に木村八段は強く△7五歩と応じた局面。
 以下▲6四角△9二飛▲7五歩△9五歩▲同歩△8六歩▲同歩に△9六歩で第12図。

 △9六歩に▲同香と取るのは、4五の桂と9六の香の両取りの△6三角と打たれて、先手が思わしくないとみられていた。
淡路九段藤原七段は(1)▲3五歩(△9五飛に▲9八歩と受ける変化と▲3四歩と突っ込む変化がある)、千田四段は(2)▲2四歩(△同歩▲2五歩△同歩▲1五歩△同歩▲2四歩で後手の玉頭に拠点を作るが、代わりに歩を与える)を予想している』というのが中継サイトの解説。
 ところが、羽生王位は堂々と▲9六同香。
 面白かったのは、この後。
 ▲9六同香が指されて、急遽、検討陣も調べ始めるが、先手が指せる変化が見い出せない。羽生名人の意図を掴めず、△6三角に素直に香取りを受けるだけの▲8七金にも意表を突かれる。
 しかし、実際に▲8七金以下△4五銀右▲同銀△同角と木村八段の思惑通り進んだものの、▲8三銀と打たれてみると……

 ……≪先手の方が良さそうだ≫という声が多くなった。

 けれども、そんな単純な将棋ではなく、△9三飛▲9四銀成(▲8二飛成のほうが良かったという説もある)△7三飛▲8四成銀(第14図)の時に

 △7二桂と打てば、結論がはっきり出ない非常に難解な将棋になっていたと言う。
 ▲4五飛△同銀▲5五角△3三桂▲7三成銀△5四銀(変化図)は角の逃げ場が難しく先手大変とのこと。

 以下▲4六角に(A)△4九飛▲4七歩△7三桂▲同角成△6九飛成▲5九飛△7九銀▲9七玉△5九竜▲同金△7八銀▲9八角△9九飛▲8八金……形勢不明(“互角”という意ではなく、“分からない”という意味)また、(B)△4五銀▲5五角△5四銀▲4六角△4五銀の道もあるらしい(中継解説による)。


 実戦は、第14図で△7一飛だったので、棋勢が先手に傾いた。
 以下、▲9一角成△3六角▲3七馬△3五銀▲3九香

 △3三金右▲3六馬△同銀▲同香△3七角▲3八飛△1九角成▲3五歩と進む。


 この▲3五歩が精密な指し手。
 この手で普通に▲3五香△3四歩▲同香△同金▲同飛と進めると△3三香と打たれ飛車が取られてしまう(それでも先手が良さそう)。


 しかし、▲3五歩(第17図)△同歩▲3四歩△同金を入れて▲3五香と香を走れば、△3五同金▲同飛となり((本譜は△3五同金とせず△4六桂)

 飛車は無事である。


 以後は羽生王位が着実に勝ち切っている。


 木村八段を含め、皆が読みを打ち切ったその先を読み、木村八段の思惑に乗って勝つ……王道の将棋を見せた。
 一か所難解な変化もあったが、精密な指し手が光った一局だった。


「その5」に続く
コメント
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