英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2023王将戦第6局(2022年度) ……しおれています

2023-03-12 20:48:34 | 将棋
 萎れています……そうか…「しおれる」って「萎れる」と書くんだ……

 七番勝負前から、羽生九段が敗れる(王将奪取が叶わない)覚悟はできていた。
 ここ数年の状況……特に昨年度(2021年度)のA級陥落、勝率3割台の状況を考えると、タイトル戦の檜舞台に立つことはないかもしれない。もちろん、復調すれば、挑戦権を獲得することは可能かもしれないとは考えていた。
 しかし、王将リーグで、服部五段、糸谷八段、近藤七段、渡辺名人、永瀬王座、豊島九段相手に全勝で挑戦権を獲得!
 王将リーグは持ち時間や季節的なモノ?などの相性がいいので、挑戦権に絡めるかもしれないとは思っていたが、同時に、陥落もあり得ると……

 で、王将戦七番勝負が目前になってワクワクしたかというと、そうではなく、0勝4敗のストレート負け、しかも、将棋の内容もワンサイド……なんてことを考えていた。
 でも、心の片隅で期待はしていた。でも、あまり期待を膨らませないように努めていた。

 第1局は途中から差がついてしまったが、内容は悪くなかった。第2局は羽生九段らしい辺境地点への金打ちが出て、その他の指し回しも見事だった。
 第3局も敗れはしたが、勝負将棋にはなっていた。第4局は藤井王将が受け手を誤り、羽生九段の快勝となった。藤井王将のミスで勝った形にはなったが、ミスが出るまでの指し手や、優勢になってからの勝ち方が隙がなかった。
 第5局は、第一日目の段階でかなり不利に陥ったが、藤井王将が珍しく勝ちを急いだため、局勢が接近し逆転を思わせる局面になった。しかし、藤井王将も崩れず、結局難解な局面を抜け出した藤井王将が勝利。
 最後は、羽生九段が力尽きた感じだったが、第6局以降に期待を感じさせる名局だった。

 第6局は……第6局は………残念……がっかり。
 でも、"落胆”とか”がっかり”というマイナスな気持ちと言うより、“萎れる”という感じ。
 《同じじゃないか?》と言う勿れ!
 また水分(気力)を注入すれば、元気になる!……はず…たぶん。



 第6局を簡単に(後で、読み返した時に、どんな将棋か分かるように)

 角換わり腰掛銀のかなり以前からある(昭和時代?)、お互いに2筋8筋の敵陣を押し込める戦型。
 そこから、羽生九段は▲6五歩と局面を動かす。
 これは、昨年の叡王戦・九段予選で、▲永瀬ー△羽生戦で現れた指し方。(永瀬勝ち)
 この時、後手を持って敗れた羽生九段が先手番で採用し、藤井王将に解答を求めた形だ。

 藤井九段の解答は、図から△6五同銀▲4六角に△6四角(対永瀬戦で羽生九段は△7三角)。以下▲6八飛△7三桂▲7五歩と進む。(藤井九段の解答が正解で、後手が有利になったわけではなく、難解な形勢)

 前例から離れているが、羽生九段の▲7五歩はわずか8分の考慮。研究範囲なのだろう。
 これに対して、藤井王将は1時間12分考えて△7五同歩と応じる(もちろん、研究範囲だろうが、改めて読みを入れた)
 ここで、大きな分岐点。
 控室では、「△7五同歩以下、▲6四角△同歩▲3三歩成△同銀▲7四歩△同銀▲6四飛で銀取りを受けにくい

 △8四飛なら▲4一角があって先手が良くなりそう。なので、△8五角や△6五角と受けてどうか……。この変化を避けて▲7五歩には△4六角とする手もあった」

 感想戦で藤井王将は△8五角と受けていた。以下、色々、調べていたが、羽生九段の「う~ん」とか「うぅぅぅ…」とか「そうかぁ」というような、うめき声にもうなり声にも聞こえる声が多かった(この局面に限らず、藤井五冠との感想戦はこういう感じ)。局面自体が後手が良いのか、藤井王将が強くて、藤井良しの変化になるのかは不明。

 実戦は、変化図に成算を持てず、△7五同歩に▲6六銀を選択(AI推奨の一手)。以下△4六角▲同銀△6六銀▲同飛△7四角▲3三歩成△同銀▲4八玉△4四銀と進む。

 ここで、▲3八金~▲3九玉と自玉を整えたが、2手かけたほどの効果はなく、後手の△7二金~△3三桂の方が勝ちが高くて、後手が指しやすくなったようだ。

 以下は、指し手は省略。

 図の△4五同桂では△4五同銀の方が良かったようで、若干、差が縮まった。図の少し前の▲2一角が良くなく、あきらめかけていたが、少し元気が出た局面だった。
 しかし、ここで▲6四歩が悪手で、手抜きで△5七銀と打ち込まれて、敗局を決定づけられてしまった。
 図では、8筋を放棄(飛成を甘受)して▲6八金とするのが勝負手だったらしい。
 以下は、形作り……


 本局は、時々ある羽生九段“変調”の一局だった。
 AI将棋全盛の現代では、手の流れ(一貫性)は以前ほど重要視されず、その1局面、1局面を切り取って考えるのが主流である。(皮肉なことに、羽生九段全盛時に羽生九段自身が述べていた)
 それでも、局面の捉え方は平成も令和も大きな差はない。多少、各要素の重要度は変わってきているが、本局ではその要素ではなく、将棋の方向感覚が狂っていたように感じる。変調だった。


 今年度は勝ち星も上がってきている。最近は、単に勝ったという結果だけではなく、その足取りがしっかりしてきているように感じる。
 また、次の檜舞台を待ちたい。
コメント (4)
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