英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

相棒 season21 最終回スペシャル後篇 第21話「13~隠された真実」

2023-03-16 17:23:54 | ドラマ・映画
「団塊(の世代)とは……戦後の日本で一番いい思いをしている連中だ。
 定年後、しっかり年金をもらいながら、悠々自適に逃げ切っていく幸せな世代だよ。
 将来世代に再び焼け野原のような日本を残して」
「焼け跡世代が必死の思いで復興した日本の豊かさを、食い散らかしている団塊の世代の罪は重い」


「先生(63歳)の世代だって、戦後の豊かさを謳歌した逃げ切り世代じゃありませんかぁ。
 平穏の訪れた豊かで平和な暮らしの中で、政(まつりごと)は人任せ、団塊の方々を糾弾する資格など、ないと思いますがねえ!」


葛葉宰三 (渡辺いっけい)と右京の考え……脚本の輿水氏は、どちらを主張したかったのだろうか?
或いは、《生きることに世代は関係ない》と言いたかったのか……



 右京や輿水氏の思想はともかく、反論を覚悟して言うと……
 個人的には、葛葉のことばへの共感は大きい。
 もちろん、“焼け跡世代”や“団塊の世代”など先人の苦労や功績によって“高度経済成長”は成し遂げられ、その後の世代はその恩恵にあずかっており、尊敬できる先達は数多い(実生活を含めて)。
 しかし、団塊の世代の人たちの中には、《経済成長したのは自分たちの功績だ》という自負が大きく、《自分たちの言う事、することは正しい》と思い、《下の世代は、自分たちの言うことを聞いていればいいんだ》というような考えを持っている人が多い(無意識の人も多い)。
 しかも、同じような考えを持つ者が多いので、それが風潮となり、主義主張が実践される……それで、ますます………
 社会が大きく変わっていく時代、技術革新、東京オリンピックの建設需要の増大、道路・下水道・学校などの生活基盤も充実化され、大変な時代であったが、努力が実績・利益に繋がる時代だった。
 もちろん、葛葉(63歳)世代もその恩恵にあずかったが、経済膨張後の停滞から不景気、経済成長だけを目指した反動の公害問題、各国の巻き返しなど、マイナス要因などで《努力=実績》という訳にはいかなくなってきた。
 それでも、団塊世代たちは、《努力=実績》《俺たちが豊さを築いたという自負》から叱咤激励?し続ける。仕事だけではなく、地域社会の場でもそういう態度で押さえつけるものが多い。

 葛葉世代は、学生時代は受験戦争(学習指導要領が求める学習内容の過密さも最大の時代)で社会・政治などに目を向ける余裕はなかった。その分、アイドルや趣味に走った(逃げた)学生時代だったものが多いような気がする(私だけかも?)。そのせいか、確かに右京の言う“人任せ”“人のせいにする”の風潮が強いというのは否定できない。
 “上の世代”から押さえつけられ、割と自由が認められた”下の世代”には振り回された。
 もちろん、その下の世代、いろいろ“ゆとり世代”“就職氷河期世代”など各世代もそれぞれに苦労が多い。

 で、右京は葛葉に厳しく意見、激高したが……右京は何歳なんだろう?
 右京にしても、子育てをせず、刑事活動一筋(それはそれで社会に貢献している)で、世間のしがらみや社会活動は皆無のようだ。右京は現代の矛盾や歪みを人のせいにしないが。
 右京の指摘は正しいが、そこまで言わなくても……ちょっと、ムッとした。
 

 葛葉は、右京の言葉に自分のいたらなさを素直に、
「あの人の言う通りだ。わが身を顧みれば顧みるほど、未来世代に顔向けできない自分を持て余して、結局、上の世代に責任転嫁して折り合いをつけていただけじゃないか、俺は!……」
と激反省したが、その葛葉に、、伊丹は語調を抑えて
「そんなことより、つまらない講釈した子供たちの名前、教えてくれる?」と……冷静と言うか冷たい
(葛葉は虚偽自白(捜査妨害?)をしたが、骨壺を見ての驚愕振りからすると、墳墓発掘(骨壺窃盗)については教唆も認知もしておらず、鉄道マニアの趣味を手助けしただけ?)

 一方、生徒(塾生)たちは、罪を犯した自覚と今後の心配をしつつ
「楽しかったなあ」「めっちゃ、ドキドキした」「この一年充実してたぜ」
と、どちらかというとお気楽な会話。
 もちろん、口には出さないが、故人やその家族親族に対して詫びる気持ちもあったとは思う。なので、敢えて咎めるシーンはなかったが、やはり……
 ……遺骨を盗まれて、最長1年間、悲しみや不安や心配などの気持ちに苛まれたはずで、生徒たちの犯した罪は大きい

★事件のポイント
①真野夫妻はなぜ、(暴君の父親の)13回忌をしたのか?(右京の疑問)
・世間体を気にした
・《どんな悪党も死ねば仏》という思いから
・《すまなかった(申し訳なかった)》と言う気持ちがあったから→ちょっとやそっとで逝きそうもない父を無理やりにでも生かしてしまおうと、強硬手段に出でしまった。申し訳なかったぁという贖罪の気持ち。
 そう考えると、正義くんが祖父の遺骨を盗み出したことも、夫婦が身代金を直ちに拒否したことも説明がつく

②“13の脅迫文はすべて同じ文面(指示)”という思い込み(をしてしまった)
 真野家には《晃三(正義の祖父)の死の真相を示唆し、300万円を要求》というモノだった。
 だから、表向きには《1万円の投げ銭》を拒否を表明。

③木(木の葉)を隠すには森の中
 事件の真の目的は……
《“正義の両親が祖父をヒ素で中毒死させたのでは?”という疑惑を、祖父の遺骨の身代金に300万を支払うかどうかで真偽を確かめる》というものだった。
 その真の目的を隠すため、13の遺骨窃盗を犯し、“日本を再生不能にした戦犯”を処刑するという脅迫メッセージを送り付けた(葛葉の怒りを代行した)

 犯行動機の真相に迫る上記のポイント、団塊世代への不満、鉄道マニアの趣味の一筆書き乗車など、面白かった。
 若干の齟齬が見られるが、許容範囲。

【疑問点】
・真野夫妻の真野晃三殺害
 確かに殺意を抱きたくなる暴君ぶりだが、殺害するマイナスが大きすぎる。特に、殺人の罪を犯したという贖罪の気持ちは耐えがたいであろう。犯行がばれて、刑罰を受けるというリスクもある。
 取りあえず、父の暴虐ぶりのシーンでは、取りあえず、一発反撃する価値はあった。それでも変わらない、あるいは、さらに激しくなるのなら、家を出るとか……とにかく、他の手段を選ぶべきであった。まあ、それを言ったら、刑事ドラマは成り立たないが。
・正義の両親への糾弾と出生前の記憶
 これ、こんな犯罪を犯さずとも、両親を問いただせば済むことだと思う
 出生前に母親の胎内でヒ素殺人の事を聞いていたというのも不要

・官房長の遺骨窃盗は偶然
 すごい偶然だが、これがないと相棒SPにはならない(特命係の捜査が始まらないし、縁の登場人物も絡みにくい)
・まだ明るいうちにヘリで飛び立ったのに、着いたのは夜
・正義を“ジャスティス”と読ませるのに、名付けた父は“ジャス”と呼ぶの?…

ラストシーンの“美和子スペシャル”……各々の拒否したい態度がおもしろかった。(特に、小出茉梨の抵抗)
そして、その直前の右京と亀山の会話も
「(遺骨を盗まれて)とんだ災難でしたねえ、官房長。天国でさぞかしご立腹かと…」
「天国に、居らっしゃいますかねえ」
「そんな憎まれ口を叩くと、化けて出ますよ」
「ならば、もっと憎まれ口を叩きましょうかねえ…」

 私なら、美和子スペシャル→「もっと憎まれ口を叩きましょうかねえ…」にしたい。


第1話「ペルソナ・ノン・グラータ~殺人招待状」(初回SP)
第2話「ペルソナ・ノン・グラータ~二重の陰謀」
第3話「逃亡者 亀山薫」
第4話「最後の晩餐」
第5話「眠る爆弾」
第6話「笑う死体」
第7話「砂の記憶」
第8話「コイノイタミ」
第9話「丑三つのキョウコ」
第10話「黒いコートの女」
元日SP第11話「大金塊」
第12話「他人連れ」
第13話「椿二輪」
第14話「まばたきの叫び」
第15話「薔薇と髭と菫たち」
第16話「女神」
第17話「定点写真」
第18話「悪役」
第19話「再会」
最終回スペシャル前篇 第20話「13~死者の身代金」

【ストーリー】(番組サイトより)
小野田公顕の遺骨はなぜ盗まれたのか
事件に隠された意外過ぎる真実とは!?


 警察庁から捜査権を与えられ、遺骨盗難事件を追っていた右京(水谷豊)と薫(寺脇康文)は、わずかな手掛かりから犯人が学校関係者ではないかと推理。鉄道マニアの米沢(六角精児)に協力を要請し、“13”を名乗る犯人グループがたどったルートの解析に掛かる。
 同じ頃、尊(及川光博)と美彌子(仲間由紀恵)は、密かに初会合を設け、それぞれの思惑を交錯させていた。
 そんな中、遺骨が盗まれた元官房室長・小野田公顕(岸部一徳)の小野田家をはじめとする被害者宅に、二通目のメッセージが届く。そこには“身代金”に関する指示が書かれていたが、受け渡しの方法と金額は予想外のもので…!? そして、被害者13家族の中の2家族が、断固としてそれを拒否。
 その内の一軒、真野家を訪れた右京は、応対に出た中学生の息子・正義(柴崎楓雅)に引っ掛かるものを感じる。正義はつい先日、奈良に遺跡巡りの旅に出たというが、引率した葛葉宰三 (渡辺いっけい)という私塾の塾長も、一癖ある人物で…!?

新たに届いた“脅迫状”をきっかけに前代未聞の遺骨盗難事件はますます昏迷…
尊、米沢、美彌子らの思惑が交錯する中、特命係が驚くべき結末をたぐり寄せる!


出演:水谷豊 寺脇康文 森口瑤子 鈴木砂羽 川原和久 山中崇史 篠原ゆき子 山西惇 松嶋亮太 六角精児 神保悟志 小野了 片桐竜次 及川光博 杉本哲太 仲間由紀恵 石坂浩二ほか

ゲスト:渡辺いっけい 柴崎楓雅

脚本:輿水泰弘
監督:橋本一
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