英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

2023王将戦第5局(2022年度) その7「まとめと補足」

2023-03-18 11:42:18 | 将棋
 長々と第5局の△3七歩の変化を書いているうちに第6局も終了し、藤井王将が防衛してしまいました……
 一番書きたかった△3七歩の変化を書いたので、第5局の記事も終了してしまって良いような気がしますが、後々に読み返した時のことを考えると、その他のポイントを書いておいた方が良いかなと書き始めましたが、今一つ、気が乗りません。はあぁ~

 (変化図1は△3七歩▲2九銀△2七歩成と進んだ局面)
 上記の△3七歩については、「その3」「その4」「その5」「その6」で書いたので、そちらをご覧ください。
 「その1」では、△3七歩と打たずに△2七歩成▲同銀△2五飛と指した後の封じ手局面の▲5三桂成周辺の思わしくない変化云々。
 「その2」では、封じ手後から羽生九段が必死で踏みとどまるなかで、藤井王将の攻め急ぎもあり、局勢が混とんとし、羽生九段にも勝機が訪れたのではないかと思われたが、そこで受けに回って手が敗着となってしまった云々。

 第7図は△5六歩と攻める手が回って、俄然、白熱してきた局面。第10図は、ここで△5七銀~△7五角と王手飛車を掛ければ後手有望だったと言われていた。(実際は、先手に入玉含みに指されると、形勢不明ながら後手が勝つには大変そうというような感想戦だった。

【補足として……】

 図は△4五桂に2六の銀を▲3五銀と出た局面。
 △4五桂は、後手が金か銀を持てば先手玉が詰むという手(先手は金銀を渡す攻めができない)。さらに、△8四角の詰めろ龍取り(龍は紐付きだが)や△5七桂成▲同玉△8四角(王手龍取り・龍は紐付き)の狙いもある。
 ▲3五銀は、▲4二銀成△同銀▲同角成△同金▲4四桂△同歩▲4三銀△同玉▲4四銀△同玉▲4二龍△4三桂▲5五金△3四玉▲3五金△同桂▲4四龍△2五玉▲3五龍△1四玉▲2六桂までの詰めろ。
 ここで、羽生九段は△3三桂と跳ねた。この手は、上記の順の▲4二銀成△同銀▲同角成△同金▲4四桂△同歩▲4三銀の時、△2一玉と逃げる手を作っていて、詰めろを逃れている。さらに、5七で清算した時、△4五桂と跳ねだす手や4五の支えにもなっており、攻めに厚みを加えている。
 ただし、この△3三桂は好手なのだが、△2九飛が最善とされていた。感想戦で藤井竜王に指摘され、羽生九段は驚いていた。そして、「そっかあ~」と感心?。つまり、上記の▲4二銀成以下の詰みの最終手▲2六桂を△同飛車成りとできるので詰まず(後手はたくさん駒を手にしたので、先手玉は必至)、△2九飛で後手の勝ちとされた。
 実は、この▲4二銀成以下詰ます筋だが、▲4二銀成△同銀ではなく△4二同金と指すのが正しい手順だという。△4二同銀だと、▲同角成△同金▲4四桂△同歩▲4三銀△同玉▲4四銀△同玉▲4二龍△4三桂の時、▲5五金ではなく▲3五金として△5四玉に▲3五金が成立する。以下△同玉なら▲4三龍△4四合▲4六金で詰んでしまう。
 なので、△4二同銀でなく△4二同金と取るのが正解だという。△4二同金なら、▲同角成△同銀▲4四桂△同歩▲4三金(この時、先手の持ち駒は金金桂なので金を打つしかない)△同玉▲4四銀△同玉▲4二龍(ここで入手するのは銀)△4三桂▲3五金△5四玉に▲3五金としても△同玉▲4三龍△4四合の時、4六に打つのが銀となり詰まない。


 感想戦では「△2九飛で後手勝ち」とされたが、△2九飛には▲3九金という妙手があるという。この手に対して△3九同飛成は上記の▲2六桂に飛車が3九に移動しているので△同飛成とできないので、先手の勝ち。
 ▲3九金には△8四角が正着だが、▲6八玉がしぶとく、以下△6二角▲2九金で難解という。以下▽6九飛としても▲7七玉と上部に逃げられると△7九飛成と王手しながら手順に銀を取っても、はっきりしないらしい。(私は後手がいいように思うが、どうなのだろう?)




 この局面が運命を分けた。
 「△5七銀と打ち込むべきだった」と言われている。


 その少し前△6九飛が、図からの△5七銀▲同銀△同桂成▲同玉△8四角と王手飛車を掛ける寄せをみた好手と見られていた。
 羽生九段もそのつもりで飛車を打ったと見ていたが、羽生九段は《少し足りない》と思っていたと感想戦で明かしている。
 想定手順としては、△5七銀▲同銀△同桂成▲同玉△8四角に▲7五銀(好手)△4五桂(3三への玉の逃げ場を作った好手)▲6六銀△6二角▲同桂成△5七銀▲6五玉△7五歩▲7八銀△4九飛成▲5二金。羽生九段は先手玉を逃がす感触があり自信なかったようだ(先手に桂を持たれると、▲1五桂が厳しい。実際は難解でどちらが勝つか不明)。
 その他、上記手順で△5七銀▲6五玉を決めずに、単に△7五歩とする手など、感想戦でいろいろ調べていたが、互いに自信がないようだった。

 でも、図では△5七銀と打つべきだった……

 この将棋、封じ手局面では藤井王将の圧勝になりそうな雰囲気だったが、どちらが勝つのか分からないギリギリの将棋となった。
 △3七歩の変化や△5六歩以後の水面下での葉脈を探っていくような多岐に亘る複雑な変化……達人同士が指すと、これほど難解な将棋になるのかと、ほとほと“ぐったり”、否、感嘆した。


 七番勝負は4勝2敗で藤井王将の防衛となったが、羽生九段も手ごたえを感じたのではないだろうか?この七番勝負で、羽生九段の頭脳や勝負勘が刺激を受けたように思う。
 また、二人の勝負が観たい。
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