今回の脚本を手掛けたのは岩下悠子氏
複雑で繊細な怒りや怖れや嫌悪などの感情、さらに感情の揺らぎによる情念まで深く繊細に表現・展開するのに長けている
ただ、今回はそれが高じて、分かりにくく、共感し難い部分があった。
それを補助したのが、純朴だが人の気持ちを思いやれる亀山。それでも、やや強引さを感じた。
①スズメバチ云々
・スズメバチの巣の脅威のように《いつ襲われるか?いつ危害を加えられるか分からない》という恐怖←亀山の補助により解明・理解
・かつてDⅤ被害に遭った時、対応した警官は救ってくれなかった。その警官に対するささやかな復讐
……あまりに分かりにくい復讐だった
結局、その警官は自分の犯した失敗に気づかずじまい。あの警官には右京の叱責が必要だろう。
その警官への復讐のダメ押しとして、「被害者は生きている」という電話も、警官にスズメバチの恐怖を味合わせるためだったが、特命係がその被害を被った。
仮に、警官が被害者の安否確認でスズメバチの恐怖を感じても、DVやストーカーによる恐怖までは思い至らないだろう。実際にスズメバチに襲われれば、それはそれで復讐になるが。
②犯人・藤巻英子の動機が弱い
・現在のDⅤ被害者・村岡めぐみへの共感・同情からの殺害行為だったが、ヴェーラー賞を受賞を棒に振ることとの天秤に掛ける葛藤はなかったのか?
・授賞式などの犯人の晴れ舞台の場に、右京たちが現れるというのは『相棒』のひとつのパターンだが、受賞云々の設定は必要だったのか?
・殺人の罪を犯すより、めぐみと話をしようと思わなかったのか?
③ラストの方で、めぐみへの追及
「あの晩、あなたが本当は何をしようとしていたのか……それはあなた自身にしか、語ることはできません。
めぐみさん、もし、真実を話す気持ちがあるのなら、いつでも我々はお待ちしています」(右京)
「めぐみさん、僕、あなたのことを…あなたのことを…とても強い人だと思っています。
だから必ず前に進んでいける」(陣川)
右京はあくまで追及……殺意を持ち行動に移そうとしたということまで、自白させる必要があるのか?と思うが、それを言うことで前に進めるという考えなのか?
陣川の言葉も微妙……《あなたならいつか話してくれると信じている》なのか、《あなたなら話さなくても前に進める》という意味なのか?
めぐみの罪としては、殺意を持って相手に会おうとしていただけ?なので、殺人未遂にはならないと思うが。
考えられる罪状としては、《凶器を持ち歩いた》《救急車を呼ばなかった(救急義務未遂行)》《犯人隠匿》辺りか…
★今回は上記の亀山の感受性(スズメバチの恐怖など)とスズメバチの特性に関する知識に加えて、右京の洞察力と推理が光った
・被害者の本性に気づく……洞察力に加えて、陣川に対する深い理解
・擬態
ストーカー的気質のひとつのタイプが“拒絶型”《交際相手から別れを切り出されると、自分のすべてを否定されたと感じ、報復を企てずにはいられなくなる》
そのストーカーから逃れるために、めぐみは擬態した(擬態…自然界の生物が、天敵から身を守るため周りと同化したり、より強いモノに化ける)
……歪んだ自尊心の塊。その自尊心を傷つけずに、彼と離れるために擬態。擬態の手段として、万引きなどの微罪を繰り返し、周囲にデメリットをもたらす人物を装った。加藤の方から愛想をつかされようとした
☆陣川の手柄
めぐみを心配して電話したのが、めぐみが殺害を実行しようと公園に向かっている途中だった。結果的に殺人の罪を犯させなかった(代わりに、英子が実行してしまった)
陣川回の欠点
・陣川が妨害し、捜査が中断してしまうのでイライラする
・一応捜査側の陣川が非常に主観的な考え(思い込み)で動くのが、相棒ドラマにとっては不協和音(←あくまで、私の感覚)
【その他の疑問】
・密告?電話の逆探知は出来なかったのか?
・右京はスズメバチと“にらめっこ”?したが、追い払う効果があるのか?
第1話「無敵の人〜特命係VS公安…失踪に潜む罠」(初回拡大SP)
第2話「無敵の人~特命係VS公安…巨悪への反撃」(拡大SP)
【ストーリー】番組サイトより
トラブルメーカー=陣川、再び!
片想いの相手は重大事件の容疑者!?
特命係に配属された過去があり、薫(寺脇康文)とも面識がある、捜査二課の刑事・陣川 (原田龍二)が、特命係を訪ねてくる。また女性絡みの事件に巻き込まれ、右京(水谷豊)を頼ってきたのでは?と勘繰っていた矢先、風変わりな一報がもたらされる。
公園の雑木林で男性の遺体が見つかったものの、周囲にスズメバチが飛び交っているため、現場検証どころか、近づくことすらできないらしい。右京と薫が様子を見に行くと、駆除業者の手配に手間取り、捜査一課が現場で立ち往生していた。そこに、交番の巡査が駆けつけてくる。
犯人を名乗る人物から連絡があり、倒れている男性は「死んでいない」と告げられたという。緊急事態であることを察した右京と薫は、危険を顧みず倒れた男性に近づこうとするが…!?
陣川の想い人は、またもワケあり女性
雑木林で横たわる被害者との関係は!?
薫の持つ特別な力が、難事件を解決に導く!
ゲスト:原田龍二 生越千晴
脚本:岩下悠子
監督:権野元
複雑で繊細な怒りや怖れや嫌悪などの感情、さらに感情の揺らぎによる情念まで深く繊細に表現・展開するのに長けている
ただ、今回はそれが高じて、分かりにくく、共感し難い部分があった。
それを補助したのが、純朴だが人の気持ちを思いやれる亀山。それでも、やや強引さを感じた。
①スズメバチ云々
・スズメバチの巣の脅威のように《いつ襲われるか?いつ危害を加えられるか分からない》という恐怖←亀山の補助により解明・理解
・かつてDⅤ被害に遭った時、対応した警官は救ってくれなかった。その警官に対するささやかな復讐
……あまりに分かりにくい復讐だった
結局、その警官は自分の犯した失敗に気づかずじまい。あの警官には右京の叱責が必要だろう。
その警官への復讐のダメ押しとして、「被害者は生きている」という電話も、警官にスズメバチの恐怖を味合わせるためだったが、特命係がその被害を被った。
仮に、警官が被害者の安否確認でスズメバチの恐怖を感じても、DVやストーカーによる恐怖までは思い至らないだろう。実際にスズメバチに襲われれば、それはそれで復讐になるが。
②犯人・藤巻英子の動機が弱い
・現在のDⅤ被害者・村岡めぐみへの共感・同情からの殺害行為だったが、ヴェーラー賞を受賞を棒に振ることとの天秤に掛ける葛藤はなかったのか?
・授賞式などの犯人の晴れ舞台の場に、右京たちが現れるというのは『相棒』のひとつのパターンだが、受賞云々の設定は必要だったのか?
・殺人の罪を犯すより、めぐみと話をしようと思わなかったのか?
③ラストの方で、めぐみへの追及
「あの晩、あなたが本当は何をしようとしていたのか……それはあなた自身にしか、語ることはできません。
めぐみさん、もし、真実を話す気持ちがあるのなら、いつでも我々はお待ちしています」(右京)
「めぐみさん、僕、あなたのことを…あなたのことを…とても強い人だと思っています。
だから必ず前に進んでいける」(陣川)
右京はあくまで追及……殺意を持ち行動に移そうとしたということまで、自白させる必要があるのか?と思うが、それを言うことで前に進めるという考えなのか?
陣川の言葉も微妙……《あなたならいつか話してくれると信じている》なのか、《あなたなら話さなくても前に進める》という意味なのか?
めぐみの罪としては、殺意を持って相手に会おうとしていただけ?なので、殺人未遂にはならないと思うが。
考えられる罪状としては、《凶器を持ち歩いた》《救急車を呼ばなかった(救急義務未遂行)》《犯人隠匿》辺りか…
★今回は上記の亀山の感受性(スズメバチの恐怖など)とスズメバチの特性に関する知識に加えて、右京の洞察力と推理が光った
・被害者の本性に気づく……洞察力に加えて、陣川に対する深い理解
・擬態
ストーカー的気質のひとつのタイプが“拒絶型”《交際相手から別れを切り出されると、自分のすべてを否定されたと感じ、報復を企てずにはいられなくなる》
そのストーカーから逃れるために、めぐみは擬態した(擬態…自然界の生物が、天敵から身を守るため周りと同化したり、より強いモノに化ける)
……歪んだ自尊心の塊。その自尊心を傷つけずに、彼と離れるために擬態。擬態の手段として、万引きなどの微罪を繰り返し、周囲にデメリットをもたらす人物を装った。加藤の方から愛想をつかされようとした
☆陣川の手柄
めぐみを心配して電話したのが、めぐみが殺害を実行しようと公園に向かっている途中だった。結果的に殺人の罪を犯させなかった(代わりに、英子が実行してしまった)
陣川回の欠点
・陣川が妨害し、捜査が中断してしまうのでイライラする
・一応捜査側の陣川が非常に主観的な考え(思い込み)で動くのが、相棒ドラマにとっては不協和音(←あくまで、私の感覚)
【その他の疑問】
・密告?電話の逆探知は出来なかったのか?
・右京はスズメバチと“にらめっこ”?したが、追い払う効果があるのか?
第1話「無敵の人〜特命係VS公安…失踪に潜む罠」(初回拡大SP)
第2話「無敵の人~特命係VS公安…巨悪への反撃」(拡大SP)
【ストーリー】番組サイトより
トラブルメーカー=陣川、再び!
片想いの相手は重大事件の容疑者!?
特命係に配属された過去があり、薫(寺脇康文)とも面識がある、捜査二課の刑事・陣川 (原田龍二)が、特命係を訪ねてくる。また女性絡みの事件に巻き込まれ、右京(水谷豊)を頼ってきたのでは?と勘繰っていた矢先、風変わりな一報がもたらされる。
公園の雑木林で男性の遺体が見つかったものの、周囲にスズメバチが飛び交っているため、現場検証どころか、近づくことすらできないらしい。右京と薫が様子を見に行くと、駆除業者の手配に手間取り、捜査一課が現場で立ち往生していた。そこに、交番の巡査が駆けつけてくる。
犯人を名乗る人物から連絡があり、倒れている男性は「死んでいない」と告げられたという。緊急事態であることを察した右京と薫は、危険を顧みず倒れた男性に近づこうとするが…!?
陣川の想い人は、またもワケあり女性
雑木林で横たわる被害者との関係は!?
薫の持つ特別な力が、難事件を解決に導く!
ゲスト:原田龍二 生越千晴
脚本:岩下悠子
監督:権野元
毎回のことながら、見事なレビューですね。
英子は、登場した瞬間からいかにもという雰囲気を漂わせていたので、犯人と知ってやっぱりなという感じでした。
ただ、英子も加藤とつながりがあったというのは、いささか唐突感があったので、前半でもう少し伏線があったほうがよかったと思いました。
本文中、一か所だけ指摘させていただきます。「めぐみさん、僕、あなたのことを…あなたのことを…とても強い人だと思っています。だから必ず前に進んでいける」は亀山ではなく陣川のセリフですね。
あっ!あれは亀山ではなく陣川君でしたね。
実は、今回はほぼリアルタイムで見て(追っかけ再生です)、気になるポイントや台詞を文章に起こしていたのです。
で、翌日、レビューを描こうと思ったら、仕事が忙しくなったのと(連休を控える週は忙しくなります)、時事問題が多く、さらに将棋もいろいろと……
そんな訳で、メモを見ながら記事を書いていたのですが、時間が経過したため、亀山の台詞だと勘違いしてしまいました。(亀山の台詞でも違和感ないでしょう)
岩下氏の脚本では「アゲハ蝶」、「犯人はスズキ」「殺人シネマ」(←これが一番好き)、「正義の翼」が好きです。