少年の行方不明、謎の家出少女、強盗殺人容疑者の逃走、不審な放置状態の不在住宅、ひき逃げされた奇妙な遺体、やたら豪華な誕生パーティー………と、無関係な謎が徐々につながっていくという、『相棒』の一つのパターンで、観ていて面白かった。
場面や時間がバラバラに見せられるので、マルチサイトのアドベンチャーゲームのようなワクワク感、ジグゾーパズルのピースが嵌められていって全貌が見えてくる緩やかな爽快感があった。
しかし、全貌がわかり、順序立てて事象を視ると、少年の病気以外は平易なストーリーだったように思えてくる。
さらに、謎解きパズル性を高めたため、細かな点で不自然さが生じていた。
特に、右京を事件に絡めるための無理が目立った。
謎の家出少女は少年の姉で、すでに病気で亡くなっていたようだ。その姉が少年の危機を右京に救ってもらうため、右京の前に現れたのだった。
脚本家の立場としては、それによって右京をさり気なく事件に絡ませたかったのだろうが、霊という考えようによってはオールマイティな存在を登場させるのはどうなのだろう。
現実的で論理的な右京、しかし、それ故、その逆の存在を求めたいのであろうか、右京は日ごろから霊魂や幽霊などの存在を信じたいと思っており、切望してやまないという態度を見せているので、幽霊が登場するのもありなのかもしれない。
しかし、今回、あれだけ幽霊と接近遭遇したが、当の右京は全くそれを認知しなかった。となると、この脚本家は右京の幽霊切望という設定に関しては深く考えず、右京を事件に絡ませるため幽霊少女を登場させただけなのであろう。
そもそも、弟の危機を救うために出現したのなら、直接はっきりと助けを求める方がはるかに確実である。
強盗殺人容疑者はどうしようもない奴という設定。嘘をつかれたということに激情し、少年の前で老女(と呼ぶには若々しいが)を絞殺そうとする。また、少年に老女と少年の死体を埋める穴を掘らせる。また、裕福で幸せそうな少年を妬み、そのプレゼントを無茶苦茶に踏みつけるなど、非道ぶりを発揮させる。そのとんでもない奴が、少年の背負っていた病気や健気さを知り改心し、少年を救おうとするというしみじみストーリーというのも、今回の根ありだったと考えられる。
しかし、老女の首を絞めたのは分かるとして、発覚を恐れ、死体(死んでいなかったが)を山中に埋めようとするのは不自然。すでに、ノーマーク状態ならこの行動も意味があるが、追跡の網の目を絞られている状況では無意味のように思える。却って足がつくと言える。
少年に靴を履かせず連れ出すというのは、逃亡させにくいという面もあるが、これも右京の推理を導くためなのだろうか。それに、小学生に穴を掘らせるのは効率が悪すぎだろう。
ひき逃げ事件の遺留品の手製のクリームを、米沢さんが享に舐めさせたのは、後にバラバラの事象をその味によって、享が結びつけるためのものだが、やはり不自然。
最後の心肺停止も盛り上げ過ぎ。どのくらい停止していたのだろう?それによる後遺症が心配。盛り上げるためと、少年の誕生日としての重みをつけるためなのかもしれないが、都合がよすぎる展開で、現実味が薄れた。
面白ければいいという考え方もあるが、そういう粗さが許されないのが、『相棒』のつらいところである。
今回一番面白かったのが、誕生日をひとりで過ごすのが寂しい甲斐峯秋(石坂浩二)警察庁次長と、そういう心情に疎い右京、それをズバズバ指摘する少女らの会話だったかもしれない。
【ストーリー】番組サイトより
右京(水谷豊)が「花の里」へと向かうと、店の前で自らを「家出少女」と名乗る小学校低学年くらいの女の子と出会う。右京は享を呼び出し少女を自宅まで送ることに。少女は自宅マンション近くで降りると、いつの間にかオートロックで施錠されているマンションのエントランスの中へ。
苦笑しながらマンションを出てふと見ると、右京はマンションの目の前にある不審な一軒家を見つける。近隣の聞き込みで江美子(左時枝)という卓球のコーチをしているしっかり者の老婆が一人で住んでいることがわかるが、しっかり者の老婆が鍵もかけずに外出するだろうか。
そのころ、ある夫婦から12歳の誕生日を迎える息子の隼人(加藤清史郎)が家に戻らない、と交番に通報が入る。夫は財務省に勤務する官僚・鷲尾武弘(古川悦史)。12歳の誕生日にしては、派手なパーティーの準備がされていた。武弘・美鈴(古村比呂)夫妻から話を聞いた巡査たちは、12歳にもなってこんなに派手な誕生祝いをしてもらうような家庭なのだから、過保護が災いしたのでは、と陰口をたたく。
一方、伊丹(川原和久)ら捜査一課は、強盗殺人容疑で指名手配されている大場(榊英雄)をかくまっていた恋人・咲子(中村真知子)の自宅へ。が、大場は咲子に追い出され、すでにどこかへと逃げた後だった。やけになって他人を巻き込むのではないか、と心配する咲子だったが…。
老婆・江美子の失踪と、少年・隼人の行方不明、そして強盗殺人容疑者の逃走…。一見、無関係な3つの事件の関連とは? その不可思議な結末とは!?
ゲスト:加藤清史郎 左時枝 榊英雄
脚本:古沢良太
監督:橋本一
場面や時間がバラバラに見せられるので、マルチサイトのアドベンチャーゲームのようなワクワク感、ジグゾーパズルのピースが嵌められていって全貌が見えてくる緩やかな爽快感があった。
しかし、全貌がわかり、順序立てて事象を視ると、少年の病気以外は平易なストーリーだったように思えてくる。
さらに、謎解きパズル性を高めたため、細かな点で不自然さが生じていた。
特に、右京を事件に絡めるための無理が目立った。
謎の家出少女は少年の姉で、すでに病気で亡くなっていたようだ。その姉が少年の危機を右京に救ってもらうため、右京の前に現れたのだった。
脚本家の立場としては、それによって右京をさり気なく事件に絡ませたかったのだろうが、霊という考えようによってはオールマイティな存在を登場させるのはどうなのだろう。
現実的で論理的な右京、しかし、それ故、その逆の存在を求めたいのであろうか、右京は日ごろから霊魂や幽霊などの存在を信じたいと思っており、切望してやまないという態度を見せているので、幽霊が登場するのもありなのかもしれない。
しかし、今回、あれだけ幽霊と接近遭遇したが、当の右京は全くそれを認知しなかった。となると、この脚本家は右京の幽霊切望という設定に関しては深く考えず、右京を事件に絡ませるため幽霊少女を登場させただけなのであろう。
そもそも、弟の危機を救うために出現したのなら、直接はっきりと助けを求める方がはるかに確実である。
強盗殺人容疑者はどうしようもない奴という設定。嘘をつかれたということに激情し、少年の前で老女(と呼ぶには若々しいが)を絞殺そうとする。また、少年に老女と少年の死体を埋める穴を掘らせる。また、裕福で幸せそうな少年を妬み、そのプレゼントを無茶苦茶に踏みつけるなど、非道ぶりを発揮させる。そのとんでもない奴が、少年の背負っていた病気や健気さを知り改心し、少年を救おうとするというしみじみストーリーというのも、今回の根ありだったと考えられる。
しかし、老女の首を絞めたのは分かるとして、発覚を恐れ、死体(死んでいなかったが)を山中に埋めようとするのは不自然。すでに、ノーマーク状態ならこの行動も意味があるが、追跡の網の目を絞られている状況では無意味のように思える。却って足がつくと言える。
少年に靴を履かせず連れ出すというのは、逃亡させにくいという面もあるが、これも右京の推理を導くためなのだろうか。それに、小学生に穴を掘らせるのは効率が悪すぎだろう。
ひき逃げ事件の遺留品の手製のクリームを、米沢さんが享に舐めさせたのは、後にバラバラの事象をその味によって、享が結びつけるためのものだが、やはり不自然。
最後の心肺停止も盛り上げ過ぎ。どのくらい停止していたのだろう?それによる後遺症が心配。盛り上げるためと、少年の誕生日としての重みをつけるためなのかもしれないが、都合がよすぎる展開で、現実味が薄れた。
面白ければいいという考え方もあるが、そういう粗さが許されないのが、『相棒』のつらいところである。
今回一番面白かったのが、誕生日をひとりで過ごすのが寂しい甲斐峯秋(石坂浩二)警察庁次長と、そういう心情に疎い右京、それをズバズバ指摘する少女らの会話だったかもしれない。
【ストーリー】番組サイトより
右京(水谷豊)が「花の里」へと向かうと、店の前で自らを「家出少女」と名乗る小学校低学年くらいの女の子と出会う。右京は享を呼び出し少女を自宅まで送ることに。少女は自宅マンション近くで降りると、いつの間にかオートロックで施錠されているマンションのエントランスの中へ。
苦笑しながらマンションを出てふと見ると、右京はマンションの目の前にある不審な一軒家を見つける。近隣の聞き込みで江美子(左時枝)という卓球のコーチをしているしっかり者の老婆が一人で住んでいることがわかるが、しっかり者の老婆が鍵もかけずに外出するだろうか。
そのころ、ある夫婦から12歳の誕生日を迎える息子の隼人(加藤清史郎)が家に戻らない、と交番に通報が入る。夫は財務省に勤務する官僚・鷲尾武弘(古川悦史)。12歳の誕生日にしては、派手なパーティーの準備がされていた。武弘・美鈴(古村比呂)夫妻から話を聞いた巡査たちは、12歳にもなってこんなに派手な誕生祝いをしてもらうような家庭なのだから、過保護が災いしたのでは、と陰口をたたく。
一方、伊丹(川原和久)ら捜査一課は、強盗殺人容疑で指名手配されている大場(榊英雄)をかくまっていた恋人・咲子(中村真知子)の自宅へ。が、大場は咲子に追い出され、すでにどこかへと逃げた後だった。やけになって他人を巻き込むのではないか、と心配する咲子だったが…。
老婆・江美子の失踪と、少年・隼人の行方不明、そして強盗殺人容疑者の逃走…。一見、無関係な3つの事件の関連とは? その不可思議な結末とは!?
ゲスト:加藤清史郎 左時枝 榊英雄
脚本:古沢良太
監督:橋本一
話的には意外で楽しめましたが、突っ込みどころが多かったですね。
ひたすら暗い話とかもあるので、ドラマとしては楽しめました。
しかし清史郎君の弟まで出てくるとは!
http://talent.yahoo.co.jp/pf/detail/pp374497
>話的には意外で楽しめましたが、突っ込みどころが多かったですね。
>ひたすら暗い話とかもあるので、ドラマとしては楽しめました。
はい、楽しめました。ただ、出来れば、突っ込みどころは少なくしてほしいです。今シリーズは、どうしてしまったのでしょうか?
>清史郎君の弟まで出てくるとは!
似ていますが、プロフィールの写真は兄より凛々しいですね。
似てるなぁって思っていたので(笑)
今回の相棒も
英さんがいうようにいろんな伏せんが敷いてあってそれがひとつに結びついて行く過去と現在が行ったり来たりして面白い作りだったとは思います。
ただ
今回の相棒シリーズはやっぱり今までより 奥がないなぁて思います。
ちょっとこじつけや無理が多すぎかな。
あの少女が導いてくれなければあの不審な家を見つけられなかったという事だしあの少女が幽霊?だとしたら何でもありでしょって感じかなぁ(笑)
もうすぐ最終回だし ラストは納得のいくものが見れたらいいなぁって思っています。
>今回の相棒シリーズはやっぱり今までより 奥がないなぁて思います。
>ちょっとこじつけや無理が多すぎかな。
ほんと、そうです。
あと、新コンビというのに、ほとんど衝突、反発はなく、「相棒」というより「従者」「助手」という感じで、この点も大きな不満です。
>あの少女が導いてくれなければあの不審な家を見つけられなかったという事だしあの少女が幽霊?だとしたら何でもありでしょって感じかなぁ(笑)
そうですね。幽霊を認めてしまったら何でもアリで、物理的に論理を組み立てていく『相棒』の土台が崩れてしまいます。
そもそも、今回の場合、初めから危機を訴え、キャンプ場に連れて行けば、5分で終了でした。幽霊を出すなら、せめて、おばあちゃん(左時枝さん)の生霊で、危機を訴えてきたのなら、あの不審住宅の地点に導くのも納得できたのですが。
最終回も、映画つながりで、嫌な予感がします。
今回は、少年の家族の方にフォーカスもっていって完全に失敗しましたね。
犯人の方にすべきでした。
あんなにはっきりと意思疎通できる幽霊を出してしまったら、正直推理なんて馬鹿らしくてしようと思わなくなります。今回は犯行を推理させるつくりになってはいませんでしたが、あの少女が幽霊だと察した時点で「なんてもありの回」ですから。
普通に犯人だけをメインにして、「覚えていてくれた」ことで踏みとどまる話にすればよかったと思います。在り来りと言えば在り来りですが、交通事故で殺さなくても良かったでしょう。事故で意識不明で大筋変わりませんし。
少年がどの時点で心停止したか判然としませんが、あの経緯だと蘇生するのは無理がありすぎます。
脳の血流が止まれば、通常二分程で蘇生しても障害が発生、五分で植物状態、十分になれば脳死です。それ以上はほぼ蘇生の可能性はなくなります。
結構な値段のするAEDがあのような場所にあるのもかなり無理があるかと。
>ひき逃げ事件の遺留品の手製のクリームを、米沢さんが享に舐めさせたのは、後にバラバラの事象をその味によって、享が結びつけるためのものだが、やはり不自然。
あれは酷かったですね。せめてもブラック・ユーモアとして、成分分析の結果くらいは言わせた方がいいでしょう。それでもあり得ないことですが、危険な薬品を小瓶に移して持ち運ぶことくらいは犯罪に関係なくても考えられますから。
>あんなにはっきりと意思疎通できる幽霊を出してしまったら、正直推理なんて馬鹿らしくてしようと思わなくなります。
ですよね。「なんでもあり」になってしまっています。単純に、「おもしろかった」と割り切ればいいのかもしれませんが、『相棒』としては許されない展開です。
>少年がどの時点で心停止したか判然としませんが、あの経緯だと蘇生するのは無理がありすぎます。
脳の血流が止まれば、通常二分程で蘇生しても障害が発生、五分で植物状態、十分になれば脳死です。それ以上はほぼ蘇生の可能性はなくなります。
そう、ここも相当変です。話を感動的にするための演出でしょうけれど、私も、いつ心肺停止したのか気になって仕方ありませんでした。
逃亡犯を死なせて鑑識に回したこと、遺留品を舐めさせたこと、幽霊、トイレの蓋(きちっとした家庭なので、蓋を占めないとは考えにくい)などなど、すべて、細切れの演出をしたいための強引さとしか思えません。