「その1」、「その2」、「その3」、「その4」、「その5」の続きです。
第4戦 対阪口悟五段戦 PART2
先手・浦野八段が▲5五歩から銀挟みを見せたのに対し、後手・阪口五段が△5五歩(第17図)と先着し6五の銀の制限を緩めようとした。しかし、△5五歩自体がタダ。この歩は“毒饅頭”なのか……
△5五歩▲同飛に、△9六歩▲同歩△同香▲9七歩と香を犠牲に△5六歩と打って飛車の捕獲を計ったのが第18図。
次に△5四銀上で飛車が取ることができるが、無理をしている感じが強い。図から▲9六歩と香を取り△5四銀上▲同飛△同銀と普通に応じても、「銀香」対「飛車」の二枚換えで駒得で先手が充分であろう。
第17図から、浦野八段は▲2四歩。飛車の脱出を図った。
△2四同歩なら1五に逃げる余地が生じる。例えば、▲9六歩と香を取っておき、△5四銀上▲1五飛と追われて飛車が危なそうでも、△2五歩(角で飛車取り)とされても▲2四歩の切り返しが利く。△2四同角なら▲2五飛で虎口を脱出できる(△7九角成は▲2二飛成が王手で先手勝勢)。また、△2四同飛なら飛車取りが消えるので▲6六歩と銀を取る余裕を得られる。
結局、▲2四歩に対し、阪口五段は△5四銀上▲2五飛△2四歩▲2八飛に△5七歩成として、と金を後手の主張とした。
図から▲9六歩と香を取り、香得が先手の主張。どちらの主張が大きいかに加え、互いの玉型や大駒などの働きが形勢の要素となるが、玉形が変則的なので、判断が難しい。後手は香車がいない9筋や玉頭が不安要素だが、それが響かない展開(中央や左辺に逃げ出す)なれば、後手有望。先手は持駒の香車を8筋に打って後手玉の弱点を突く。さらに、8八の角の活用がポイントである。“どちらかを持って指せ”と言われたら、先手と答えたい。
ところで、第17図の△5五歩に対し▲同飛と取った局面だが、
阪口五段は△9六歩から香を犠牲に1歩を得て△5六歩を実現させたが、△2四歩として歩の入手を図った方が良かったように思う。
これには▲5八飛と飛車を安泰にすると同時に▲5五歩の銀挟みを狙うのが最善のようだが、渋く△5四銀引と辛抱し2筋の優位を主張点としたかった(微差ではあるが、これなら後手を持ちたい)。
実戦は、
第19図以下、▲9六歩△5六銀▲7八銀△2五歩▲1六歩△4五歩▲1七桂△5五角と進む。
後手は飛角を働かせようとした手順だが、△5五角は次の▲6六金を軽視した失着だった。さらに、その後も急な流れを制動することができず、△3七角成▲5六金△同と▲2二角成△2八馬▲8六香と激流に飲まれていった。
▲8六香を見て、阪口五段、投了。
次に▲9四銀と打たれ8三の地点を攻められる手が厳しく、守っても先手から飛車打ちを絡められると受けきれそうにないようだ。
投了に至る手順中、△5六とではなく△5五歩と流れにアクセントをつけるような手が何か所かあったが、第17図で▲2四歩と突かれた手に対する△5四銀上に13分考慮しただけで、その後は計7分しか費やしていない。飛車に逃げられてがっかりしたのか、形勢を過信していたのか……
終局時刻は20時08分。▲浦野4時間32分、△阪口3時間18分。
「その7」に続く
第4戦 対阪口悟五段戦 PART2
先手・浦野八段が▲5五歩から銀挟みを見せたのに対し、後手・阪口五段が△5五歩(第17図)と先着し6五の銀の制限を緩めようとした。しかし、△5五歩自体がタダ。この歩は“毒饅頭”なのか……
△5五歩▲同飛に、△9六歩▲同歩△同香▲9七歩と香を犠牲に△5六歩と打って飛車の捕獲を計ったのが第18図。
次に△5四銀上で飛車が取ることができるが、無理をしている感じが強い。図から▲9六歩と香を取り△5四銀上▲同飛△同銀と普通に応じても、「銀香」対「飛車」の二枚換えで駒得で先手が充分であろう。
第17図から、浦野八段は▲2四歩。飛車の脱出を図った。
△2四同歩なら1五に逃げる余地が生じる。例えば、▲9六歩と香を取っておき、△5四銀上▲1五飛と追われて飛車が危なそうでも、△2五歩(角で飛車取り)とされても▲2四歩の切り返しが利く。△2四同角なら▲2五飛で虎口を脱出できる(△7九角成は▲2二飛成が王手で先手勝勢)。また、△2四同飛なら飛車取りが消えるので▲6六歩と銀を取る余裕を得られる。
結局、▲2四歩に対し、阪口五段は△5四銀上▲2五飛△2四歩▲2八飛に△5七歩成として、と金を後手の主張とした。
図から▲9六歩と香を取り、香得が先手の主張。どちらの主張が大きいかに加え、互いの玉型や大駒などの働きが形勢の要素となるが、玉形が変則的なので、判断が難しい。後手は香車がいない9筋や玉頭が不安要素だが、それが響かない展開(中央や左辺に逃げ出す)なれば、後手有望。先手は持駒の香車を8筋に打って後手玉の弱点を突く。さらに、8八の角の活用がポイントである。“どちらかを持って指せ”と言われたら、先手と答えたい。
ところで、第17図の△5五歩に対し▲同飛と取った局面だが、
阪口五段は△9六歩から香を犠牲に1歩を得て△5六歩を実現させたが、△2四歩として歩の入手を図った方が良かったように思う。
これには▲5八飛と飛車を安泰にすると同時に▲5五歩の銀挟みを狙うのが最善のようだが、渋く△5四銀引と辛抱し2筋の優位を主張点としたかった(微差ではあるが、これなら後手を持ちたい)。
実戦は、
第19図以下、▲9六歩△5六銀▲7八銀△2五歩▲1六歩△4五歩▲1七桂△5五角と進む。
後手は飛角を働かせようとした手順だが、△5五角は次の▲6六金を軽視した失着だった。さらに、その後も急な流れを制動することができず、△3七角成▲5六金△同と▲2二角成△2八馬▲8六香と激流に飲まれていった。
▲8六香を見て、阪口五段、投了。
次に▲9四銀と打たれ8三の地点を攻められる手が厳しく、守っても先手から飛車打ちを絡められると受けきれそうにないようだ。
投了に至る手順中、△5六とではなく△5五歩と流れにアクセントをつけるような手が何か所かあったが、第17図で▲2四歩と突かれた手に対する△5四銀上に13分考慮しただけで、その後は計7分しか費やしていない。飛車に逃げられてがっかりしたのか、形勢を過信していたのか……
終局時刻は20時08分。▲浦野4時間32分、△阪口3時間18分。
「その7」に続く
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