英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

NHK杯将棋トーナメント 松尾七段×丸山九段戦 その1

2014-11-19 20:37:57 | 将棋
 松尾七段の不出来な将棋だった。
 序盤の駆け引きと、パズル的な局面があり、書き留めるという意味はあるが、実は記事の後半部分がこの記事の趣旨である。この部分だけを書けばいいのだが、それだときつい記事になってしまうので、将棋のことを書いて和らげるという小細工である。

 松尾七段は丸山九段に3勝9敗(直近は1勝4敗)。丸山九段の強さを考えれば妥当と言えるかもしれないが、松尾七段も実力からすると、若干、星が偏っている気がする。
 解説の高橋九段の弁を借りると
「この二人の対戦では、(勝敗が)ちょっと離れているなという印象があります。実力が拮抗していますので。
 最近の対局では、ほとんど角換わりなんです。しかも、丸山九段の後手番。
 今日も(丸山九段の後手なので)、そんなふうになるかと思ったんですが。
 (一手損角換わりの)▲7六歩△3四歩▲2六歩に△8八角成と来るので、ここんとこ、松尾九段痛い目に遭居続けているんですよね。
 なので、今回は気分を変えてという所があったかなあと」

 そういう意図があったのか、最近はやりの指し方を試してみたかったかは分からないが、初手▲5六歩。
 先手番でのゴキゲン中飛車志向の手だが、この手に対しては飛車を振るのが得とされている。
 「相振り飛車戦においては中飛車は少し損である」というのが定説だからだ。
 丸山九段は居飛車党だが、躊躇なく飛車を振った。



 これに対し、先手は5筋に飛車を振るのは振るのだが、玉を左に囲い、居飛車対振り飛車模様の将棋に持ち込み、さらに穴熊に囲うのが“面白い”指し方とみられている。これで有利というわけではないが、飛車の位置の違いはあるとは言え、居飛車穴熊の変形と考えれば、自分の主張を通したとも考えられるからだ。
 案の定、松尾七段は玉を左に移動させた。対する丸山九段の指し手もよどみがない。研究充分なのかもしれない。


 局面は、穴熊に囲われる前に、3筋の交換に動く。2六、4六に歩を突いてあるので、何となく先手陣に隙がありそう。両方の歩を守るには▲3七銀しかないが、この形は2七と4七に空間が生じるのでやや不本意な銀の位置である。感覚的には▲4七に上がりたい。
 解説の高橋九段も「2七、4七の空間が気になるのと、3七の進路となるべき2六と4六に歩があるのも不満。本来は4七に銀が上がりたいが、△2六飛と歩を取られてしまう」(言葉の前後はありますが、こういう旨の解説をしていました)と。
 しかし、私は意地でも▲4七銀と上がりたい。△2六飛と歩を取られても、▲2八歩と謝っておけば、後手の飛車は中段の歩越しなので窮屈なので、うまくいけば飛車をいじめて有利に持って行ける(失敗すると無残になりそう)
 感想戦では、丸山九段もこの順を危惧していた。
 ▲4七銀△2六飛▲2八歩(変化図1)


 確かに難しい。
 丸山九段はこの局面になって考えてみて、まずければ△2五飛▲3六銀△2五飛▲3六銀…の千日手に持ち込むつもりだったと。
 ただ、△2五飛には▲3八飛もあるかもしれない。これに対し△3七歩なら▲5八飛と戻しておいて、△3五飛に▲3六歩と治めておき、▲3七桂と歩を取り除く。
 成否はともかく、考える価値はある変化だ。しかし、松尾七段は一瞬も考えなかったそうで、この局面は意図したモノではないのが分かる。さらに、予定外の進行だったとしても、歩を取られるマイナスはあるが本来指したいはずの▲4七銀が浮かばなかったというのは、この日は調子が良くなかったと言わざるを得ない。

 第2図で▲3七銀と上がり、△3四飛▲3六歩と松尾七段は局面を治めようとしたが、丸山九段は△5四歩▲同歩△7七角成▲同桂△4七角と追及を緩めない。


 仕方ない▲2八飛△5四飛▲2二角△3三桂▲1一角成△5七歩▲5九歩△5六角成と丸山九段は中央を制圧。その代り、先手の松尾七段は香得でバランスを取る。
 途中の▲5九歩では▲5九香と打った方が反発力もあった。底歩は固いが、5筋に歩が立たないのは攻撃の幅が狭くなる。他の筋はともかく、早い段階で5筋に底歩を打ってしまうと、後々、苦労することが多い。

 さて、第4図以下、▲6八銀△7四歩▲6六歩△2三馬と進む。


 第5図の△2三馬は、▲6七銀と上がられた時に予め避けておき、馬筋を5六~7八に睨みを利かしておき、先手の桂頭を攻める狙いだと思われたが……【続く】
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

科捜研の女14 第5話「国会議員と警察犬」

2014-11-18 22:07:42 | ドラマ・映画
「科捜研と現場の刑事が慣れあうことの危険性」がテーマであったが、
「マリコと土門に無理やり冤罪を作らせてドラマを盛り上げ、
さらに、双子で視聴者の裏をかき、警察犬も活躍させたかった」

という、脚本家の欲張りが目についた。



現場に残された証拠候補
・凶器は刃渡り9センチのナイフの類……これ以上絞り込むのは困難
・下足痕から靴の製品を特定できた……広く流通していて、犯人にたどり着けそうもない
・下足痕に料理に使われそうもない山椒の実が残されていた……場所は特定できない
・血で付着した手袋痕が残されていた……手袋の種類は特定できない
・現場から毛髪が採取された……DNAを調べたが、前歴のあるDNAとは一致しなかった

この段階で、犯人に到達するのは困難に思えた
しかし、下記の①②により土門たちが目をつけた長谷部議員に関して鑑定を進めると 

長谷部議員への容疑の理由・証拠
①長谷部議員は被害者の谷口と同じゼネコンに勤めていた
②被害者はゼネコン談合発覚が原因で左遷されており、その談合を告発したのが長谷部だった
③現場に残された下足痕と長谷部の靴が一致した
④山椒の実は、犯行時刻にいたとされる料亭の庭のものだった
⑤長谷部議員の靴に付着していた微物の中に、現場の下足痕からでた微物と合致するものがあった


長谷部議員が犯人ではないのでは?という要素
・現場には長谷部議員の毛髪はなかった←たまたま、毛髪が落ちなかっただけなのでは?
・被害者から採取された指紋に、長谷部議員のものはなかった←手袋をしていた

①②の状況証拠の上、③~⑤の下足痕、山椒の実、靴の微物が次々に現場のものと一致したので、土門は長谷部議員の逮捕状を取った。


藤倉刑事部長の懸念
・指紋を残さないように手袋をする用心深い犯人が、下足痕を残すものなのか?

土門の反論
・そんな犯人は、これまで山ほどいた

臭気選別……長谷部議員の匂いと現場の下足痕の匂いが一致するかを検証
警察犬・ジンクスと鑑識課の警察犬担当・香坂玲子(伊藤かずえ)、登場!
 結果……下足痕の匂いと長谷部議員の匂いは一致しなかった

【疑問】下足痕の匂いというのは、主に靴底の匂いと思われ、それを体臭(掌の匂い)と一致するかを調べるというのは、正しいやり方ではないと思われるが……

藤倉刑事部長の結論(推定)
 第三者が長谷部議員の靴を履いて犯行に及んだ

マリコと土門の反省会
土門 「犯人の下足痕と付着物、どちらの鑑定も間違っていなかった」
マリコ「それでも、私たちは冤罪を作りそうになった」
土門 「本当に冤罪なのか……長谷部議員は本当にシロなのか?」
 立ち去る土門を黙って見送るマリコ。


【ここまでの感想】
 初期の鑑定ではいつも通りだが、いつもと違うのは犯人に結び付くものをほとんど得られなかったということ。
 それが、容疑者が浮かんだところで一気に進み、長谷部議員の容疑が強まる。
 ③④⑤と次々、長谷部議員が犯人と示すような鑑定が出て、土門は逮捕状を請求した。
 正当な鑑定と推論で逮捕状の流れと思えたが、せっかちな土門ではあるが、≪逮捕状は早いのでは?≫と感じた。
 ③④⑤の3つの鑑定と言っても、結局、下足痕に関する一点のみの観点。
 せっかちではあるが客観的に判断する土門にしては、性急過ぎる逮捕状の請求であった。普段なら、被害者の身辺に怪しいやつはいないか、被害者の当日の足取りなどを調べるような気がする。また、少しでも疑問があれば疑い調べるまり子も慎重さに掛けていた。
 いつもとは違い、土門とマリコは、予断を持った捜査、予断を持った鑑定をさせ、藤倉の危惧する『科捜研と現場の刑事が慣れあう弊害』を無理やり起こさせたように思える。

 まあ、藤倉の言うように、刑事と科捜研がそれぞれの立場から別方向の視点で事件を見つめるのが正しいと思う。まり子なんてやっていることは、「科学捜査をする刑事」そのものであり、土門と一心同体で同一目線である。




ここで再びジンクスの出番
足跡追及……犯行現場から、犯人の匂いを辿る
 結果……ジンクスは料亭の下足箱にたどり着き、それから、料亭を出て内村という家に行きついた。

【再び、疑問】
靴を履きかえたのに、それでも追える。警察犬、優秀!



 その家の当主の内村の遺体を発見。犯人の匂いは内村と判定された。
 ジンクスが血痕の付いたナイフと手袋を発見。


 鑑定で、血痕は最初の被害者・谷口のものと判明。
 手袋の内側から内村の指紋が検出され、谷口殺害は内村と断定。
 さらに、谷口がつかんでいた毛髪のDNAは長谷部議員のものと一致

 内村を殺害したのは長谷部なのか?……

 長谷部の逮捕状を取ろうとする土門と、これまでの経緯から迂闊な動きはできないという藤倉が激突。
 ふたりの「正攻法論」は面倒なので省略。
 結局、
「定跡通り、警察犬に被疑者の下足痕を追わせる。
 おまえらが崩した正攻法を、もう一度正攻法に戻す!
 それでもまだ、長谷部議員にたどり着くなら、そこから突破口が見つかるかもしれない」
藤倉部長は、警察犬が好きなのね。

三度(みたび)、ジンクス登場!
 ……途中で匂いが途切れていた。タクシーなどの車に乗った可能性が考えられる。
 防犯カメラからタクシーを突き止め、客を降ろした場所まで到達。
 再び、匂いを追跡。…ホテルに到着。
 行きついた客室から出てきたのは……長谷部議員ではなく、双子の兄妹だった。


 犯人は長谷部議員のことを思って動き、内村に襲われ、過剰防衛で死に至らしめたが、殺害する動機はなく、殺さなくても充分危機を切り抜けられていた。非常に不可解な殺人であった。
 CM前に殺害シーンで長谷部(実は双子の兄妹)の顔を見せ、フェイクで視聴者を混乱させるのが狙い。それと、DNA鑑定では区別できない双子も、臭気判定で判別できる警察犬の優秀さを示したかったのかもしれない。
 さらに、双子の麗しい兄妹愛も描いていたが、この双子云々は余計だったように思う。
 『科学や捜査を過信する落とし穴』『科捜研と現場の刑事の慣れ合いの危険性』を描くなら、最初の犯行に関する捜査をもっと丁寧に描いたほうが良いように思う。詰め込み過ぎたため、マリコや土門が性急になり過ぎて不自然だった。




冤罪をを起こし掛けたマリコであったが、笑劇場は冴えていた!
第1の犠牲者…涌田亜美(映像データ担当)
「犯人は、山椒が自生しているような場所を歩いたのね
 亜美ちゃん、京都市内で山椒が自生しているところ」
「はいっ!」
カチャカチャ、ピッ……ブ-
「あれ?……山椒に自生地のデータベースなんて、ないんですけど」
「そうよね」(テヘペロ)


第2の犠牲者…風岡早月(監察医・教授)
「これから、ナイフと手袋の血痕の鑑定をするんです。
 いつも、手伝ってもらってすみません」
「いや、わたし、これまで“手伝う”って言ったこと、一度も…」
「まずは、血液の採取。わたしはナイフをやりますね」
「私に手袋をやれとぉ…」
「急ぎましょ。血痕の鑑定が終わったら、被害者がつかんでいたこの毛髪のDNA鑑定もありますから」
「それも私に手伝えと…」
「先生ったら」(にっこり)
「マリコさんたら…」(げっそり)


「手袋の裏側から、内村さんの指紋も検出できました」
「へえ…えっ、この作業、早月先生がしてくれたんですか?」
「先生、いつも喜んでやってくれるんで助かります」
「喜んでたっけ」
所長は申し訳なさそうに、早月先生はトホホ顔で、マリコは“満面の笑み”で笑う。

【ストーリー】番組サイトより
 大手ゼネコンの滋賀事業所所長・谷口健一が、京都市内の橋の下で刺殺体となって発見された。谷口は以前、東京本社の部長だったが、彼が関わった京都市発注の競争入札で談合が発覚し、3カ月前に降格人事で異動してきたばかりだった。榊マリコ(沢口靖子)たち科捜研のメンバーは、現場から犯人のものと思われる下足痕や毛髪などを採取、鑑定をはじめる。
 件の談合を告発したのは、当選1回の若き国会議員・長谷部伸弥(河相我聞)で、殺された谷口と同じゼネコンに勤めていた過去があった。彼を調べたいという土門刑事(内藤剛志)に、藤倉刑事部長(金田明夫)は、議員の捜査には慎重を期すようにと釘を刺す。 
 現場から採取した毛髪に長谷部のものはなかったが、マリコたちは犯人の下足痕と長谷部の靴底が、小さな傷跡までピタリと合致することを突き止める。また、下足痕に付いていた微物が長谷部の靴底からも見つかったほか、同じく下足痕に付着していた山椒の木の芽のDNAが、長谷部が事件の夜に食事を取った料亭の庭に生えているものとも一致した。出揃った証拠から長谷部の犯行を確信した土門は、藤倉に無断で逮捕状を取る。
 だが、指紋を残さないよう手袋を着用していた用心深い犯人が、なぜ下足痕を残したのか!? その疑問が払しょくできない藤倉は、鑑識課の警察犬担当・香坂玲子(伊藤かずえ)に依頼し、警察犬“ジンクス”を使った“臭気選別テスト”を行うよう土門に命じる。
 するとジンクスは、犯人の下足痕は長谷部の匂いとは違うと判断、何者かが長谷部の靴を履いて犯行に及んだ可能性が浮上する。鑑定は間違っていないのにもかかわらず、土門とマリコは冤罪を作りだすところだったのか…!?  がく然とする2人にその後、さらに窮地へと追い込む事態が襲い掛かり…!?

ゲスト:河合我聞 伊藤かずえ 大谷亮介 小宮孝泰

脚本:櫻井武晴
監督:森本浩史
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『軍師官兵衛』 第46話「家康動く」

2014-11-17 22:58:08 | ドラマ・映画
秀吉死去後
家康と三成の小競り合い、そして官兵衛の決断の回であったが、
私がぼんくらなのか、理解できない事柄が多かった

疲弊した遠征軍、帰国
「父上、三成が博多に迎えに来ておりました。どの面下げて来られたのか?
 朝鮮から戻った者は皆、何の恩賞もなく、三成への不満が渦巻いております」(長政)
   ……≪いやぁ、来なければ来ないで、文句をつけたと思うぞ≫

三成に愚痴を言う小西行長
「疲れたであろう」(三成)
「それにしても長かった。七年に亘る戦、得るものは何もなかった。
 無用の仲違いがが生まれただけだ」(行長)
労いの言葉と、感慨と反省の言。
三成と行長って仲が良かったの?行長は官兵衛に何かと世話(秀吉のキリシタン排斥、朝鮮との交渉の尻拭い)になっていたはずだが≫
「加藤清正、黒田長政は我らを目の仇にしておる」(行長)
「このままでは徳川にはつけ入るすきを与えるばかり。
 豊臣家の御為にも、何か手を打たねばならぬな」(三成)
これを聞いた行長は、ぐっと身を乗り出し(“いいネタがあるぞ”という感じで)
「わしは朝鮮から兵を引く折に、あ奴のせいで酷い目におうたぞ」(行長)

「何があった?」(三成)

行長、「最後尾の行長を待たずに街を焼き払った」件で、清正らを訴える
 家康に弁明をする清正らに
「裁きをする者が、戦を知っているおる者ならよろしいが、そうでない者もおるようで」(家康の家臣)
「三成でございますな」(長政)
「おのれ~」(正則)
「我らを陥れんがための、謀略にござる」(清正)

「お主たちの彼の地での武功を思えば、このような訴え、取り上げることはないと、わしは思おている」(家康)
「されど今は、何事も、五大老、五奉行の合議で決めねばなりませぬ。
 殿の一存で訴えを退けるわけには…」(井伊直政、悔しそうに)
「このような理不尽、黙ってはおれぬ。できる限りのことはいたそう」(家康)
「ありがたきお言葉」(3名、ハハァ~と頭を下げ、感謝)

 三成への更なる敵愾心と五大老制への疑問、さらに家康への感謝の念を植えつけられる三名であった。
 三成にしてみれば、邪魔な清正らを排除するいい口実だと思ったのだろうが、完全に逆手に取られてしまった。
 家康の巧妙さもあるが、こうなるのは分かりきったことだと思うが……



秀頼、居城を伏見城から大阪城へ移す。初登場の利家、後見人に
 ≪今まで、どこにおったんや?≫と、大河ドラマファンから一斉に突っ込みが入ったはず。
 これに伴い、諸大名は大坂に集まり、伏見に戻らされる家康は孤立。北政所も淀に本丸を譲り、西の丸に移る。
 北政所は、争いを避けるため権力にこだわらない。


家康、大坂を脱出
 三成、行長、宇喜多に不穏な動きがあったと、家康が大坂から脱出したが、これは三成の評判を落とすための家康の謀略。

家康、大名同士の縁組を進める
 仲間を増やす家康の策だが、三成は大名同士の勝手な縁組はご法度として、家康を糾弾し、他の4大老を取りまとめ、大老職辞職に追い込もうとする。
 派遣された中老・生駒親正が家康を問いただす。
 秀吉の遺言を蔑ろにするものだと糾弾し、大老職にあるまじき行為だと4大老の言葉を伝えるが、
 「秀吉から直々に我が手を取られ“後を頼む”と大老職を託された自分を職を辞せと言うことこそ、ご遺言を蔑ろにすることではないのか!」
と、一喝。
 ≪なんで、こんな下っ端を遣わしたのだろうか?≫

家康派(清正、長政、正則)対三成、行長が一触即発状態に
「これ以上騒ぎを大きくしてはならぬ。徳川の思うつぼじゃ。
 徳川殿は争いを欲しておるのじゃ。ここで動けば、黒田は使い捨ての道具にされるぞ」
と忠告する官兵衛だが、
「黒田の義が立たない。徳川の道具にはならない」
とは長政は言うが、≪すっかり道具になっているぞ≫

 三成、利家を筆頭にして家康を討とうと動くが、官兵衛、乱入。
「前田様、お久しゅうございます」(如水)
「これはまた、珍しい御方じゃ」(利家)
 ≪“久しぶり”?、“初めまして”じゃないのか?≫
 ≪“珍しい御方”はお前の方だろ!≫


「前田様、あなたは天下人には成れませぬぞ」(如水)
 ≪え~!いきなりそれかい!≫
 “あなたの病は重く、命は長くない。家康を討って、さらにあなたが死ねば、天下は再び乱れる。天下万民のために、ここはお引きいただきたい”(意訳)と説得。
 利家が折れたので、家康も矛を収めた。
 ……という話だが、≪「前田様、あなたは天下人には成れませぬぞ」は、官兵衛得意のはったりだが、予告シーンの為としか思えないなあ≫

栄姫、登場!
 家康、姪の栄を養女に。
 それにしても、古参の家臣が「あんた、誰?」って。
 英姫でなく栄姫なのが、残念
 「さぞや、良きご縁に恵まれることでしょう」
 の言葉に複雑な表情の栄。“良きご縁”て……

心を苛む糸
 熊之助を止められず、せっかく授かった子も女子だった。
 自分を責める糸。あの快活な糸が…やはり世継ぎを産まねばならないという重圧は大きいのだろう。


利家、死去
 均衡が崩れ、清正、長政、正則、細川忠興ら七将が「三成を討て!」と決起。
 三成、宇喜多秀家、行長が一旦かくまったが、宇喜多屋敷から家康居城の伏見城に逃げ込む。
 ここで三成を清正らを引き渡せば、家康が謀反人となってしまうことになることを逆用
 難を逃れた三成は、笑いが止まらない


家康と如水、会談
「やはり、世はまた乱れましょうか」(如水)
「お主はどう思う」(家康、得意の開眼ポーズを取って)
「それは、あなた次第」(如水)

この後、三成の処遇の話になり、蟄居させるという家康の答えに
「隠居とは…それでは火種は消えませぬぞ」(鼻で笑う官兵衛)

「何が狙いじゃ」
「“命には使い道がある”黒田に伝わる教えと、長政殿から聞いた。
 実によいご教訓じゃ。石田殿の命にも、まだまだ使い道はある」

『徳川の狙いは天下を揺るがす大乱であった。
 三成が死に物狂いで見方を集める。
 国中の大名がどちらにつくか迫られ、敵味方のふるいを掛け、
 敵を一掃する』
これが、家康の狙いだったと官兵衛は悟る。

官兵衛の決断
「三成にも家康にも付かない。
 生き残るの事は無論、大事。
 しかし、わしは我が道を行く」
「天下を狙われますか」(善助)
不敵な笑みの官兵衛
「我ら、何処へなりとも、お供仕る」(太兵衛)
うなづく九郎右衛門(セリフなしかよ)
嬉しそうに家臣団を見やり、振り向き、朝日に誓う4人。

ナレーション
「黒田如水と家臣たちが、ついに最後の大勝負へと舵を切った瞬間であった」

かっこいい~……
…おっとっと、あまりに綺麗に決めたので、騙されるとこであった。
 確かに、最後のシーンはかっこいいけれど、いろいろ納得できないことがある。



 一番の疑問は、会心の逆転の策に、笑いが止まらなかった三成だったが、
 三成を討つという強硬手段に走った清正、長政たちが御咎めなしで、三成は蟄居。


 家康は如水に、
「そもそもこの騒動は、三成と行長がありもせぬ罪を言い立てて、ご子息(長政)たちを追い落とそうとしたことが始まり」
と話しているが、訴えたのは行長で、三成は手続きを取っただけ。それに、“ありもしない罪”ではなく、実際に清正たちは事実を認め、釈明している。

 その他の疑問は、先述と重複するが、行長に清正たちを訴えさせたこと。
 そんなことをしたら、嫌われるだけ。もしかしたら、嫌われ者という自覚がなかったのかな。

 あとは、家康が本当の狙いを黒田家の家訓を利用して仄めかしたこと。まあ、ドラマの演出・脚本としては面白いが、親切過ぎ。
 官兵衛も長政をたしなめる時に、「徳川殿は争いを欲しておるのじゃ」と言っているし、家康はやたら三成を挑発しているのだから、≪“軍師官兵衛”なら、ヒントをもらわなくても、気づけよ≫

 さらに、後の大乱が、家康の思惑通りに起こったにしては、けっこう危なかったと思うが……


 あ、そうそう、前話で秀吉に「それがしはただ……殿下の下で、世の乱れを治めたかっただけでございます」と言っていたよね。
 あれ、嘘だったの?
 実際の人物はともかく、先週の官兵衛はかっこいいと思ったのに、騙されたぁ!
 この際、あの清廉さで最後まで通してほしかったな。



 細かい動きが多かったので、まとまらない記事になってしまいました。
 それから、文中の表記が「官兵衛」になっていたり、「如水」となっていたりしますが、その時の気分です。
 気にしないでください。
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

のらりくらり ……中田七段作詰将棋 『将棋世界』2014年4月号

2014-11-16 23:11:51 | 詰将棋
『将棋世界』2014年4月号掲載、中田七段詰将棋コーナー(第9問)です。

コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

第6回横浜国際女子マラソン

2014-11-16 13:49:58 | スポーツ
 1979年に世界初の女子単独のマラソンとして発足した東京国際女子マラソンを引き継いだ横浜国際女子マラソンであったが、今年で最後となるらしい。
 東京マラソンが警備上の理由(表向き)で終了することとなり、主催の朝日新聞社などが開催継続を図り、同じく終了となった横浜国際女子駅伝の主催体制を併合するという形で引き継いだのだったが……想い出多いこの大会が閉幕されるのは寂しい。

 他にも書きたい記事がたくさんあるのだが、そんな思いで、記事を書きたくなった。ただ、じっくり見て、じっくり記事を書く余裕はないので、観ながら書いていきたい(乱文乱筆になると思いますが、ご容赦を)。

 5キロ16分56秒で、設定よりは10秒維持世速いペースで、早くも先頭集団はペースメーカー・チェロティチを含めて早くも8人に絞られた。4キロで過去好成績を残していたバロスも遅れ始めた。故障を抱えているということで、調子が悪いのか、それとも、ペースが速いと判断して自重しているのか?
 本来は2人のペースメーカーを予定していたが、1人欠場するという事態。しかも、チェロティチも慣れておらず、途中の計時を見てはペースを速め帳尻を合わせているようだ。その上、設定タイムより早すぎると言うので、まったく意味がないというか、マイナスである。
 そもそも、ペースメーカに20キロ~25キロまで引っ張ってもらうというのは、ペースメーカーに依存し過ぎで、このペースメーカーの出来不出来で、レース結果が左右されるのはおかしい。ペースメーカーは10キロまでに制限すべきである。
 さて、先頭集団の顔ぶれは、ゲラナ、フィレス、ロティチ、野尻あずさ、田中智美、藤田真弓、岩出玲亜。それから、バロスがかなり離れて単独走、9位集団に、シュケルノ、バルシュナイテ、プロコピエア、バンジル、松浦七実、小倉久美、樋口智美の7人で5キロ地点では先頭から19秒遅れ。
 この中で、ロシア勢のシュケルノ、プロコピエアが元気で引っ張っている。松浦七実、樋口智美もまだ余裕がありそう。

 5.8キロで、先頭集団もペースメーカーについているのは、野尻、岩出、少し遅れがちのフィレス。ゲラナ、ロティチ、田中、藤田は離れ始めた。ロンドン五輪の金メダリストのゲラナは体も走りも重そうだ。

 10キロは33分31秒この5キロは16分35秒。速いペース、いやオーバーペースと言うべきなのかもしれない。ペースメーカーについているのは、野尻、岩出だけ。フィレスも離れてしまった。フィレスの15mほど後ろにロティチと田中。

 11.5キロ過ぎで、野尻、岩出もペースメーカーについていけなくなる。野尻の方が力みがあり、無理してる感じがするが、もともとこういう走りかもしれない。PMのチェロティチも、流石に後ろを気にし始める。

 第1折り返し地点(12.4キロ)、チェロティチ、2秒遅れて野尻、岩出、さらに21秒遅れてロティチ、田中、フィレス。田中もいい感じで走っている。
 それにしても、第1折り返し地点、せっかく固定カメラ、中継レポータも配置しているのに、映したのは6人だけ。もっと、後続の位置関係や表情を見たかったのに、残念。

 15キロ、50分28秒この5キロは16分57秒とややペースダウン、ロティチが約10秒差に迫ってきている。少し遅れてフィレスと田中。

 16.5キロ、さらに後方3人との差が縮まり、フィレス、田中まで30mくらいになった。ここで、おしゃべりに夢中の実況アナと解説の増田明美氏が、ようやくこの状況に気づく。(遅せえよ)
 16.8キロ、ロティチが野尻、岩出に追いつく。しかし、実況アナ、増田氏、高橋尚子氏が、フィレスに関する話題で盛り上がり気づかない。その間もロティチは野尻、岩出を抜き去り先頭のペースメーカーにも迫る。
 実況アナがこの状況に気づいたが、今度はこのロティチが“納豆も食べる”など世間話に花が咲く。
 17.8キロ、ペースメーカーを除くと、ロティチが20mほど抜け出し、岩出、フィレス、田中、野尻がほぼひとかたまり。
 ここで、第2中継車から「6位の藤田にゲラナが迫ってきた」とのレポート。いや、“迫る”と言われても、そこまでの後続の状況が皆無である。実況陣を何とかしてほしいと思ったが、今年で最後か。
 ゲラナの背後に、シュケルノ、プロコピエアも迫ってきている。
 このゲラナについて、
増田氏「ロンドン五輪の時は、後半ペースが上がったので、期待できるのでは」
高橋氏「体が重く、走りにキレがない。期待はできない」
 メーン・増田、第2中継車・高橋の解説体制を逆にして欲しいというより、増田氏を起用してほしくない。


 20キロ、1時間8分5秒、この間17分37秒とペースダウン。5キロは40秒のペースダウンだが、直近の2キロはもっと遅かったはず。勢いよくペースを上げたロティチもペースメーカの急停車に押さえつけられるかのようにペースダウン。そのせいで、残りの4人も追いつき、5人の集団となった。

 中間点は1時間11分56秒。2時間23分台のいいペースであるが……。
 20キロからの1.0975キロは3分51秒。1キロに換算すると3分30秒、5キロでは17分30秒で、これをマラソンの42.195キロに換算すると2時間27分40秒である。実際は中間点まで1時間11分56秒、残り半分を1時間13分50秒とすると、2時間25分46秒となる。実際はさらにペースが落ちると考えられるので、2時間27分ぐらいになるのではないだろうか。

 23キロ付近で野尻が遅れ始める。
 増田氏「野尻さんは、大変友達を大事にする人で、今回、わざわざ友人が店を開いている川崎まで行ってカットしてきたそうです」……情報通には感心するが…。
 一番無理のないペースで走っている田中の走りが良さそう。

 25キロ、1時間25分49秒、5キロは17分44秒。ほぼ5秒遅れて野尻が続くが、ここ1キロで差が付き始めてきたので、限界だろう。この選手、ばねや馬力があると思われるが、ロスが大きい走り。フルマラソンをするのなら、もう少し力を抜いた走りをする必要がありそうだ。
 気温のレポートが入りかけたが、無視される。
 野尻がガクッとペースが落ち、26キロではその差が14秒差となる。トップ集団は1時間29分14秒で、この1キロは3分25秒とやや持ち直す。金哲彦氏によると、ペースが落ちてきていると感じた田中選手が引っ張り始めたとのこと。

 30キロ、1時間43分17秒、5キロは17分28秒、4人の態勢は変わらず、田中がレースを引っ張り気味。

 第2折り返し点(30.8キロ)、田中、岩出、ロティチ、フィレス、4人の走りに大きな変化はない。フィレスが若干辛そうだが、5キロあたりから余裕のない走りで来ているので、いつもこんな走りかもしれない。
 野尻が58秒遅れて折り返す。ストライドに力がなく、推進力を感じない(無駄に上に跳ねている)。
 「30秒差」と誤ってレポートしていた。さらに、それを鵜呑みにする実況アナ。

 32キロ付近でロティチが先頭で引っ張り始める。
 34キロ過ぎ、ロティチが集団の先頭を譲り、再び田中が集団の先頭に。詳しくスプリットを計っていないが、1キロ3分40秒ぐらいかかっているようである。
 この間、実況は思い出話や世間話に終始。
 高橋氏の現役時代の東京マラソンを振り返り、「五輪目指して力み過ぎ、最初の5キロを16分10秒で入ってしまった」と述懐。これを増田氏は「最近はこのペースで入る勇気のある選手がいない」と嘆き、高橋氏は「無謀だった」と振り返る。

 そうこう話しているうちに、35キロ。2時間1分16秒、この5キロは17分59秒(1キロ3分36秒)。
 このタイムを聞いて「(17分59秒)掛っちゃいましたね。遅くなっちゃいましたねぇ」……解説失格である。金氏なら、1キロごとのスプリットタイムをしっかりチェックしているはずである。
 「このタイムでいくとゴールは2時間26分台」と解説するが、詳しく計算すると2時間27分10秒前後になるはず。もちろん、ラストのスパートがあるので26分台に上がる可能性も高い。

 36キロ、2時間4分50秒。この1キロは3分34秒。ペースは変わらない。
 ロティチが先頭に立つ。
 増田氏は岩出選手の妹さんの話を始める……
 36.5キロ、ロティチ、田中、岩出、フィレスの縦一列。フィレスガ苦しそうだが踏ん張り岩出を抜く。先頭はロディチと田中に絞られつつある。
 37キロ、岩出が遅れ始め、フィレスは先頭二人に追いつく。
 「岩出さんの走りのリズムは変わっていない(まだまだ行ける)」と増田氏。

 38キロ、フィレスが先頭に立ち、他のふたりの様子を窺う。岩出は8秒遅れ。
 38.4キロ、今度は田中が先頭に立つが、他のふたりも譲らず、横一列。
 走りは田中が一番いい。どこかでスパートして離しておきたいところだが。
 39キロ、2時間15分31秒。ここ3キロは10分41秒(1キロ3分34秒)
 田中、フィレスが並走、その後ろにロティチ。

 40キロ、2時間19分9秒、この5キロ17分57秒(1キロ3分35秒)。岩出は24秒差。

 40.4キロ、ロティチがバランスを崩す。足取りが鈍り、その直後、口から吐瀉。一気に二人から離れるが、走り続ける。吐いたので楽になったのか、走りはやや持ち直した。

 41キロ、田中、フィレス、並走。

 残り500m、死力を尽くして並走するが、両者譲らない。
 ゴールの山下公園曲がり角を、田中が前に出て曲がるが、フィレスも離れない。
 最後の直線、フィレスが並びかける。
 しかし、残り80mで、田中、最後のラストスパートでフィレスを突き放して、ゴール!2時間26品56秒。
 2秒差でフィレス。
 3位は岩出2時間27分21秒、ロティチが4位で2時間27分32秒。5位、野尻2時間28分55秒(よく粘ったと思う)。
 6位ゲラナ、7位プロコピエア、8位シュルクノ。

 田中選手の冷静な走りが光った走りであった。最後のスパートも見事だった。
 しかし、フィレスが最後の余力がなかったから勝てたような気もする。もう少し前からのロングスパートを選ぶべきだと思う。

 非常に残念な、解説・実況だった。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『すべてがFになる』 第3話&第4話「封印再度」

2014-11-14 23:12:06 | ドラマ・映画
易融合金を利用した凶器隠滅トリック……
……原作でこれを読んだ時に非常に感動した記憶が蘇った。
 ≪えっ、感動したの?≫という声が聞こえてきそうだが、まちがいなく感動した……たぶん。

トリックの概要(番組サイトより引用)
 50年前、林水の父親・風采は匣(はこ)と壺の謎を解き、蔵で自殺を図った。林水もついにその謎に行き着き、同じ道を選んだのだろう。そして、凶器は匣のなかにあった、と犀川は推測。レントゲンで撮影しても空っぽの匣のどこに凶器が隠されているのか。
 実は、壺のなかにある鍵は、60℃で融解する易融合金(いゆうごうきん)で作られていた。そのためお湯を注ぐと液体となる。それを匣の上部にあるネジを外して内部へ注ぐと、底にかたどられたナイフの形に変化し固まりはじめる。お湯を捨てフタを開ければ、それが凶器となる。自分を刺した後、逆の手順を取れば、鍵として壺のなかに戻すことができる。



 鍵が凶器になり、凶器が鍵に戻る。
 鍵がその形をなくして(液体になって)壺から脱出し、匣(はこ)に侵入(本来、鍵の形を成して匣を開けるはずなのに、鍵の形を崩して匣を開ける)。

 「表裏一体」「逆転の発想」……科学とパズルの理論的トリック!鍵穴のフェイクも面白かった。

 おそらく、原作を読んだときは、相当考え、悩んだはず。何度もページを戻って考えた、そう、詰将棋の難問に挑んでる時のように。
 結局、分からず、敗北感を噛みしめながらページを捲った。
 “易融合金”…まったく考えが及ばなかった。そして、上述のトリックの構造に感動した。悩み苦しんだ後、まさに、難問詰将棋の妙手を閃いた時のような感動。
 まあ、今なら、≪何ぃ!、易融合金?…そんなの分かるはずねえじゃん!≫と腹を立てるだろう。……昔は純粋だったなあ。


 と言っても、今考えると、このトリックには大きな問題点がある。
 凶器を鍵に戻さないと、このトリックは完遂できないのである。
 つまり、自らに致命傷を与えた後、凶器を抜き、壺に入れ熱湯を入れ、鍵の形になるのを待って、お湯を捨てなければならない。致命傷でなければ意味がないし、即死だと完遂できない。痛いし、苦しいし……




 さらに、ドラマの作りとしては、相当残念
 トリックの見せ方というか、考えさせ方が不親切。……トリック解明のヒントが、屏風に書かれた「水易火難」の漢文のみ。
 「おじいちゃん、いないよ(動かなくなった。死んだ)」という子供の特殊な言い回しの錯覚のヒントはくどいほど見せたり、密室トリックは意味がなかったし(自殺なら密室は可能、林水の事件の密室は偶然だった)。
 そもそも、この空気の冷却による収縮による空気圧で扉が開けられなかったのに、どうやって開けたのだろう。夜が更けるほど、蔵の中の空気は冷えていくのだから。子どもの言葉にしても、身内(祖父、叔母)が倒れていたのだから、動揺するだろう。
 疫病神(林水の転落自殺を止められず、偶発的だが兄を井戸に突き落とす)のまりも、時々、無表情で不気味になる多可志・綾緒夫婦、その他も曰くありげな林水の妻・ふみと使用人・吉村、林水の孫の祐介の座敷童みたいな登場、このあたりの描写に時間をかけて、"おどろおどろ感”を醸し出そうとしていたが、肝心要の「天地の瓢」と「無我の匣」のトリックの謎に迫らない(犀川だけは重要視していたが)。最後の最後に種明かしをされただけでは、感動は全くない


 さらに問題なのは、仏画師の香山家に伝わる呪われた因襲が全く理解不能。
 『家宝の「天地の瓢」と「無我の匣」の謎を解き明かしたら、それを使って自殺トリックを演じなければならない』とは、どういう必然性があるというのだろうか?いったい、仏画とトリックに何の関係があるのだろうか?仏画師とは仮の姿で、本当は引田天功だったのだろうか?
 当主のフミの自殺ほう助(殺人)を仄めかして、まんまと家宝の瓢と匣をせしめていたが、あの呪われた因襲から解き放つには、あの凶器隠滅のトリックを解き明かすべきである。もったいぶって真相を語らず、もやもや感だけ香山家に残すなんて、また事件が起こっても知らないぞ。


 あり得ないトリックであったが、1回完結でそれを主眼で描くべきところを、理解不能な因襲や、意味のない人間描写、密室に終始し2回に引き伸ばした非常に残念なドラマであった。
 それと、気になったのは、画面にやや青みがかっていること。何か意味があるのだろうか?
 

【ストーリー】脚本・小山正太
『前編』
 萌絵(武井咲)は犀川(綾野剛)を誘い、香山という一家が暮らす日本家屋にやってくる。名目は「歴史的建造物の調査」だが、萌絵の興味は香山家に伝わる壺と匣(はこ)にあった。鍵のかかった匣には対となる壺があり、中に鍵らしきものが入っているがそれを取り出すことはできない。50年前、当主で仏画師の香山風采の死亡事件が起ったとき、壺に風采の血痕が付着していた。それを見た警察が匣を開けようとしたが、息子で同じく仏画師の林水がそれを拒んだという。
 曰わく付きの壺と匣を見たい萌絵は、犀川とともにそれが置かれている蔵まで来るが使用人に制される。それでも粘る萌絵を、現在の当主・香山林水(横内正)の妻であるフミ(真野響子)が厳しく制した。

 別の日、萌絵、犀川、萌絵の叔父・捷輔(吉田鋼太郎)がレストランにいると、林水の長女で漫画家のマリモ(原田夏希)がやってくる。捷輔の妻が風采の画が好きだったことから、捷輔はマリモと知り合ったという。
 マリモの取り計らいで再び香山家を訪ねた萌絵と犀川は通された客間でマリモを待つが、約束の時間を過ぎてもマリモは帰宅しない。やがて萌絵が部屋を出ようと襖を開けると、蔵の方から叫び声がした。萌絵と犀川が駆けつけると、フミら一族が集まっていた。蔵の中に大量の血痕があったが、そこにいるはずの林水の姿はなかった。しかし、側にはあの壺と匣があり、白い壺の表面にはべったりと血痕が付いていた。

≪第三話 事件のおさらい≫
 萌絵(武井咲)と犀川(綾野剛)が訪ねた香山という一家が暮らす日本家屋では、50年前に当主で仏画師の香山風采が、刃物で胸部を刺されて死亡する事件が起こっていた。それは蔵という密室で起きた凶器も発見されていない事件で、自殺か他殺か現在も未解決となっていた。唯一の手がかりは、遺体のそばに置かれた家宝の壺と匣(はこ)で、白い壺にはべったりと血痕が付いていたという。
 それから50年後、同じ蔵のなかで不可解な事件が起こった。そこで作業をしていたはずの風采の息子・林水(横内正)が行方不明となり、蔵が血の海となっていたのだ。そこには50年前と同様に壺と匣があり、壺には血痕が付着していた。
 目撃者はいないが、午後6時に林水の孫の祐介が蔵から出てきて「おじいちゃん、もういないよ」と言った。さらに、午後7時から8時までなかから鍵がかけられていることが確認されている。ところが、午後9時に義理の娘の綾緒が様子を見に行くと、蔵から林水の姿は消え、血痕が残っていた。
 その後、林水の長女で離れて暮らすマリモ(原田夏希)が自宅付近の橋の上でケガをして救助され、橋の下の川原では林水が遺体となって発見された。林水は、父親の風采同様、胸を刺されて死亡していた。刑事の鵜飼(戸次重幸)は、死亡推定時刻は午後6時から9時の間だと報告した。
 そんな折、屋敷の裏門付近でマリモのタバコの吸い殻が見つかった。実家に向かう途中で事故に遭ったはずのマリモの吸い殻がなぜ屋敷内に落ちていたのか。萌絵は、事前に屋敷にやってきたマリモが蔵で林水を刺し、遺体を川に捨てたのでは、と推理。するとそこへ、入院中のマリモが失踪したと連絡が入る。

『後編』
 萌絵(武井咲)は、集まった香山家の人々に、病院から失踪したマリモ(原田夏希)が林水(横内正)の死に関連している可能性があると切り出した。一方、犀川(綾野剛)は一人、部屋の隅にいた。
 刑事の鵜飼(戸次重幸)は、屋敷の裏門付近にマリモのタバコの吸い殻が落ちていたことを明かした。さらに、林水の息子・多可志(橋洋)が屋敷を売却しようとして林水に反対されていたことを挙げ、疑いの目を向ける。多可志は、この家は呪われているから売却したほうがいいのだ、とつぶやく。
 その後、萌絵と犀川は、ヒーローのおもちゃで遊ぶ多可志の息子・祐介(橋來)に声をかける。ヒーローは強いのかと聞く萌絵に、祐介は「もういない」と答える。不思議に思った萌絵は外れていた電池をヒーローにはめてやる。動き出したヒーローを見た祐介は「いた」と答えた。そのやりとりを見ていた犀川は、何かに気づく。
 後日、萌絵が再び香山家にやって来ると、犀川が蔵を観察していた。犀川は萌絵に、蔵がウェザリングという技法で古く見えるように塗装されているが、内部にはシリコン素材が使われていて密閉空間になることを教えた。画を湿気から守るためとはいえ、かなりの手間がかかる改装をした理由を、芸術家だからだろう、と犀川は推測。そんな時、中庭から悲鳴が聞こえた。萌絵と犀川が駆け寄ると、井戸の側で多可志の妻・綾緒(赤間麻里子)が震えていた。井戸を覗き込んだ萌絵が目にしたのは…。


≪萌絵と犀川による事件の推論≫
林水の行方不明の謎は?
 午後6時に孫の祐介が蔵から出てきて、「おじいちゃん、もういないよ」と言ったことから、林水(横内正)は6時には蔵から姿を消していたと思われていた。しかし、祐介は「もういない」を「死んでいる」や「動かなくなった状態」の言葉として使っていた。つまり、6時に林水が瀕死の状態だったと推測できる。林水は何者かに刺され、瀕死だった。そこへ帰宅した娘のマリモ(原田夏希)が林水を見つけ、病院へ運ぼうと自分の車で屋敷を出た。しかし、林水は途中でマリモに車を停めさせると、車外へ出て橋から身を投げてしまう。止めるマリモを払いのけて、「最後のひとかけが必要なんだ」と言って、川へと落ちていった。

午後7時~8時に蔵に鍵がかかっていた理由は?
午後7時に林水の息子の多可志(橋洋)が蔵にやってくると、なかから鍵がかかっていた。そのため林水がいると思ったのだが、蔵は無人だった。負傷した林水が蔵を出ていくとき、よろめいてストーブを転倒させてしまった。安全装置が作動しストーブが消えたことで室内の温度が下がり、そのことで空気が収縮され扉が内側に引っ張られたのだ。これにより、外から開けることができなかったため、多可志は鍵がかかっていると思ったのだ。

そもそも林水を刺したのは誰なのか?
 50年前、林水の父親・風采は匣と壺の謎を解き、蔵で自殺を図った。林水もついにその謎に行き着き、同じ道を選んだのだろう。そして、凶器は匣のなかにあった、と犀川は推測。レントゲンで撮影しても空っぽの匣のどこに凶器が隠されているのか。実は、壺のなかにある鍵は、60℃で融解する易融合金(いゆうごうきん)で作られていた。そのためお湯を注ぐと液体となる。それを匣の上部にあるネジを外して内部へ注ぐと、底にかたどられたナイフの形に変化し固まりはじめる。お湯を捨てフタを開ければ、それが凶器となる。自分を刺した後、逆の手順を取れば、鍵として壺のなかに戻すことができる。

なぜ林水は自ら死を選んだのか?
 林水の妻・フミ(真野響子)の証言によると、同じ仏画師として父の風采の背中を追い続けた林水は、父と同様に匣と壺の謎を解き自殺することで、風采と同じ極みに達せられると考えた。死を持って自らの芸術を完成させようとしたのだ。
 
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

相棒 season13 第5話「最期の告白」

2014-11-13 22:12:41 | ドラマ・映画
「真実を明らかにしても、何も変わらないし、誰も幸せにならない。
 でも、不幸になる人はいるんです」(享)
「どんな事情があれ、我々、警察官は真実から目を背けてはならない。
 僕はそう思いますよ」(右京)

    (本筋とは外れるが、享のセリフの接続詞「でも」は文脈とは合致していない気がする)

 おそらく、多くのレビューでこの会話が記事のトップに挙げられていると思う。
『相棒』シリーズの大きなテーマ
≪右京の正義「犯した罪は適正な方法で適正に裁かれなくてはならない」の暴走?し、相棒が異を唱える≫
という、右京とコンビを組む者の宿命というべき試練の回だった。

今回、右京が問題視した点
①司法取引 ②証拠の捏造 ③冤罪


①司法取引
 右京は司法取引に向けての動きや司法取引の功罪についての一般論を語ってはいたが、司法取引に対する右京の考えは述べていなかった。
 右京にとって問題なのは、司法取引が法制化されていれば正当な捜査であり、法制化されていない現在においては違法捜査であるということ。
 今回の冤罪、それにまつわる司法取引が表ざたになり、念願である司法取引の法制化の妨げになるという観点から、峯秋は右京の動きにストップを掛けようとした
 「法は人々の生命や財産を守るものだ(司法取引も法制化されれば、人々を守れるものなのだぞ)」と主張。
 しかし、「今の法が守られないなら、新しい方を作ったところで同じ運命をたどる(適正に機能しない)」と右京は一蹴。

②証拠の捏造
 証拠の捏造(隠滅)をしてしまっては、警察・検察・裁判のシステムが機能しなくなってしまう。
 もちろん、右京も正当でない捜査は認めない立場、姿勢で、今回でも追及している。
 しかし、最近、右京もハッタリやペテン的手法を取ることが多いので、糾弾する言葉が遠慮がちに聞こえてしまった。

③冤罪
 右京は「やってはいない罪で裁かれていいはずはありません」と峯秋に主張。
 峯秋も「冤罪はあってはならない」と述べたが、もちろん(笑)建て前。刑事部長には“どうでもよい”と本音を漏らす(司法取引の法制化の妨げになるのが困る)。冤罪が発覚したら、“トカゲの尻尾切り”をすれば済むこと(実際、今回もそうなった)
 
今回の件を考察
 岩倉から「第1の事件を白状するから、第2の事件の証拠品のベビー用靴下を削除してくれ」と持ちかけられ、≪事件が解決するのなら≫と応じる。
 変な申し出でその真意を知ろうとせず、≪自ら殺人事件を認めるというのだから、犯人に違いない≫と思い込もうとした。
 変な申し出(取り引き)に疑問を持たなかったのだろうか?それはともかく、岩倉の犯行かどうかを検証すべきであったのは言うまでもないが、おそらく、岩倉の犯行ということには疑念を持ったはず。だからこそ、後日、現場に岩倉の指紋を付けさせたのだ。
 将棋で言えば、これが決定的悪手。自白を信用して送検した“杜撰な捜査”と法制化されていない“司法取引”で済んだのだが(これも困るが)、証拠捏造をしてしまったので、故意の悪質な“不正捜査”になってしまった。

 ちょっと、人情ドラマ的思考になってしまうが、人情派の代表とも言うべき“はぐれ刑事”・安浦刑事なら、「おまえ、なんでそんなことを言うのや?」と、変な取引を持ちかけた岩倉の心の奥を見極めようとしたのではないだろうか?
 右京も使う“非常手段”として、証拠隠滅になってしまうが、証拠品リストからベビー用靴下を外すという選択肢もあったのでないだろうか。
 もちろん、安浦刑事なら「ふたりも殺しておいて、“良い父親”になろうとするのは無視が良すぎやしないか。人生舐めたらあかんぞ」と諭すにちがいない。(私は『はぐれ刑事、純情派』のファンではありません。ちょっと、説教くさかったので)

そして、主題の
「杉下さんは正しいかもしれない。
 正しければ、それでいいんですか?」
について

 杉下は享の問いかけに
「話はそれだけですか?」と無視。さらに、
「まだ、出来ることがあります」と、病院に保管された滝沢の血液を確保し、冤罪の立証に動く。

 一連の特捜係の動きによって
・所轄の事件担当者が退職させられた
・殺人の罪を余計に被ってまで娘の贈り物が血で汚れていた事実を隠そうとしたことが露見した
・その真実を知った娘が深く傷ついた

 その上、真実を明らかにしても
・真犯人の滝沢は既に死亡している
・冤罪が明らかになっても、死刑は免れない

 マイナスに比較して、プラスがほとんどない(大勢に影響がない)。
 プラスの点を上げるとしたら、
・罪を被っていたこと、娘へのプレゼントの真実を隠していたことをを告白できた滝沢の心が晴れたこと
・愚かな父の愛ではあるが、娘がそれを素直に受け止められたこと(これについては後述)

 元上司が苦境に陥り、娘が傷つくことが深刻過ぎて、享は右京の行為が承服し難かった。


 右京は、先述したとおり
「やってはいない罪で裁かれていいはずはありません」と冤罪を正すことが絶対。
 しかし、それだけではない。享の訴えに対して返した言葉
「どんな事情があれ、我々、警察官は真実から目を背けてはならない」
 これが、右京の根底の信念である。


 強盗殺人の真実を見極めようとしなかった担当刑事、不正捜査をした事実から目を背け、
その結果、冤罪を引き起こしてしまった。
 さらに、冤罪を起こしてしまったという事実からも目を背け、それを隠ぺいしようとした。
 警察を辞めなければならないという状況は、その報いで、当然受けるべきである。
 さらに、真実を公にすることで、岩倉の娘が傷ついたというのも、真実から目を背けてしまった警察全体の責任であり、娘の「こんな、話聞きたくなかった。今さらなんなのよ~!」と言う叫びも受け止める責任がある。

「“結果オーライ”でおざなりにやり過ごしてしまい、不正の痛みを正面から受け止めないと、不正な捜査や冤罪はなくならない」

 そういう右京の断固たる信念だと私は解釈する。


 
 さて、今話の脚本は、私が“要注意脚本家”のひとりとして、マークしている金井寛氏である。
 今回は、“右京の正義の暴走”をテーマに、単なる“助手”ではなく、右京の信念に納得できない享の葛藤を描いた点は評価できる(上から目線でごめんなさい)。

 しかし、疑問に感じたことも多かった。
①抱える事件が多いとか、成績が上がらず焦っていたなどの切迫した状況でないのに、岩倉の申し出に乗り、証拠捏造、証拠品リストの操作など不正な捜査をしてしまうのは不自然

②岩倉にしても、強盗殺人を犯した直後に、娘の妊娠とベビー用靴下が結びついて、親心が湧いたこと。さらに、血で汚れたプレゼントであることが明らかになることを恐れるほど、親心があったとは思えないし、殺人の罪を被るというのも天秤が釣り合わない。

③真実を知った娘が、父の愚かな親心を知り、愚かとは思いながらも父に向き合えるようになり、感謝されるというのは強引。右京の行為を無理やり正当化して、“良い話”でまとめてしまった。
 強盗殺人の血塗られた戦利品を、“父親ぶったプレゼント”として渡されたという事実は、どう取り繕っても許せない。
せめて、人を殺めてしまったことを悔いて、自首する決意をして、有り金をはたいたというのなら、まだしもだが。

④この話の、一番のキーポイントは、岩倉の心情である。
 なのに、右京たちが岩倉に会いに行かないのは変。チャーシューのないチャーシュー麺である。


【ストーリー】番組サイトより
 右京(水谷豊)と享(成宮寛貴)が留置場に入れられる。発端は4日前。食事をしていた2人は、無銭飲食でわざと捕まろうとしている男・滝沢(佐藤正宏)と知り合う。体調も思わしくない様子の彼は、どうしても年越しを拘留施設で迎えたいのか、「5年前に人を殺した」と口走る。そのただならぬ様子に引っ掛かりを覚えた右京たちが、当時の事件を調べると、目黒区で起きた連続強盗殺人が浮かび上がってくる。しかし、岩倉(ダンカン)という男が犯人として捕まっており、既に死刑が確定していた。ただ、これまでの経緯から、この件に冤罪の可能性を感じた右京たちは、捜査を担当した中根署に出向く。そこは、享が特命係に移籍する前に刑事をしていた所轄署で、岩倉を取り調べたのは元上司の堀江(山口良一)だった。

その後、右京と享はなぜ拘置されることになったのか?
冤罪の可能性が出てきた連続強盗殺人の真相は…!?
事件はやがて、警察組織を揺るがす一大事へと発展していく!

ゲスト:山口良一 ダンカン 佐藤正宏 佐藤めぐみ

脚本:金井寛
監督:近藤一彦
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

「余計」(中田七段作詰将棋)の解答

2014-11-12 22:56:31 | 詰将棋
「真打ち ……中田七段作詰将棋 『将棋世界』2014年4月号」の解答です。


 初形図で両王手で▲2五桂と跳ねる筋が見えます。しかも、跳ねた後は△2三玉と逃げる一手に▲1三香成とすれば綺麗に詰むのが把握できます。

 …となると、桂が跳ねられるように龍をどかす必要があります。
 龍での王手を掛ける手段は6つ。
 ▲2四龍、▲1六龍は△同馬で続きません。
 ▲1五龍も△1四歩で続きません。
 ▲2三龍は詰将棋ではありそうな龍の捨て方です。△同馬なら▲2五桂で詰みますが、△同玉だと全く詰みません。
 残るは1番平凡な▲2二龍です。

 これに対しては、△1四玉の一手。


 ここでの王手は、桂を跳ねる手と龍での王手の掛け方が6通りの計7手段ありますが、冒頭の思考を踏んだのなら、次の一手は▲1三龍しか考えられません。


 これにも△1三同玉の一手です。

 この第4図ですが、初図から龍を取り除いた局面になっています。
 と、書いてきましたが、初図で龍が邪魔で、それを消し去ることがこの詰将棋の主題であることは、一目瞭然だった方も多いはずです。

 第4図より、念願の(大げさ)▲2五桂が実現。


 以下△2三玉▲1三香成で詰み。



詰手順……▲2二龍△1四玉▲1三龍△同玉▲2五桂△2三玉▲1三香成まで7手詰

 強力な龍が、実は厄介者(邪魔駒)だった……「邪魔駒消去」はよくある筋ですが、私は好きです。「打ち歩詰解消」も好きです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

『軍師官兵衛』 第45話「秀吉の最期」

2014-11-11 21:16:44 | ドラマ・映画
秀吉、官兵衛、今生の別れ
 年老い、幼き秀頼の行く末を案じるが、床に伏しがちになる秀吉。
 夢うつつの区別がつかないが、頭に浮かぶのは官兵衛。朝鮮にいる官兵衛を呼びつける。

 官兵衛も秀吉もこれが今生の別れになることを覚悟。

 秀吉、高松城攻めの夜、官兵衛に起こされ、本能寺での異変を告げられた時のことを思い出し、
「“御運が開けましたぞ”…あの時、お主がそう言わなければ、わしの天下は…なかったかもしれぬ」
 天下を取れたのは官兵衛のおかげと礼を言っているように思えるが、そうではなかった。
「信長が討たれたことを聞いた時、わしは目の前が真っ暗になった。
 ところが…お主は違った。先の先まで見抜いておった」
 やはり、あの言葉が秀吉の心に引っかかっていたのだ。官兵衛の先見の明を恐れていたのだ。

「わしは天下が欲しかった。……わしは多くの者を殺した。…利休、秀次……」
「このわしは、間違っていたと思うか?」
≪官兵衛のあの言葉によって天下を取ったが、果たしてそれは正しい選択だったのか?≫
と聞いているのだが、
≪官兵衛の口車に乗らなければ、こんな修羅の道を歩まずに済んだ≫という恨みめいたことも思っていたように聞こえた。


「殿下は、信長公にこだわり過ぎたのです」
 間接的に間違っていたと宣告。
≪あなたは間違っていないです≫と言ってあげない正直な官兵衛。


「官兵衛、秀頼を、豊臣を頼む。わしが死んだら、秀頼を…この通りじゃ」
しかし、官兵衛、すがっていた秀吉の手をほどく!
 ≪ええっ!?嘘でも、“後はお任せください”と言ってやれよ!≫

「断ると申すか………………秀頼では、いかんと申すか?」
「天下とは、その器たるべき者が納めるべきと存じます」
「秀頼ではいかぬと…」
「そうは申しておりませぬ。されど秀頼ぎみは未だ6歳」
「官兵衛ぇ~、お主ぃぃ、天下を狙っておるな。わしが死んだら、豊臣を滅ぼすつもりであろう」
官兵衛、秀吉の問いに応えず、静かに秀吉を見つめる。
(秀吉、官兵衛に二心がないがないことを悟り)
「何故じゃ……お主ほどの男が、天下を狙わぬ」
「それがしは……それがしはただ……殿下の下で、世の乱れを治めたかっただけでございます」
「官兵衛……官兵衛は変わらんのぉ。いつまでたっても、お人よしじゃ」


立ち去る官兵衛に、
「すまなかった。………お主の思うような天下人にはなれなかった。
 すまなかった」
手をついて頭を下げる秀吉。
「殿下、……永らく軍師として御使い頂き……ありがとうございました」
官兵衛も居住まいを正して、手を付き深々と頭を下げる。
立ち去る官兵衛に、秀吉、バイバイをしながら
「官兵衛、さらばじゃ」
官兵衛、少し離れた場所で、嗚咽。


 最後に正気に戻った秀吉。
 官兵衛の意志……≪秀吉に仕えて、天下泰平≫ということだが、厳密に言えば「天下泰平」>「秀吉に仕える」である。
 しかし、天下を取るに足りる人物なら秀吉でなくても良いのだが、官兵衛は秀吉を天下人と認め、そして、やはり秀吉に天下を取ってほしかったのであろう。秀吉に惚れたのだ。
 秀吉はその官兵衛の思いを理解し「お主の思うような天下人にはなれなかった」と謝った。

 天下人となり、その地位に溺れてしまった秀吉。従順な三成に依存し、淀に狂ったが、最後に官兵衛に戻ってきた。
 ずっと鬱憤が溜まる状況が続いたが、最後(最期)は官兵衛、おねに看取られた。
 なかなか良い退場のさせ方だったと思う。



野心を解き放った家康
 「死んだか!」(あまりの言い様)という家臣の声に、ニヤリ
 “大魔神怒る”の如く、半分閉じていた目のチャックを開ける。
 封印していた野心を解き放ったのだ。
 でも、そこまでオーバーアクションを取らなくてもいいと思う。
 “ニヤリ”で充分。
 右目の開き具合で本性を表現したいのなら、さりげなく目を開かせた方が良かった。


家康対三成
 「何が起ころうとも、われら家臣一同、秀頼ぎみを盛り立ます故、豊臣家は盤石、太平の世は続きましょう」
 と言う家康に、重ねて「なにとぞ、なにとぞ秀頼のこと、豊臣のこと、お頼み申す」と秀吉は頭を下げる。
「それがし、できるだけのことはいたす所存、お任せ下さい」
 三成、淀は疑惑の視線。
 今さら、家康のことを恐れるのなら、なぜ、身内を排除したんだよと、視聴者の大半は思ったはず。

 三成は、「五大老・五奉行制」を設け家康対策は万全であると。
 家康は、「太閤は英雄であった。惜しむらくは、己が死んだ後の世をもっと考えておくべきであった」

 家康は秀吉が没した後のことを考えて準備を進めてきたのに対し、秀吉は秀頼の為、地位を脅かす可能性のある身内を排除し、真の敵のことを顧みなかった。三成は秀吉に仕える(機嫌を取る)ことばかり考え、皆に嫌われてしまっていた。勝負は明白だった。


熊之助、無念
 大局を観ず、目先のことしか考えられない熊之助。
 官兵衛は、独断で動くことが、いかに愚かなことかを教えていなかった。
 せめて、天気予報を教えておくべきだった。

 「心配するな、海を渡ってしまえば、こちらのものだ」
 難破して、海を渡れず!(あっけない)

現実逃避の光に、冷静な官兵衛
 熊之助をなくしたというのに、異常に明るい光。
「死んだのだぁ!熊之助は、もう帰ってこぬ」と官兵衛は死の宣告。
 有岡城に幽閉された官兵衛、人質として斬殺の命が下された松寿丸と奇跡に近い生還を体験している光、熊之助もと思うのは自然の成り行きのようにも思える。
 それに、あまりに悲しんでいては、熊之助を止められなかった糸を思いやっての素振りとも考えられる。

太兵衛、号泣
 熊之助、吉太夫遭難死の報に、
「申し訳ございませぬ。せがれ(吉太夫)が付いていながら、このようなことに!」
と、地面に頭をこすり付け謝る太兵衛。
「よせ、太兵衛。詫びるのはわしの方じゃ。家臣を巻き添えにするとは。頭を上げてくれ。太兵衛、すまぬ」
「うわぁぁぁぁぁ……」
太兵衛の怒号のような泣き声が響く……

 これ、現代なら、お互いを責め合うのではないだろうか。


くノ一?リラ
 糸のお産のため、白装束に身を包む女子衆。
 くノ一・お道(福島リラ)は流石、似合う(笑)
コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

土曜ワイド劇場「人類学者・岬久美子の殺人鑑定5 「光る白骨の美女!ピアニスト連続殺人…(以下略)」

2014-11-10 20:34:25 | ドラマ・映画
土曜ワイド劇場「人類学者・岬久美子の殺人鑑定5 光る白骨の美女!ピアニスト連続殺人の裏に女系家族の愛と欲…転落死したら骨折が治った!?」

 土曜ワイド劇場なので、目くじらを立てて突っ込むのは大人げないと思うが、突っ込みたくなるような“陽性”の突っ込み処なので、つい記事にしてしまう。
 “要注意脚本家チェック”の意味で、書き記すのは有意義かもしれない。

 サブタイトルの長さは相変わらずである。
 サブタイトルには、内容を端的に表したものと、ブラフ(はったり)に近いものとがあるが、土曜ワイドは後者。
 『コトバンク』によると「はったり」=【わずかなことを大げさに言ったり、ありもしない物事をあるように見せたりして他人を圧倒しようとすること。また,そういう言動】と記されているが、土曜ワイドのサブタイトルのことを指しているのではないかと思われるほど合致している。

 今回もまさにこのパターンだった。
 まず、「ピアニスト連続殺人」の件
 冒頭に殺害された音楽家はそうであったが、白骨の女性二人に関しては確かにピアニストとピアニスト志望者であるとは言え、自殺とそれに巻き込まれた事故死であった。まあこれは、白骨で発見されたので、事件性が強いので良しとしよう。

 では、「連続殺人の裏に女系家族の愛と欲」の箇所はどうか?
 一見、母親・華枝は次女・あやめがピアニストとして大成するのなら何でもしそうな雰囲気で、DNA鑑定で「三女だけ父と血の繋がりはない」と判明した時、殺害された音楽家と不倫関係にあったのではないかと思われた。三女・まゆみも実際にそう思い込み、ひねくれていた。
 また、あやめのピアニストとしての活躍や、あやめに掛かり切りになる母が面白くない長女・さくらが、あやめを階段から突き落としたと思われていたが、実際は音楽家の妻と弟子が階段に油を垂らす細工をしており、それに滑ったさくらをあやめが助けようとして転落してしまったのが真相。
 そんな訳で、母娘、姉妹の仲はギクシャクしていたのであったが、それも虚構だったことが明らかになっていく……(後述)

 さらに、「転落死したら骨折が治った?」という訳の分からないフレーズは?
 「転落により右腕を骨折しピアニストとしては再起不能になった」と思われていたが、実際は、転落によってあやめの腕が骨の癌に犯されており、癌の転移を防ぐため、自身の腓骨(膝から足首の細い方の骨)を移植したとのこと。(ドラマでは「腓骨はなくてもよい骨」と言っていたが、大丈夫なのだろうか?)
 結局、転落によってピアニストとして致命傷を負ったのではなく、事故によって癌を発見できたというまさに“怪我の功名”だったのだ。「だったら、そのことを姉に教えてやれよ!」と声を大にして突っ込んであげたい!あやめは困難に立ち向かおうとしていたのだ。

 再び、「女系家族の愛と欲」
 まゆみの出生については、殺害された音楽家が教え子に手を出した“結果”であり、その子の幸せを思い華枝が引き取ったというのが真相
 さらに、ピアニストの大望を果たすため母娘、姉妹関係がすさんでいた家族関係が、無邪気なまゆみの出現により和やかになった。まゆみは家族にとって天使だったのだ
 まさに、“ありもしない物事をあるように見せたかけた”家族関係だったのだ。

 あまりに見事なご都合主義……やられたなぁ。土曜ワイドだから許そう。


 しかし、これは絶対許せない!
 ドラマの主人公の准教授・岬久美子(大塚寧々)のところに、≪行方不明になった娘・美鈴が、もしかしたら遺体(白骨)で見つからないか≫と足繁く通う女性・鍋島時子がいた。
 その時子、実のところ、娘の失踪の事情をよく知っていた。
 美鈴もピアニストの才能に溢れていたが、音楽家に手を付けられ身籠ってしまった。(まゆみの実の母親だった)
 そのことでピアニストの夢は断念したが、音楽家のことが忘れられず、そのあげく、音楽家に捨てられ自殺を決意。その自殺を止めようとしたあやめは巻き込まれて事故死してしまった。
 傷心の美鈴が音楽家の所を飛び出して行ったにもかかわらず、まったく美鈴のことを思いやらない音楽家に時子が逆上し、殺害してしまったのだった。
 しかし、まずは娘を追っかけろよ!
 怒りに支配され殺害を優先したとしても、普通、娘の実を心配し辺りを探し回るのではないだろうか? あの時、二人を探していれば助かったかもしれないし、少なくとも遺体は発見されたはず。結局、あやめは音楽家殺害の容疑者とされてしまった。

 そもそも、逆上した割には、指紋がつかないようにしっかり布でくるんで凶器を握っていたのは冷静である。
 音楽家の別荘付近で娘の遺体が発見されては、自分の犯行が露見するので、うやむやにしたかった?

 娘思いの母親を演じていたのは見せ掛けだけで、実は真っ黒

 その辺りを知りたかったが、クライマックスの犯人追及がいつの間にか家族愛のドラマに転換し、殺人の真犯人の時子はフェードアウト…
 最後の大転換の家族愛に持っていく為に、12年前の殺人事件での時子の不自然極まりない行動になってしまったとしたら、本末転倒の杜撰なご都合主義の脚本である。
 せめて、すべての元凶が時子で、最後にその“どす黒さ”を披露させたのなら素晴らしかったのだが、あのフェードアウト振りからは、そうとは考えられない。
 また、音楽家と美鈴の子を引き取るぐらいなら、華枝も音楽家のろくでなしさを知っていたはず。よくそんな奴に娘を託したものである。


 少し前の『法医学教室の事件ファイル38 ~土曜ワイドらしい反則技~』は、すがすがしさを感じさせる(笑)反則であったが、今回はご都合主義過ぎ、ずさん過ぎである。
 脚本家は真部千晶氏。過去に記事にした記憶があるが……
 ………『相棒season12』 第14話「顔」……『相棒』で1、2を争う不出来な回だった。「要注意脚本家」である。

 上記に比べると些細なことだが、警視庁捜査一課現場資料班刑事・加治川法雄(渡辺いっけい)の空気ぶり(存在意義の薄さ)も悲しい

 『ミステリー通信 創刊号』さんが、ほぼ同様、いえ、私より鋭いレビュー記事を書いています。
 トラックバックを飛ばそうと思ったら、言及リンクが必要とのことなので、上記の紹介をさせていただきました。

【ストーリー】番組サイトより
 人骨を専門に研究している人類学者で大学准教授の岬久美子(大塚寧々)は、ピアノを習いたいと言いだした娘の真琴(鍋本凪々美)を、近所のピアノ教室に連れて行った。その帰り、警視庁現場資料班刑事・守屋直樹(渋江譲二)から西奥多摩の渓谷で人骨が見つかったと連絡が入り、さっそく鑑定作業に入る。
 見つかったのは、左足の骨と頭がい骨。久美子が調べた結果、20代後半から30代前半の女性で、死因は前頭部の骨折と判明。しかし突き落とされて殺害されたのか、足を滑らせた事故なのか、はたまた自殺なのかまではわからなかった。また、左足の膝下とくるぶしの上が金属具で接続されていることから、足にケガを負い、治療していたこともわかった。
 その後、久美子のさらなる鑑定により、骨の身元は12年前に失踪したピアニスト・最上あやめ(大塚千弘)と特定される。驚いたことに彼女は、失踪直前に起きた殺人事件の重要参考人だった。そして奇しくも、久美子の娘・真琴がピアノを習いはじめたのは、あやめの母・最上華枝(中田喜子)が経営する教室だった。
 久美子と守屋は、あやめが重要参考人となった12年前の事件を調べはじめる。当時の捜査を担当した捜査一課刑事・佐藤元(宮川一朗太)によると、その事件は有名作曲家の添田伊佐男(デビット伊東)が殺害されたもので、あやめは添田の教え子だったが、事件の数カ月前、コンサートのリハーサル中に階段から転落して左腕を負傷。ピアニストにとって致命的なダメージを負ったことから師匠の添田に見放され、それを恨んで犯行に及んだと考えられていたらしい。また、事件直後にあやめが姿を消したことも、あやめの容疑を深めていたという。
 あやめが負傷したのは、左足ではなく左腕だった!? 疑問に思った久美子が華枝に聞くと、華枝は「あやめは足をケガしたことなどない」と言い切り、左腕の骨折についてもどのような状況だったか忘れてしまったと口を閉ざす。しかしDNA鑑定の結果、骨はあやめのもので間違いなかった。あやめの姉・さくら(小沢真珠)、妹・まゆみ(三津谷葉子)の態度もギクシャクしており、最上家の面々の間に漂う微妙な空気に、久美子は違和感を抱く。その後、鑑識と共に西奥多摩の渓谷を捜索した久美子は、あやめのものと思われる左腕の骨を発見する。だが、その骨に骨折の痕跡はなかった……。いったいどういうことなのか?

脚本:真部千晶
監督:藤岡浩二郎
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする