延喜六年、月次の屏風八帖が料の歌四十五首、宣旨にてこれを奉る二十首
子の日遊ぶ家
ゆきてみぬ ひともしのべと はるののに かたみにつめる わかななりけり
行きて見ぬ 人もしのべと 春の野に かたみに摘める 若菜なりけり
延喜六(906)年、月々の行事や風景を描いた屏風のための歌四十五首のうち、天皇の命で奉った二十首
子の日の行事にいそしむ家
野に出ていかない人も様子を思い浮かべることができるようにと、春の野で記念にこの籠に摘んだ若菜なのです。
「子の日」は「ねのび」と濁って読みます。「根延び」に掛けて、根が長く延びる小松を引き抜いたり若菜を摘んだりして、宴を催して長寿を祝う行事のこと。お正月の最初の子の日に行われました。「かたみ」は「形見(記念)」と「筐」の掛詞ですね。
この歌は新古今和歌集(巻第一「春歌上」 第14番)にも採録されています。