せみのはの ひとへにうすき なつごろも なればよりなむ ものにやはあらぬ
蝉の羽の ひとへに薄き 夏衣 なればよりなむ ものにやはあらぬ
凡河内躬恒
蝉の羽のように薄い単衣の夏衣が身になじむと皺が寄るように、ただただ気持ちが薄い人でも、慣れ親しめば心が寄り添うものではないでしょうか。
「ひとへ」は「単衣」と副詞の「ひとへに」、「なれば」は「(衣が)馴れば」と「(二人の仲が)慣れば」、「より」は「(皺が)寄り」と「(心が)寄り」、と両義を持たせた語が多用され、巧みに二重の意味を詠み込んでいますね。第五句の「やは」は反語です。