はなよりも ひとこそあだに なりにけれ いづれをさきに こひむとかみし
花よりも 人こそあだに なりにけれ いづれを先に 恋ひむとか見し
紀茂行
花よりも、それを植えた人が先にはかなくこの世を去ってしまった。どちらを先に恋しく思うかなどとは考えもしなかったのに。
詞書には「桜を植ゑてありけるに、やうやく花咲きぬべき時に、この植ゑける人身まかりければ、その花を見てよめる」とあります。
作者の紀茂行(き の もちゆき)は貫之の父にあたる人物ですが、それ以外の詳細は不明。古今集への入集はこの一首のみです。