はなすすき われこそしたに おもひしか ほにいでてひとに むすばれにけり
花薄 われこそ下に 思ひしか 穂に出でて人に 結ばれにけり
藤原仲平
心ひそかに思っていたのに、あの人は誰からもわかるように、他の人と結ばれてしまったことよ。
「花薄」は穂の出た薄の意で、心を寄せる相手の女性の比喩。「穂」にかかる枕詞でもありますが、この歌では「花薄」と「穂」が離れているという、変則的な配置になっていますね。「下に思ひ」は、心の中で思うことです。「花薄」はしばしば歌われる語で、古今集でも 0242、0243、0549、0653、1006 とたびたび登場します。またその多くが、「穂に出づ」というフレーズとセットで出てきますね。
作者の藤原仲平は平安時代前期~中期の公卿で、0230 の左大臣藤原時平の弟。自身も左大臣に任ぜられました。歌人として優れ、古今集ではこの一首のみですが、勅撰集全体では11首が入集しています。