漢検一級 かけだしリピーターの四方山話

漢検のリピート受検はお休みしていますが、日本語を愛し、奥深い言葉の世界をさまよっています。

古今和歌集 0747

2021-11-15 19:36:52 | 古今和歌集

つきやあらぬ はるやむかしの はるならぬ わがみひとつは もとのみにして

月やあらぬ 春やむかしの 春ならぬ わが身一つは もとのみにして

 

在原業平

 

 月はかつての月ではないのか。春は以前の春ではないのか。わが身だけはもとのままなのに。

 相手の状況が変わって、愛しい人と逢って話すことすら叶わなくなった境遇を、自分の身だけが何も変わらないと嘆く詠歌。「五条の后の宮の西の対屋に住んでいた人と、そんなつもりもなく恋仲になったけれど、その人は一月の十日過ぎに、遠いところへ行ってしまった。いる場所は聞いていたけれど口をきくことさえもできず、次の年の梅の花盛りのころ、月がすばらしかった夜、去年のことを恋しく思ってあの西の対屋に行き、月が西に傾くまで、傷んでいる板間に横になって詠んだ歌。」と、長い長い詞書がついています。「西の対屋に住んでいた人」とは藤原高子のことで、自身の詠んだ 0004 でご紹介した通り、業平の恋人としてつとに有名な人物ですね。

 恋歌の最終巻、巻第十五「恋歌五」に入りました。0828 までの82首、引き続きお付き合いください。

 



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